離婚の準備まとめて解説。離婚を切り出す前にやるべきこと
思い立ったが吉日という言葉があるとしても、「離婚しよう」と切り出すのは一旦お待ちください。配偶者と離れる以外に、考えるべき問題はありませんか?
特に気をつけるべきは、お金と子供と、離婚の実現性です。
例えば、相手が動転して泥沼の離婚問題に発展したり、逆にすぐ合意されてあなたが無一文の生活になってしまったり、段取りひとつで人生が狂ってしまうことは珍しくありません。
この記事では安全かつ納得のいく離婚を進めるために必要な準備と考えるべきポイントを解説いたします。

・準備せずに離婚するとお金で苦しむ可能性が大きい。
・離婚の切り出し方を間違えると泥沼化する。
・円満な離婚は、入念な準備で実現しましょう。
いきなり離婚を切り出すリスクを知る
急に離婚を申し出て、その場で離婚が成立したら夫婦は他人になります。一方で夫婦は原則として合意なしの離婚はできません。
想像してください、あなたが「離婚しよう」と配偶者に切り出したら何が起こるのか?
相手が動転して泥沼の離婚争いに
ひとつは、相手の気が動転して全く離婚に応じてくれない場合です。離婚という衝撃に耐えられない、自分から離れようとする相手を認めたくない、そんな気持ちで激しくあなたに反発することが予想されます。
円満離婚が望ましいと言われるのは、お互いが相手方に配慮して冷静に話し合える関係を継続できるからです。段取りよく進めれば受け入れられた離婚が、感情のもつれで泥沼化するのはあまりに残念です。
離婚にかかる期間はどのくらい?
離婚にかかる期間は、一般的に数ヶ月〜1年以内です。
ただし上記期間はあくまで目安であり、双方が合意のうえであればすぐにでも離婚できますが、裁判に発展した場合は平均で約1年3ヶ月かかります。(参考:人事訴訟事件の概況|裁判所)
なお、厚生労働省の統計の結果では、全体の82.8%が別居してから1年未満で離婚していることがわかりました。離婚の種類によって多少異なりますが、裁判離婚の場合でも9割は5年未満に離婚が成立しています。(参考:令和4年度 離婚に関する統計の概況|厚生労働省)
離婚の準備をまとめて紹介
あなたが、離婚をするにあたって備えるべきリスクは次の2つです。
- 離婚に応じてもらえず泥沼化する
- 離婚してすぐお金や子育てに困ってしまう
どちらも恐ろしい未来ですが、逆に言えばこれらを避けるための準備をしっかりすれば、より良い離婚を実現しやすくなります。離婚を切り出す日までどんな準備をすべきか、見ていきましょう。
離婚後の生活に備える
あなたが生活するための基盤を作りましょう。扶養に入っていた場合も、再就職が必要になるでしょう。仮に働くことが難しい場合でも、何らかの保護を受けるための手続きが必要です。特に専業主婦の方は、離婚後の生活苦に陥りやすいので経済的な自立を手に入れることを最優先に動いてください。
ご自身で財布の管理をしていない方は、収支の把握や支払いができなかったりして困る場合があります。気をつけましょう。
転居が必要な場合は100万円貯めよう
離婚後に転居する場合は以下の費用がかかります。
- 引っ越し代
- 入居の初期費用
- 家具家電の購入費用等
これらを合わせると100万円程度かかると見られるため、離婚前から準備しておくことが望ましいです。離婚前に別居する場合でも同様に転居費用がかかるため用意しておきましょう。
助成金・公的扶助の申請もしておこう
経済状況によっては、公的な補助金を受けることも可能です。特に母子家庭は受けられる支援の幅が広いので役所へ問い合わせておくことが重要です。
請求可能なお金のリストアップ
離婚の際、配偶者へお金や資産を請求できる場合があります。相手方から適切な支払を受けるためには、正確かつ合理的な計算が求められます。離婚を切り出すときに、相手方の収入と財産のリストアップが完了している状態が理想です。
これらのお金も離婚後の生活に役立てましょう。
財産分与
お互いに築いた財産は、原則として折半で分け合います。あなたが専業主婦だとしても、夫婦の財産は「内助の功によって稼いだ財産」であるため、配偶者が築いた財産の一部を共有財産として請求することが可能です。
