不倫相手を訴えるには?慰謝料請求方法や注意点を弁護士が解説
配偶者に浮気・不倫をされたら、不倫相手を訴えることを考える方も多いでしょう。しかし、場合によっては不倫相手を訴えられないことも。不倫相手を訴えるための条件や、慰謝料請求をする際の手順、注意点を弁護士が解説します。

今回ご解説いただく弁護士のご紹介です。
安藤 秀樹 弁護士
安藤法律事務所 代表弁護士
仙台弁護士会 所属農学部出身。理系出身であることもあり、わかりやすく・納得のいく説明が得意。物腰柔らかく、気軽に相談できることを大事に弁護活動を行う。
詳細はコチラ
不倫相手を訴える前提条件
不倫相手を訴えることは基本的には可能です。但し、それにはいくつかの条件を満たす必要があります。まずは不倫相手を訴える、つまり慰謝料を請求するための前提条件を確認していきます。
故意か過失か
不倫相手を訴えることが可能な場合
配偶者のことを既婚者と知りながら性的関係に及んでいた場合、原則として不倫相手は慰謝料請求の対象になります。これを故意による不倫と呼びます。
不倫相手を訴えることができない場合
先述の訴えることが可能な状況に対し、不倫相手が配偶者のことを既婚者だと気づけなかった場合には、不倫相手には慰謝料請求ができないこともあります。これを過失なき不倫といい、不倫相手はむしろ騙されていた、ということになるため、不倫相手を訴えられない可能性が高いです。例えば出会い系サイトで出会って一晩限り、ということであれば既婚者だとわからなくても不思議はないです。
ただし、過失が認められた場合には、ある程度の慰謝料請求が認定される場合もあります。それは「普通に注意していれば」既婚者だと気づける状況であるにも関わらず性的関係を持っていた場合です。つまり、既婚者だと気づけなかったのは「注意不足」であると言える場合です。
どういうことかというと、例えば職場不倫だとして、あなたの配偶者が社内で結婚していることを公表していたとすれば、周囲に尋ねれば結婚している事実に通常はたどりつけたはずです。そういった場合でも気づかない可能性もありはしますが、それでも注意不足として、ある程度の慰謝料請求が可能になることがあります。特に、2~3年など、ある程度の期間にわたって関係が続いていたようなケースであれば、「どこかで気づいただろう」という話にもなりえます。
注意不足で不倫の責任が認められた事例をご紹介します。全体で250万の慰謝料が認められていて、そのうち50万円を連帯して払う、というケースがありました。ある程度の期間の関係の場合、相手が既婚者だと全く気づかない、ということは考えにくいので、ある程度請求できる可能性があると見て良いでしょう。
不倫相手を訴えるには証拠も必要

