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裁量労働制のみなさん、残業代ちゃんともらってますか?

もしあなたが上司から「君は裁量労働制で働いてもらっているから、残業代は支給されないよ」と言われたとしたら、その上司は勘違いをしている可能性があります。裁量労働制で働いている労働者にも「残業代が出ることがあります」。上司や管理職や経営者の中には、「裁量労働制は残業代を支払わなくていい制度」と考えている人もいますので、労働者自身が知識を持っていないと、本来はもらえるはずの残業代を「取りっぱぐれる」ことになりかねません。

裁量労働制では残業代が出ないと思っていませんか?

労働者に上司や管理職たちが「裁量労働制の社員に残業代を払わなくていい」と考えるのも、仕方ないかもしれません。

そもそも裁量労働制は、「従業員に、会社の机の前に座っている時間分のすべての給料を支払っていたら人件費が大変なことになる」という経営者の訴えが出発点になっているからです。

例えばある会社の従業員が、仕事中に自席のパソコンでパンダの動画を見ていたとします。これは「労働」なのでしょうか。

この従業員が、缶コーヒーのCMにパンダを起用することを企画している従業員であるならば、これは「労働」といえそうです。

もっとも、パンダの動画を見ること自体が缶コーヒーのCMの企画という業務そのものであるかは微妙です。

このような仕事では、実労働時間と業務内容とを対応させることが困難です

そこで裁量労働制という「働き方」と「給料の支払い方」が生まれたのです。
 
今回はこの裁量労働制と残業代の仕組みについて解説していきます。
 
この記事でわからないことや深く知りたいことがあれば弁護士に相談することをオススメします。
 
弁護士に協力してもらうことで、自分では判断できないことも法律に則った判断ができるようになります。

裁量労働制とは何かを改めて確認しましょう

 
裁量労働制という「働き方」は労働者に関することです。そして「給料の支払い方」は会社や社長など使用者に関することです。
 
この2つの観点を前提に、裁量労働制についてみていきましょう。

裁量労働制とは(1) 労働時間を個人の”裁量”に任せる

裁量労働制の「裁量」とは、「自分の考えで仕事を決めて遂行すること」という意味です。

従来「裁量が与えられた人」は、いわゆる「偉い人」と考えられていました。

例えば社長という偉い人は、自分の会社でどのような事業を行うかを決め、その仕事を従業員に遂行させます。

また、管理職も、仕事のやり方を決め、部下に「この通りやりなさい」と指示しますので「裁量がある」といえます。

しかし、平社員であっても「裁量を与えないとうまく仕事が進まない業務」が生まれました
 
専門業務に従事する従業員や企画業務に従事する従業員です。
 
そこで、偉くない人、つまり通常の労働者にも「裁量を持たせて働かせよう」となったのです。

裁量労働制とは(2) 労働時間を〜時間働いたものと”みなす” 

平社員や役職のない社員に「裁量を持たせて働かせる」だけであれば、何の問題も生じません。問題が生じるのは「仕事量」と「勤務時間」の2つにおいて、労働者と使用者の考え方が食い違うときです。

使用者はこのように考えます。

「短時間で多くの結果を出してほしい」「いい企画がほしいが、企画に直接つながらない業務時間に賃金を支払いたくない」

対して労働者はこのように考えます。

「短時間で結果を出しても賃金が安くなるだけだからゆっくり働こう」「企画の構想を練る時間に賃金が出なければいい企画は作れない」

そこで「みなし労働時間」という考え方が生まれました。労働者と使用者で「この仕事は○時間で終わらせる」と合意をするのです。

みなし労働時間を導入すると、労働者の考え方は、次のように変わります。

労働者「短い時間で多く結果を出そう」「しっかりと構想を練っていい企画を作ろう」

いかがでしょうか、使用者の考え方と合致することになります。これが裁量労働制が目指す理想の姿です。

しかし現実はそううまくいかず、問題点もあります。

裁量労働制とは(3) 裁量労働制を取り入れるのには条件が必要 

裁量労働制の問題点を指摘する前に、裁量労働制を導入するための条件を紹介します。

厚生労働省が示す、裁量労働制のうちの、専門業務型裁量労働制の条件は次の通りです。

次の事項を労使協定で定め、労働基準監督署長に届け出ること

  1. 裁量労働制の対象とする業務
  2. 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間。3年以内とすることが望ましい
  7. 4と5に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

国がこれだけ「強い縛り」をかけているのは、使用者が裁量労働制を悪用すれば「サービス残業隠し」になってしまうからです。

また、裁量労働制を導入できる業務は決まっています。

研究、情報処理、取材・編集、コピーライティング、弁護士、中小企業診断士、企業の中枢部門で企画立案をする人などです。

裁量労働制で残業代が発生するのはどんなとき?

