解雇予告をされたら?今後のために考えるべきこととは一体?
もしあなたがいま「会社から解雇予告を受けた」状態だったら、解雇を向き合ってください。日本の法律は労働者をかなり強力に守っているので、例え解雇が避けられない事態になっても悪影響を少なくすることができます。逆に「解雇について知らない」ことは、大きな損を招くことになります。

解雇予告されても落ち着いて今後どうするかについて考えましょう

上司「俺の言うことがきけないのか!」
労働者「間違った指示に従うことはできません!」
上司「お前なんか解雇だ!」
労働者「上等だ、辞めてやるよ!」
日本の会社では、こんなマンガのようなシーンは滅多に起きません。なぜなら、日本の企業は法律で、解雇できる条件が厳しく決められているからです。日本は「解雇されにくい社会」なのです。
会社が解雇の手続きをしても、労働基準監督署が「その解雇はルールに沿っていないから無効」と判断することがあります。
「解雇だ!」と言われたら、まずは落ち着いてください。その場で「辞めてやる!」と言ってなんらかの書面にサインしてしまうことは絶対に避けてください。解雇予告についての基礎知識

解雇のルールは厳格に定められていて、そのひとつに「解雇予告」があります。会社が下した解雇の判断が正しいときですら、会社は従業員に「あなたを解雇することを、ここで予告します」と伝えなければならないのです。
解雇予告の基礎知識(1) 解雇の30日以上前に解雇予告をしなければならない
「予告」ですから、解雇日より前に行わなければなりません。会社が労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日以上前に予告しなければいけません。
つまり、企業が行う解雇が「正しい」と認定されるためには、次の条件をクリアしなければなりません。
①誰の目から見ても従業員の勤務態度や能力が極度に悪く、解雇されることが社会的にやむを得ない
②30日以上前に解雇予告をしている
このとき「その解雇は違反にはならない」と判断されます。解雇予告の基礎知識(2) 30日以内であれば解雇予告手当を払わなければならない
しかし、経営者や管理職が「この従業員はとにかくひどい人間だから、もはや30日も会社にとどめておけない」と考えていたとしたら、どうなるでしょうか。
法律はこのようなケースも想定していて、「解雇予告手当」という制度があります。
社長が「明日にでも解雇をしたい」と思ったら、30日分の平均賃金を解雇対象者に支払えば、30日を待たずに解雇することができます。
この「30日分以上の平均賃金」が解雇予告手当です。解雇予告の基礎知識(3) 解雇予告期間が短縮される場合は?
解雇予告手当は「時間をおカネで買う」発想です。
30日以上という「解雇までの期間」を短縮するために、30日分の平均賃金を支払うのです。この「日数」は比較的自由に変更することが可能です。
社長が「明日解雇しなくていいけど、30日も居られた困る。10日後に解雇したい」と考えた場合は20日分の解雇予告手当を対象従業員に支払えば、解雇予告期間が20日分短縮されます。解雇予告手当てとは?

解雇予告手当は「手当」というくらいですので、従業員がもらえるおカネです。その金額はいくらになるのでしょうか。
解雇予告手当とは(1) 30日に満たない場合の平均賃金
解雇予告期間が30日に満たない日数のときの解雇予告手当の計算は日割りです。
もし解雇予告をした日から14日後に解雇したい場合、残りの16日分の解雇予告手当を従業員に支払えばいいのです。解雇予告手当とは(2) 解雇予告手当ての計算方法
解雇予告手当の金額の算出には、平均賃金を使います。
解雇の決断に至った「事由」が発生した日以前の3カ月間に支払った賃金の総額を、その3カ月間の総日数で割った金額です。
例えば、4月(30日間)、5月(31日間)、6月(30日間)の賃金がそれぞれ20万円だとすると、60万円を91日間で割った金額6,594円が、平均賃金になります。
ですので「30日分の解雇予告手当」はこれに30をかけた197,820円となります。解雇予告手当とは(3) 解雇予告手当を支払わなくて良い場合とは?
ここで「社長の気持ち」を想像してみてください。
もし従業員が「相当悪い」人間で、いくら注意しても態度をあらためず、加えて大きな損害が発生しているとしたら、社長としては「解雇予告もせず、解雇予告手当も支払わないで即刻解雇」したくなるのは理解できると思います。
法律も「解雇予告を行わなくてよい」ケースを考えていて、それ次の条件をクリアしたときです。
①解雇事由が発生した責任が労働者にあるとき
②つまり、会社に落ち度がないとき
③労働基準監督署が「それなら解雇をしてもよい」と認定したとき
①の条件をクリアするような事例には、横領、傷害、2週間以上の無断欠勤などが当てはまります。
また、火災や地震など天変地異やその他やむを得ない事由によって「仕事をする場所」が焼失したり倒壊して、会社の運営を続けることが不可能になったときも、労働基準監督署の認定(③)があれば、解雇予告なしの解雇が可能です。解雇予告されたら考えるべきこととは?