証拠の代表例
メール、SNSなどでのやりとり
不倫関係にあることが明らかにわかるメールやSNSでのやり取りを写真におさめておくことは非常に有効です。
ただし、「ふざけているだけだ」と言い逃れされるようなやり取りだけでは心もとないです。言い逃れできないような、わかりやすいやり取りをご自分の携帯で写真に納めておきましょう。その際は、発信している人が誰かわかるようアイコンなどもきちんと写すようにしてください。また、不貞行為は一度だけでは認められづらいので、関係が継続していることがわかるよう、複数のやり取りを収めることがベストです。
LINEのやり取りで実際に証拠に上がったものとして、「家に来てもいいよ」「旦那が仕事に行ったから、うちでもいいよ」「ホテル行く?」というLINEのやり取りが決め手になったこともあります。これらも”冗談”と言い逃れをされることもあるので、プラスの何かしらの証拠は必要です。
配偶者のクレジットカード利用明細
ラブホテルをクレジットカードで利用していた場合、その利用明細が証拠になります。
もちろん明細だけでは「誰と行ったか」までは判別が難しいですが、たとえば上述のメールやSNS等で「ホテルにいった」などの発言が見つかれば、組み合わせて誰と行ったのか、証明できる可能性があります。
ただし実際には証拠を残したくない、といった観点から現金の方が多いのではないかという印象です。多くはありませんが、管理が甘い場合だと、領収書やレシートがゴミ箱から発見されることもあります。
ラブホテルに出入りする際の写真や動画
ラブホテルに入室、そして一定時間後に出てきたところを写真におさめられれば、一番強力な証拠になります。
もちろんこれは自力での収集が難しいので、通常は探偵に依頼されることが多いです。
配偶者や不倫相手が不倫を認めた音声や動画
相手に不倫の有無を確かめ、その際にそれを自白した際の音声があれば、これもかなり強力な証拠になります。
ある程度の証拠を収集したあと、直接相手にそれを提示して訪ねれば相手が自白することもありえます。但し、これは最終手段と捉えておくべきです。なぜなら、もしこれを行って相手が不倫を認めずに、その後証拠となる事実を隠し始めたとしたら、その後の証拠収集は極めて困難になるからです。
弁護士などの専門家と協力して、証拠が出揃った、これ以上はもう出ないだろう、という場合に一緒におこなってください。
その他に代表的な証拠の例
ツーショットなどをスマホに保存していて発覚したケースもあります。なかには、あろうことか行為の写真や動画をLINE等のSNSでやりとりしていたり、デバイスに保存していることもあります。
もし行為の写真や動画あれば、動かぬ証拠になります。
有効な証拠の組み合わせ例
もっとも強力な組み合わせは、不倫が伺えるメールでのやりとりと、ラブホテルの入退出時の写真を組み合わせればほとんど完璧です。写真については探偵に撮影してもらうことがほとんどかと思います。
ちなみに、ラブホテル写真がある場合は、単体でもかなり強力です。これさえあれば不貞行為での慰謝料請求が認められやすいと言えるほどです。その他に、行為の写真や動画も同じくらい強力です。
とはいえ、不倫の事実を証明するには、複合的な事実を積み重ねて証明していくことになりますので、有効な組み合わせ、というよりもなるべく多く記録しておくことが大事です。
なので、どうしても証拠が集まらないけれど、不倫の存在が確信に近いような場合には、費用が掛かりますが、探偵に調査を依頼してもよいかと思います。
やってはいけない証拠の集め方
メールやSNSのやり取りを不法に収集
不正アクセス禁止法違反に該当するような行為は禁止です。ただしハッキングのようなことができるような人がどこまでいるか、という問題はあります。
基本的に配偶者のスマホを勝手に見たくらいでは不法行為とまではならないでしょう。他人のものであれば問題ですが、配偶者のものは不法行為になるということは基本的には無いように思われます。
無許可でのGPS設置による尾行
無許可でGPSを配偶者のバッグなどに仕込み、追跡しての証拠収集もあまりオススメはできないところです。
配偶者であればメールやSNSのときと同様に、不法行為に当たる場合は少ないとは思いますが、不倫の疑いが誤りであった場合などは、民法709条の一般不法行為になりかねませんし、逆にこのことが離婚原因となるかもしれません。
相手を軟禁しての自白強要
配偶者や不倫相手を呼び出し、「不倫の事実を認めるまで帰さない」などと脅すことは絶対にやめましょう。
刑法第222条の脅迫罪、刑法第223条の強要罪、刑法第220条の逮捕監禁罪にあたる可能性があり、逆にコチラ側が犯罪者になってしまう危険性も高い行為です。 こういった交渉を行う際は、なるべく弁護士に付き添ってもらい、このようなリスクを避けて話し合いをしましょう。
不倫相手を訴える際の流れ