共有財産の一例を紹介します。
- 現金・預金
- 家具・家電をはじめとする家財道具
- 土地や建物
ただし住宅ローンなどの負債も財産分与の対象となります。ここは注意が必要です。
当然ですが、共有財産は結婚した後に築いたものに限られます。独身時代の財産まで算入することはできません。
婚姻費用
離婚前までの生活費を相手からもらうことができます。よく別居した場合に問題となる婚姻費用ですが、経済的DVを受けていた場合も本来受け取るべきだった生活費を婚姻費用として請求できる可能性があります。相手方に対し、具体的な金額を請求した日以降の婚姻費用しかもらえないケースが多いため、早めに相手方に書面を送付するなどして婚姻費用を請求した方が得策です。
婚姻費用の金額はケースバイケースですが、相場を知る上でも裁判所が公開している婚姻費用算定表を確認しておくと良いでしょう。
慰謝料
離婚の理由によっては、精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求することが可能です。慰謝料で問題となりやすいのは不倫とDVです。特に民法第770条1項の法定離婚事由に該当する場合は慰謝料が高額になりやすく、不倫の慰謝料相場は80〜300万円です。
離婚の慰謝料は妻から夫に請求する場合も、夫から妻に請求する場合もあります。
年金分割
婚姻期間中に厚生年金や共済年金に加入している期間がある場合は年金分割が可能です。年金分割には、以下2つの制度があります。
- 合意分割
- 3号分割
合意分割とは、婚姻中の標準報酬月額および標準賞与額をもとに按分された年金を受給できる制度です。分割の割合は、当事者間の合意または裁判所によって定められます。二人で2分の1ずつ按分されることが多いです。
一方、3号分割とは、厚生年金被保険者の扶養に入っていた人(第3号被扶養者)が標準報酬月額・標準賞与額の2分の1で按分できる制度です。双方の合意は不要ですが、平成20年5月以降に離婚した場合にのみ申請できます。
ただし、分割された老齢厚生年金を受給するには、離婚から2年以内に管轄の年金事務所に申請のうえ、厚生年金の加入期間や年齢などの受給資格を満たさなければなりません。
(参考:離婚時の年金分割|日本年金機構)
離婚理由と法律の確認
相手が何としても離婚に応じない場合、調停、さらには裁判が必要になることもあります。裁判までもつれることは、お互いにとってデメリットとなることも多いですが、相手方への悪感情が正しい判断を妨げかねません。
相手方が裁判を辞さないという姿勢であるとき、こちらができるのは裁判になっても離婚できるような準備です。
配偶者の意思と関係なく離婚が認められるには民法第770条1項にある法定離婚事由が必要です。法定離婚事由は次の5つがあります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年間の生死不明
- 強度な精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な理由
特に問題となりやすいのが不貞行為と、その他婚姻を継続しがたい重大な理由ですが、上記5つに該当する行為だけでなく婚姻関係の破綻も条件となります。
法定離婚事由がなければ別居しよう
別居していれば離婚が認められやすくなります。なぜなら、民法752条において、原則として夫婦には同居の義務があり、別居を継続していること自体が婚姻を継続しがたい重大な理由に該当しうるからです。
別居後すぐに離婚できるわけではありませんが、期間が長期になれば夫婦関係が破綻していると見なされ、法定離婚事由の「その他婚姻を継続しがたい重大な理由」に該当する可能性が高まります。
また、離れて暮らしている間に仕事や住居など今後の生活基盤を整えたり、気持ちの整理ができる点も離婚前に別居するメリットのひとつでしょう。
子供がいる場合に必要な離婚準備
子供がいる場合には、以下のような取り決めに関する準備も行う必要があります。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