労働者が極力損をしない解雇のされ方のコツをお教えします。
それは「解雇予告されたらじっくり考える」ことです。解雇予告されたら考えること(1) 解雇予告は30日より前か?
何を「考える」のかというと、まずはスケジュールです。
①解雇予告日と②最終出勤日を確認してください。
まず①ですが、上司から「解雇だ!」と言われたら、「それは解雇予告ですか」と尋ねてください。「そうだ」と言われたら、それが解雇予告日となります。できれば「では、書面で解雇予告をしてください」と依頼しましょう。
というのも「解雇予告日は予告日数に含まれない」という細かいルールがあるからです。「予告日数に含まれるかどうか」は、解雇予告手当の額にかかわることなので重要なのです。
次に②ですが、最終出勤日も解雇予告手当に関わるので「重要な日付」であると認識しておいてください。解雇予告期間は30日以上ですので、最終出勤日が30日未満に設定されていると、解雇予告手当が発生することになります。解雇予告されたら考えること(2) 解雇予告手当てが払われるか?
解雇予告を受けた労働者は、解雇予告手当が本当に支払われるかどうかも確認しましょう。
大変残念ながら、世の中は法律通りに進まないことが多いのです。解雇をするくらいですから、経営者や上司は、対象の労働者を嫌っていて「できるなら解雇予告手当なんて払いたくない」と考えています。
そこで、解雇予告日から30日未満に解雇日が設定されたら、まずは自分で解雇予告手当の金額を算出してみてください。「平均賃金」と「解雇予告期間のうち30日を割り込んだ日数」をかけるだけです。
その金額を上司や総務部に提示して「自分で計算したら、解雇予告手当は○万円になると思うんですが、間違いないですか」と伝えるのです。こうすることで、会社に対してプレッシャーをかけることができます。解雇予告されたら考えること(3) 解雇理由は正当なものか?|解雇理由証明書の請求
そして何より考えなければならないことは「その解雇理由は正当なのか」ということです。解雇を伝えられた労働者が「正当ではない」と思っていても、解雇を受け入れる意思を示めしたら「正当な解雇」となってしまいます。
なので「この解雇は正当ではない」と思ったときにまずやらなければならないことは、「なぜ解雇されなけれならないんですか。理由を教えてください」と尋ねることです。
これは「解雇理由証明書の請求」という行為で、労働基準法第22条に「労働者から解雇理由証明書の請求があった場合、企業は遅滞なくその証明書を交付しなければならない」と規定されています。
解雇理由証明書は退職後でも会社に請求できます。不当解雇か?と思ったら|今後のためにやっておくこと!

では、解雇理由証明書に書かれてある「理由」が、身に覚えのないことだったらどうしたらいいでしょうか。例えば、解雇理由証明書に「この者は会社のカネを横領したから解雇した」と書いているのですが、そんなことをしていない場合です。
それを不当解雇といい、きちんと対応すれば解雇が取り消される可能性があります。解雇にまつわる証拠を集めておく
不当解雇であることは、労働者が証明しなければなりません。
解雇の予告は突然でも、「解雇させられるかもしれない」という雰囲気は、かなり前からつかめるはずです。その感じを察知したら、証拠集めを開始してください。
不当解雇をする経営者や管理職は、必ず「工作」をします。例えば、辞めさせたい従業員に強烈なパワハラを仕掛けて精神的に追いこみ、重大なミスを起こすように仕向けたりするのです。
その上で会社は「重大なミスをしたのは労働者の責任だから解雇する」と言う可能性だってあるでしょう。
労働者はそれを見越して、パワハラ行為について、詳しくメモ書きしておきましょう。パワハラをした人の名前、役職、言動、時間は重要な情報です。
このメモ書きこそが、労働者が「それを理由に解雇することは不当」と主張するときの証拠となります。労働基準監督署へ相談
証拠がそろったら、労働基準監督署に相談しましょう。
相談といっても「会社から解雇を告げられ、解雇理由証明書も渡された。しかしそこに書いてある理由は嘘です。嘘と言えるのは、この証拠があるからです」と言えば十分です。
しかし、証拠集めは簡単ではありません。証拠がないと「悪い人」を追い詰められないのは、警察も労働基準監督署も同じです。
では、証拠集めという「難題」をクリアするにはどうしたらいいでしょうか。
労働問題に強い弁護士へ相談を
いま、労働問題を専門にする弁護士事務所が増えています。それは、政府が「働き方改革」を推進するなど、「労働」や「雇用」が社会問題になっているからです。
労働問題専門の弁護士は、不当な解雇予告を受けた労働者の強い味方です。そのような弁護士事務所では初回の相談を無料で受けてくれます。そこで、会社側と闘うかどうか判断すればいいのです。
もし「闘う!」と決めた場合、弁護士費用が心配になると思いますが、それも「成功報酬」を提示している弁護士事務所であれば心配ありません。解雇予告を受け入れるのであれば・・・
できれば会社都合退職へ変更を
短気は損――この有名な格言は、解雇という事態に巻き込まれたときにも有効です。
会社都合退職にできるのであればそうするようにしましょう。自己都合退職にしてしまうと大きな損失(失業保険な金額や受け取れる期間が異なる)を招きます。
解雇を言い渡された労働者が「退職はやむを得ないかな」と感じた場合でも、会社側に自己都合退職を避けるように働きかけましょう。
新たな職場でスタートを!
解雇を受け入れた場合でも、できるだけ短期間のうちに「新しい職場で再スタートだ!」と気持ちを切り替えてください。
そのためにも、「解雇を通告された後の対応」が重要になります。解雇されて何年も経過しても悔しい気持ちが消えなければ、新しい仕事にも力が入りません。
そこで、労働基準監督署に相談したり、弁護士の力を借りたりして、「自分の正しさ」を主張してください。
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