きちんと証拠を集め、相手が特定できる根拠を持ったら、実際に不倫相手を訴える手続きに入ることもできます。
不倫相手を訴える流れ(1) 請求金額の決定
不倫相手へ請求したい慰謝料の金額を決めましょう。一応相手が言い値で応じればそれでも良いのですが、あまりにも高額な請求は相手が応じる可能性が少ないので意味がなくなってしまうこともあります。
できるだけこの金額に至った経緯や根拠、というものを指し示す必要があります。その際、弁護士に状況と証拠を提示して相談した結果、この金額になった、という事実があると説明がしやすいです。ぜひ一度ご自身の状況だとどのくらいの慰謝料が適正か、相手への請求の仕方も含めて弁護士にご相談ください。
不倫相手を訴える流れ(2) 内容証明郵便の送付
請求する金額を決定したら、相手に請求をしていきます。内容証明郵便にて今回の経緯、払ってほしい金額について、内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便とは、こちらが送った手紙の内容を郵便局が証明する配達方法です。このようなケースで使用する目的としては、普通の郵便だと手紙の内容がどういうものかを証明できないので、「そんなものを読んでない」と言い逃れできる可能性もありますが、内容証明郵便であればその内容の郵便を送っていることを郵便局(郵便認証司)が証明してくれるので言い逃れが難しくなります。
また、不貞行為の時効は基本的には3年で、請求可能な時間が残り少ないという場合にも、内容証明郵便の送付によって時効の完成を6ヶ月間だけ遅らせることができるので、「その間に裁判を起こす」という選択肢を得ることも可能です。
弁護士介入の場合であっても、まずは内容証明郵便の送付が基本です。個人でも慰謝料請求交渉を行うことは不可能ではないのですが、先に述べたような犯罪を引き起こしかねないので、まずは弁護士に相談して対応を一緒に考えるところからスタートすることをおすすめいたします。
[Point]
浮気・不倫相手の連絡先特定について
基本的には、自分の夫や妻から「不倫相手の情報」を聞き出すことになり、また弁護士は電話番号があれば相手の素性を調査することができます。ただし、相手の電話番号や素性全般が不明だと特定が厳しく、昨今ではLINEしか使っていない場合も多いので、本人特定が困難な状況も珍しくありません。LINEのIDに電話番号が紐付いているなどの事情があれば、LINEしか知らずとも調査が可能ですが、そうでない場合、どうしても本人特定ができず、不倫相手へ慰謝料を請求できないこともありますので注意してください。[/Point]
不倫相手を訴える流れ(3) 示談交渉
内容証明に返答期限を記載することが多く、郵便送付後に相手から連絡をもらい、それでどこかで会う、という事になるのが一般的な流れです。
本人同士だけで会う場合、いざ相手を目の前にすると感情的になってしまい、「この書面に印鑑を押すまで帰らせない」など、軟禁などの不法行為に発展しまう危険性があるので、可能であれば交渉を弁護士に代理してもらうべきです。
また、相手も急に慰謝料の請求を受けてびっくりして弁護士をつけて来ることも少なくありませんので、そういった観点でも弁護士に相談をしておくべきタイミングです。
不倫相手を訴える流れ(4) 相手が応じない場合
訴状作成の上で裁判を行う必要があります。ただし、実際には裁判まで発展することは少ない印象です。事実関係を争っている場合であれば裁判に発展することもあるかと思いますが、金額面で折り合わないという状況での訴訟はあまりありません。というのも裁判に行っても金額はあまり変わらず、互いの負担が増えるだけなので、示談交渉でまとめよう、という発想になることが多いからです。
ただし、全然お金がないから全く払えない、など何ら誠意を感じられないという場合には訴訟へ発展する場合もあり得ます。
不倫相手を訴えたいときの注意点

怒鳴り込みや待ち伏せ
不倫相手の家や職場への怒鳴り込みや待ち伏せは、やりかたによっては法律違反になってしまう可能性がありますので、やめましょう。
つい感情的になって、職場へ乗り込んでしまうというお話も聞くことがありますが、職場の場合は業務妨害になってしまい、刑事事件になる可能性があります。そうでなくても会社から損害賠償を受ける可能性もある行為ですので、絶対にやめましょう。
具体的に抵触しそうな法律としては、しつこく会社に電話をかけたような場合には業務妨害(刑法233条、234条)、会社に押しかけて帰らない場合ですと不退去罪(刑法130条後段)となりえます。
不倫相手をSNSなどで攻撃
SNSの投稿では、不倫があったことを証明することは極めて困難ですし、そもそもそういった事実を不用意に書き込んでしまうと名誉毀損(刑法230条)に当たる可能性もありますので、やめましょう。
「事実だから何を言ってもいい」と勘違いされるお方もいらっしゃいますが、それは間違いです。仮に不倫をおこなった人だとしても、法律上、不用意に相手の尊厳や名誉は傷つけて良いということは全くなく、当事者間で解決すべきと考えられています。
不倫相手を訴えるなら弁護士へ相談を

不倫相手について、電話番号しか分からないなど、断片的な情報しかなく請求が出来ないという場合も良くあります。そのような場合でも弁護士であれば調査が可能な場合がありますので、ぜひ一度ご相談にいらしてください。
また、お持ちの証拠で不倫相手を訴えられるかどうか不安といった場合もあるかと思います。お持ちの証拠を持ってきていただいたうえで、ご相談にお越しいただければ、お持ちの証拠が不倫の証拠として裁判等でも認められるかどうか判断することも出来ます。
ご自身で交渉する場合ですと、相手方の対応に対してどうしても感情的になることが多いかと思います。第三者である弁護士を間に挟むことによって、早期の解決が可能な場合もあります。どのように請求を進めていくかについても、弁護士にご相談いただくと見通しがはっきりとしてくるかと思います。請求をお考えの際には、ぜひ、お近くの弁護士までご相談にいらしてください。