残業代の計算方法を知ってシミュレーションしてみよう!
残業代は働いた時間に応じて支払う。確かにそれは正しいのですが、実は割増賃金には複数の種類があったり遅延損害金があったりと請求できるお金の見落としは珍しくありません。未払い残業代と時効のチェックは弁護士へのご依頼を強く推奨します。

・残業代は働いた分だけ払われる
・労働基準法で決まった割増賃金も請求できる
・残業代の時効は2年間!
残業代の計算方法
1時間あたりの残業代がいくらになるのか、その計算をする際にはまず1時間あたりの給与額と正確な残業時間の算出が必要になります。
1時間あたりの給与額は給料明細から、また残業時間はタイムカードや勤怠管理システムなどから確認しましょう。
残業代の計算式は以下の通りです。
残業代 = 1時間あたりの賃金 x 割増率1.25 x 残業時間 |
1時間あたりの賃金の計算方法は、以下の通りです。
1時間あたりの賃金 = 月給 ÷ (1日の所定労働時間<定時> x 21日<1ヶ月の平均勤務日数>) |
例えば月給30万円、定時は9時から18時の実働8時間、の人が1ヶ月に20時間残業した場合の残業代は以下のようになります。
1時間あたりの賃金(30万円/8時間x21日)x1.25 x20時間
=1時間あたりの賃金=1785円x1.25×20時間
=44,625円
すぐに自分の残業代を知りたい人は、まずはこの計算式にあてはめて計算してみましょう。
残業時間は分単位で計算
残業代は1分単位で計算し支給するのが原則です。たとえ1分であっても労働したのであれば、その分の給与を支払わなければなりません(労働基準法第24条)。
したがって、残業時間を15分または30分単位で切り捨てて給与計算することは禁止されており、残業代は1分単位で計算して支給されなければなりません。
ただし、1ヶ月の残業時間の合計時間については、30分未満の切り捨て、30分以上の繰上げが認められているので、この場合は例外的にそれに基づいて計算することができます。
残業代を1分単位で計算する方法は、以下の計算式で算出します。
1時間あたりの基礎賃金 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間数 |
上記の計算式により1時間当たりの基礎賃金を算出したら、以下の計算式により残業代の計算をします。
残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 x 残業時間 x 1.25(時間外労働の割増率) |
残業代の割増率は2段階になっています。定時の時間以降から22時までは時給の25%の割増率、22時以降の残業代は深夜残業として25%をさらに上乗せします。22時以降の残業は合計50%の割増率になるので計算するときに注意してください。
月給や日給制なら時給換算する
自分が1時間でどれだけの金額を稼いでいるのか把握するためには、月給や日給を元にして時給を計算してみましょう。
月給を元にした残業代を含めた実質的な時給は、以下の計算式により求められます。
割増賃金の計算に使用する 月給 正確な時給 = _______________ 1年間における1ヶ月の平均労働時間 |
計算には、1年間の所定休日数、所定労働時間、月給の3つです。
日給を元にした残業代を含めた実質的な時給は、以下の計算で求められます。
日給 日給から計算した時給 = _________________ 1日の所定労働時間 |
日給から時給を求める計算式では、休憩中の時給が発生しないのでその分を労働時間から差し引いて計算する必要があります。
労働基準法に基づく割増率
労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めており、これを超える時間を時間外労働としています。
時間外労働は、1ヶ月45時間、1年360時間を超えないものとしなければなりません。
時間外労働に加え、休日労働、深夜労働の場合も割増賃金が規定されており、時間外労働と深夜業、休日労働と深夜労働になった場合はさらに割増賃金もあがります。
以下は、労働基準法37条に規定の割増率をまとめたものです。
労働の種類 |
労働時間 |
割増率 |
時間外労働(法内残業) |
1日8時間、週40時間以内 |
なし |
時間外労働(法外残業) |
1日8時間、週40時間を越える |
1.25倍 |
深夜労働 |
22:00~翌5:00 |
1.25倍 |
法定休日労働 |
法定休日の労働時間 |
1.35倍 |
時間外労働+深夜労働 |
月60時間を超えない時間外労働+深夜労働時間 |
1.5倍 |
月60時間を超える時間外労働 |
月60時間を超える時間外労働の時間 |
1.5倍 |
法定休日労働+深夜労働 |
休日労働+深夜労働の時間 |
1.6倍 |
月60時間を超える時間外労働+深夜労働 |
月60時間を超える時間外労働+深夜労働 |
1.75倍 |
残業代の計算シミュレーションをしてみよう
残業代の計算は、残業の種類や勤務形態により異なり複雑です。また、残業代は計算式だけを理解しておけばよいというものでもありません。
例えば、実労働時間や残業代の基礎賃金の認定など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。
残業代の計算でお困りの場合は、残業代計算シミュレーターの導入を検討するのもよいでしょう。
時効はいつ?