裁量労働制において労働者が最も気にしなければならないのは「みなし労働時間」です。残業代をもらえるかどうかは、これにかかっています。

みなし残業時間が8時間(週に40時間)を超えるとき

割増賃金、すなわち残業代が支払われるのは、1週間に40時間以上、1日に8時間以上働いたときです。

これは、裁量労働制の対象であろうとなかろうと、すべての労働者に当てはまるルールです。

ですので、裁量労働制の対象となった労働者と使用者が「みなし労働時間は1日9時間、1週間に45時間」と定めたら、1日1時間、週5時間分の残業代が発生します。

例えば、労働者が「その仕事を1日8時間でこなすのは厳しいですね。9時間とみなしてください」と依頼し、使用者が「そこをなんとか8時間でこなしてほしい。みなし労働時間を9時間にするのは厳しい。頼む」と言われ、労働者が「分かりました、8時間でいいですよ」と了承してしまったら、1日9時間働いても10時間働いても、残業代は出ないことになってしまいます

深夜(22~5時)に労働したとき:割増分だけは支払われる

裁量労働制の労働者が深夜(22~5時)に働いたときの割増賃金のルールは少し複雑です。

みなし労働時間が週40時間以下で1日8時間以下の裁量労働制労働者が深夜に働いたら、「残業代は出ないが、深夜割増分だけは支払われる」と覚えておいてください。

例えば時給2,000円の裁量労働制労働者が22時から1時間働いたら、「残業代としての時給2,000円」は支給されません、「2,000円に割増分25%をかけた500円」が支給されます。

法定休日に労働したとき:時間外労働割増賃金が支払われる

労働者の休日は「法定休日」と「法定外休日」があります。ここでも説明を簡略化しますと、週休2日制の会社であれば、1日が法定休日、もう1日が法定外休日と、ざっくり覚えておいてください。

この場合、残業と異なり、実労働時間分の割増賃金が支払われます。

なぜなら、裁量労働制は労働日の労働時間に関する制度であり、無賃金での休日労働を認める制度ではないからです。

いずれの場合も、休日手当が出ます。ただし、割増率は、法定休日が35%、所定休日が25%となっています。

つまり、時給2,000円の裁量労働制労働者が休日に4時間働いたら次の金額が支払われます。割り増し分だけでなく、働いた時間分の時給も出るのです。

・法定休日:2,000円×4時間×1.35=10,800円

・所定休日:2,000円×4時間×1.25=10,000円

裁量労働制の残業代の計算方法〜えっこんなに残業代があったの・・?〜

それでは次に、具体的に、裁量労働制の対象となる労働者の残業代の計算をしてみましょう。
 
残業代を正確に計算しようとすると「所定賃金」「基礎賃金」「所定労働時間」「所定労働日数」といった難しい用語が必要になりますが、ここではそれらを使わずに、単純化してシミュレーションしてみます。
  • みなし労働時間:1日9時間、週45時間
  • 月給の時給換算:2,000円/時間

(1) 残業時間を確認する

この人のみなし労働時間は、法定労働時間の1日8時間、週40時間を超えていますので、その分が「残業代」として支給されます。

残業代の「時間単価」は、時給の25%増しになります。つまりこの方の1時間当たりの残業単価は2,500円です。計算式は次の通りです。

・2,000円/時間×1.25

(2) 割り増し率をかける

この人がある月に20日出勤したとしたら、残業代は50,000円です。計算式は次の通りです。

・1時間/日×20日出勤×2,000円/時間×1.25

1.25をかけるのは「残業代は時給の25%増し」というルールからきています。

裁量労働制の人が未払いの残業代を請求するには?

いかがでしょうか。「裁量労働制の残業代のルールは難しい」と感じていただくことができましたでしょうか。とりあえず「難しい」ということをご理解いただけるだけで、1歩前進です。

裁量労働制の残業代の請求方法(1) まずは残業代が「発生」し「未払い」である証拠を集める

というのは、「裁量労働制では残業代が発生しない」と理解している人が多いからです。悪い使用者だと、労働者にそのように説明するかもしれません。

また、ルールが複雑なため、使用者が悪気がなく「残業代が出ないのが裁量労働制の良いところ」と勘違いしている可能性もあります。

そこで裁量労働制の労働者は、「あれ? このケースなら残業代が出るんじゃないか」と感じたら、まずは「発生したこと」の確認と、「残業代が未払いであること」の証拠を集めてください。

裁量労働制の残業代の請求方法(2) 証拠を持って直接交渉する

残業代の証拠として重要なのは、雇用契約書です。

雇用契約書は、大体以下のようなフォームになっています。この中の「始業と終業の時刻」に注目してください。

この時刻によって、労働時間が1日8時間以内なら残業代は出ませんが、8時間超なら残業代が出ます。 

雇用契約書

契約期間      

 

入社日          

 

所属

 

就業の場所

 

従事すべき業務内容

 

始業と終業の時刻

1.始業(   時   分) 終業(   時   分)