離婚には手続きが多く、心身ともに負担が大きいものですが、子供がいるケースではなおさらです。離婚準備の際には、あらかじめ上記3点についても検討しておくほうがいいでしょう。
親権
日本では単独親権制度がとられているため、離婚の際は民法818条第2項により子供の親権を決めなければなりません。親権とは、子供の教育や居所、職業選択および財産管理を行う権利を指します。
原則として、親権は身上監護権・法定管理権・財産管理権がセットになっています。ただし、当事者間の合意のうえであれば親権から監護権のみを切り離して指定することも可能です。
養育費
子どもの生活費として支払われるお金です。養育費の計算を迅速に行うためには、裁判所のホームページにある養育費算定表が参考になります。養育費を受け取るのは子どもを育てている親権者ですので、父親が子どもを養育している場合は、母親が養育費を支払う側となります。
面会交流
離婚準備では、面会交流についての取り決めも行いましょう。面会交流とは、離婚後に離れて暮らす親が子供と面会する権利を指します。
婚姻関係は解消しても、子供にとって双方が親であることは変わらない事実なため、適度な面会交流が子の福祉のために不可欠だというのが現在の定説です。面会交流には直接交流と間接交流(子供の写真を送ってもらう等)があり、子供の年齢や各ケースの事情に応じて適宜定められます。
離婚の原因について証拠を確保する
離婚の原因となる事実については、証拠が必要です。証拠がない状態では、相手からの合意を引き出すことが困難であり証拠隠滅を図られる恐れもあります。一方で証拠を確保できていれば裁判での勝ち負けを予想しやすくなるため、それに応じて有利な交渉をしやすくなります。
証拠として何を集めるべきか?
証拠として集めるべきものは、客観的に離婚事由に該当する事実がわかる記録です。音声よりも画像や映像、メモよりも公的な記録の方が望ましいですが、証拠として採用できるかどうかは弁護士に判断してもらいましょう。
具体的には次のようなものが証拠になります。
- 不倫やDV現場の写真・映像
- 暴力・暴言を受けている最中の録音
- 医師の診断書
- 長期的につけた日記やメモ
上記のほか、財産分与には資産を証明できる通帳や証書が必要です。
心の準備は、できていますか?
離婚がスムーズに進まないことは珍しくありません。しっかりと意思を持って離婚手続きを進め、時には調停や裁判をやり切る覚悟が必要となります。
また、離婚した後は配偶者と話し合いたいことも自分で決断し行動しなければなりません。そのため、精神的な自立も新しい一歩に必要です。離婚せずに状況を好転できるなら、その方法も探した方が良いでしょう。
離婚することでどのように未来が変わりますか?離婚の目標・妥協点を決めておくことも大切な準備です。
離婚を切り出すタイミングはどうする?
離婚を切り出すタイミングは、ケースバイケースという他ありません。しかし、ここまでの内容をおさらいすると「離婚しても生活できるようになったら」という基準が見えてくるでしょう。
協議が難しい時ほど弁護士へ相談しよう
当事者間で直接話し合うと、感情がヒートアップして離婚協議が進まなかったり、よく考えずに合意してしまって大切な権利を失ってしまうことがあります。1人で解決することが難しいなら、あらかじめ離婚問題に強い弁護士を味方につけておきましょう。
弁護士は離婚を切り出すタイミングや必要な準備についてしっかりアドバイスしてくれます。いざという時はあなたの代理人となって配偶者との協議に臨んでくれます。できるだけ迅速な解決を望む場合や、DVやモラハラのせいで対面・対等の話し合いが困難な場合でも力強いサポートを得られるでしょう。
まとめ
離婚は準備をしないと思わぬトラブルになる一方で、しっかり準備すれば望みに近い条件での離婚を実現しやすくなります。円満かつ迅速な離婚のために大切なのはお金の問題と子育ての問題を解決すること。そして、離婚争いを解決してくれる優れた弁護士を見つけることです。
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