残業代の請求には時効があります。未払い残業代の請求は2年で時効になります。
過去の残業代を請求しようとしても原則としては、2年前までの請求しか認められず、今後も残業代の請求をしなければ、さらに請求できる残業代はなくなります。
ただし、2022年4月以降からは、労働基準法が改正されたため、3年を遡って請求が可能になりました。
残業代請求の時効は、内容証明郵便を使って残業代の請求書を郵送することで時効を仮にストップさせることができます。
残業代の請求額が高額である場合は、完全に時効を中断させるために裁判をおこす、あるいは会社と話し合って承認してもらうことを検討しましょう。
いずれにせよ、残業代の請求は話し合いが長引いたり、時効の中断には専門的な知識が必要です。労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
未払いの時間外手当を計算してみよう
ここからは、未払い残業代の計算シミュレーションをしていきます。
まずは、月給の残業代の計算です。上記の計算式にあてはめて1時間あたりの賃金額を算出します。
・月給30万円
・365日の年
・週休2日(土日)
・年間所定休日数125日
・1日8時間
・法定外残業2時間
1年間の1ヶ月平均所定労働時間数
=(365日ー125日) x 8時間 ÷ 12
=160時間
1時間あたりの賃金額
=30万円 ÷ 160時間
=1875円
残業代
=1875円 x 2時間 x1.25
=4688円
未払いの深夜割増を計算してみよう
深夜労働とは、午後10時から午前5時までの深夜時間における労働です。22時以降の深夜労働をした場合は、1.25倍の割増賃金が支払われなければなりません。
法定時間外残業が22時を超えた場合は、時間外手当の1.25%割増に加え、深夜残業として更に1.25%の深夜手当てを合計した割増率で計算します。
具体的には、上記の例を元にして深夜残業を2時間すると以下のようになります。
1年間の1ヶ月平均所定労働時間数
=(365日ー125日) x 8時間 ÷ 12
=160時間
1時間あたりの賃金額
=30万円 ÷ 160時間
=1875円
残業代
=1875円 x 2時間 x1.50
=5,625円
未払いの休日割増を計算してみよう
休日労働にも法定休日における労働と、法定外休日における休日労働があります。
・法定休日労働と時間外労働
法定休日に労働した場合の法定休日労働に対しては、1.35倍以上の割増賃金が発生します。
ただし、法定休日の法外残業については、時間外労働の割増率は考慮されません。
たとえば、法定休日に10時間労働した場合は、8時間を超える時間外労働は考慮されないため、単純に10時間分の割増率1.35倍の休日手当てとして支払われます。
1年間の1ヶ月平均所定労働時間数
=(365日ー125日) x 8時間 ÷ 12
=160時間
1時間あたりの賃金額
=30万円 ÷ 160時間
=1875円
残業代
=1875円 x 2時間 x1.35
=5063円
・法定外休日労働と時間外労働
法定外休日労働に対しては、原則として割増賃金は発生しません。法定外休日の労働が時間外労働になる場合にだけ、時間外労働に対する割増賃金が適用されるからです。
したがって、割増率も時間外労働の場合に1.25倍が適用されます。具体的には、2時間の残業代は以下のようになります。
1年間の1ヶ月平均所定労働時間数
=(365日ー125日) x 8時間 ÷ 12
=160時間
1時間あたりの賃金額
=30万円 ÷ 160時間
=1875円
残業代
=1875円 x 2時間 x1.25
=4688円
具体例を見てみよう
これまでに見てきたシミュレーションをもとにして、1ヶ月80時間の残業をした場合をみてみましょう。
1年間の1ヶ月平均所定労働時間数
=(365日ー125日) x 8時間 ÷ 12
=160時間
1時間あたりの賃金額
=30万円 ÷ 160時間
=1875円
残業代
=1875円 x 80時間 x1.25
=377,344円
まとめ
残業代は基本給だけでなく割増賃金も払われます。そのため休日出勤や深夜残業が多い場合は特に割増賃金への意識を向けましょう。
さらにブラックな職場であれば基本給に未払いがあったり、給与が最低賃金を割る場合も考えられます。
残業代計算は、1分、1円の計算の積み重ねが大切ですから、しっかり残業代を取り戻すためにも、ぜひ弁護士へご相談ください。