※以下のような制度が労働者に適用される場合

2変形労働時間制:(  )の変形労働時間制とし、次の勤務時間とする。

始業(  時  分) 終業(  時   分)(適用日        )

始業(  時  分) 終業(  時   分)(適用日        )

3.フレックスタイム制:始業・終業の時刻は従業員の決定に委ねる。 

 コアタイム(   時   分)~(   時   分)

 フレキシブルタイム始業(   時   分) 終業(   時   分)

4.事業場外みなし労働時間制:始業(  時   分) 終業(  時  分)

5.裁量労働制:始業(  時  分)終業(  時  分)を基本とし、従業員の決定に委ねる。

休憩

12時~13時(60分間)業務の都合により休憩時間を繰り上げ、または繰り下げることがある

休日

変形労働以外:休日(土曜日、日曜日)、国民の祝日、年末年始

変形労働の場合:

1年単位の変形労働時間の場合

○詳細は就業規則及びそれぞれの規定による。

休暇

年次有給休暇、特別休暇

賃金

1.基本給 月給         円

2.所定時間外、休日または深夜労働に対して支払われる割増賃金

①所定時間外:時間外労働(25%)②休日:法定休日(35%)法定外休日(25%)③深夜(25%)

3.賃金 末日締め当月25日払い 

通勤手当

通勤定期代全額支給

退職に関する事項

1.定年制あり 65歳

2.自己都合退職の手続き(退職する30日前に届け出ること)

3.解雇の事由及び手続き(就業規則第○条~第○条による)

その他

社会保険の加入状況

健康保険(介護保険) 厚生年金保険 労災保険 雇用保険

会社名 株式会社○○○○

所在地 東京都○○区○○○△丁目△番△号

     代表取締役社長 ○○○○      ㊞

(従業員承諾欄)

上記労働条件により雇用されることを承諾します。

平成   年   月   日

従業員氏名                 ㊞

住所

電話番号

裁量労働制の残業代の請求方法(3) 交渉に応じないなら内容証明郵便を送付する

深夜業務や休日出勤などの割増賃金の「証拠」は、タイムカードとなります。コピーをとっておきましょう。

タイムカードがない職場なら、労働者自身のメモ帳に毎日の労働時間を記しておけば、それが証拠になることもあります。給与明細書も重要です。

これらの証拠を持って、総務部や経理部などの給料計算を行っている部署に行き「割増賃金が支払われていないようですので、確認してください」と依頼しましょう。

このとき重要なのは「まずは下手に」です。

しかし、もし総務部の人から「あなたは裁量労働制で働いているので、残業代も割増賃金も出るはずがない」と頭ごなしに言われたら、次の手段に出ましょう

内容証明郵便の交付です。

裁量労働制の残業代の請求方法(4) 労働基準監督署に申告を 

内容証明郵便は、会社側にとってかなり強烈な「パンチ」になりますので、大体はこれで解決するはずです。

しかし、それでも動じない会社もあり、それはもう完全にブラック企業です。労働基準監督署に申告しましょう。

労働基準監督署に行くときは、必ずすべての証拠を持参してください。

裁量労働制の残業代の請求方法(5) それでもダメなら労働審判・裁判で請求|まずは専門家へ相談を! 

労働基準監督署は労働者の味方になってくれる役所ですが、証拠が不十分だと、介入してくれないこともあります。

その場合でも、泣き寝入りしないでください。

労働審判という制度があり、これは地方裁判所で開かれるのですが、いわゆる「正式な裁判」ではありません。平たく言うと「早く決着がつく裁判」です。

労働者と使用者の双方から意見を聞き、「こうしてはいかがですか」と提案してくれます。

しかしその提案に対し、労働者が「その提案なら飲める」と回答し、使用者が「そんな提案は受け入れられない」と反発したとします。

そのときでも、最終手段である裁判があります。

裁判は自分でも起こせますが、やはり弁護士に依頼する方がいいでしょう。

労働問題専門の弁護士なら、初回の相談は無料で受けてくれることがあります。

裁量労働制のみなさん、残業代ちゃんともらってますか?のまとめ

裁量労働制の対象になった労働者は、とても誇らしい気持ちになるでしょう。仕事が認められたから、「裁量」が与えられたのですから。

しかし、経営者たちの中には「人件費を減らせる」と思っている人もいます。

どんなベテラン社員でも1日10時間かかる仕事なのに、「みなし労働時間」を1日8時間と設定してしまえば、それ以降はどんなに長時間働かせようと、原則、残業代を支払わなくて済むからです。

なのでまずは「適正なみなし労働時間」を確保しましょう。

1度1日8時間で合意してしまっても、後から「この仕事は相当きつい」と感じたら、上司に雇用契約の変更を申し出て、1日8時間以上に設定し直してもらってください。そうすることで残業代が出ます。

「働くこと」とはあなたの「労働力を売ること」でもあります。自分を安く売らないでください。

そして困ったらすぐに弁護士に相談しましょう。 
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