離婚調停の流れと、いざという場合の対処法を紹介
離婚の手続きを知りましょう。もしも、あなたが離婚を考えているなら、まず知るべきことは、離婚がどのような手続きで行われるのかということです。離婚は非常に体力も精神力も必要とされるとよくいわれますね。少しでも離婚手続きの流れを知る事で、頭の中でシミュレーションが可能です。ここでは特に手続きが問題となる調停離婚の手続きについてご紹介します。

調停離婚とは?

「絶対に離婚はしません!」
あなたがどれだけ離婚を望んでいても、相手が頑なに拒否しているような場合、離婚することは容易ではありません。
しかし、だからといって、いきなり離婚裁判を起こすことは、認められていません。まずは、離婚訴訟を起こす前に調停をすることが原則となっています。
夫婦で離婚について話を進めてきたがまとまらない、ということはよくあります。
親権や養育権、面会交流、財産分与や慰謝料など、離婚に伴う条件を決める際に意見が対立してしまうことも多いでしょう。
夫婦の話し合いで合意に至らない場合は、離婚調停を申し立てることになります。
今回は、離婚調停の基礎知識やその流れなどについて解説いたします。
調停とは?
調停とは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、紛争当事者の間に調停委員が介入して、話し合いにより合意することで紛争を解決する手続きです。
調停手続では、一般市民から選ばれた調停委員が裁判官(審判官)とともに紛争解決にあたります。
特に離婚調停では、離婚そのものだけではなく、親権者、養育費、面会交流、財産分与、年金分割、慰謝料など離婚に伴う諸条件についても併せて話し合います。
調停委員は、一般的に、40歳以上70歳未満の弁護士、医師、公認会計士、不動産鑑定士などの専門家の他、地域に貢献してきた人々のなかから選ばれることが多いようです。
離婚は調停前置主義
離婚に関する争いは、原則としてまず家庭裁判所で離婚調停をしなければ、離婚裁判を提起することができません(家事事件手続法257条第1項)。
調停前置主義とは、このように、離婚裁判に先立って調停を行なわなければならない制度のことをいいます。
離婚は、原則として、当事者の自由な意思に委ねられています。当事者の意思に委ねられている事項に関しては、裁判所の判断よりも当事者の意思による話し合いを優先させるべきとされているからです。
離婚調停をしないで離婚裁判を提起した場合は、家庭裁判所は、離婚調停にするのが相当ではないと認める場合を除き、職権で離婚調停に付することが可能です(同条第2項)。
離婚調停にするのが相当でない場合とは、以下のとおりです。
- ・相手の生死が不明である
- ・相手の行方が不明である
- ・相手が強度の精神障害にあるため話し合いによる解決が不可能である
このように相手が話し合うことができないような場合については、離婚調停をしないで離婚裁判を提起することが可能です。
調停離婚の流れを紹介
家庭裁判所に調停を申し立てる
ここでは、離婚調停の申立を行なった後、どのような流れで手続きが進んでいくのかについて解説します。
離婚調停はこのように進んでいく
離婚調停のおおまかな流れは、以下の通りです。
1)調停の申し立て
2)1回目の調停
3)2回目以降の調停
4)離婚調停の終了
1)調停の申し立て
離婚調停は、まずは申し立てが必要です。申し立ては、相手の現住所を管轄する家庭裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てます。
別居している場合も、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする必要があります。相手との合意があれば、任意の家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。
申立書を提出し裁判所に受理されたら、内容に問題がなければ、通常2週間~1か月程度で申立人と相手に調停期日通知書が届きます。
調停期日までに、自分の希望やその理由も含め、話し合いたいことをはっきりさせておくことが重要になります。
特に、不倫など当事者間で言い分が食い違うために争ってくると考えられる事案については、自分の主張を裏づける証拠を収集し調停期日に提出または開示できるようにしておきましょう。
2)1回目の調停
調停は平日に行なわれ、1回の調停では計約2時間程度の話し合いが行われます。
まずは、申立人と相手方が同席し(同席を希望しない場合には別々も可)、調停委員から、調停手続についての説明が行われます。説明の後、原則として、調停を申し立てた側である申立人から調停委員と話し合いをします。1回30分程度で交互に話し合いを続けます。
次回の調停期日を決定して1回目の調停を終了します。
3)2回目以降の調停
調停の期日は、約1ヶ月〜1ヶ月半に1度というペースで行なわれます。話し合いがまとまらなければ調停の回数は増えていきます。
ケース・バイ・ケースですが、平均して離婚調停は6ヶ月ほどの期間を要します。
4)離婚調停の終了
何度か調停を繰り返した後、申立人と相手が合意に達すれば調停離婚が成立します。
調停調書の作成
調停が成立した場合には、調停調書が作成されます。調停調書は法的な拘束力があるので、将来、慰謝料や養育費を支払わないような場合は調書により給与や資産の差し押さえも可能です。
調停調書を役所に持参すれば離婚届が提出できます。ただし、離婚届は原則として調停で指定された者が役所に提出しなけばなりません。調停成立後10日以内に離婚調書の謄本と提出する必要があります。
調停にかかる期間と費用は?
ここでは調停にかかる期間と費用について解説します。
離婚調停にかかる期間
離婚調停の申し立てから調停が成立するまでの期間は約3~6ヶ月、調停期日は2~4回が平均的な期間です。
しかし、親権や面会交流など子どもに関する内容の条件については、家庭裁判所調査官による調査があるので、通常よりも期間を要します。
裁判官や調停委員、弁護士、申立人、相手方などの日程調整がつかないと、さらに調停期間がかかることもあります。
離婚調停の費用は?
離婚調停の申し立てには、申立手数料、切手、その他の費用が必要です。
申立手数料は、家庭裁判所に支払う費用で収入印紙代の1200円がかかります。切手代は、裁判所からの郵便物を郵送するための費用で1000円程度支払っておく必要があります。
その他の費用は、戸籍謄本などの各種書類発行の手数料や交通費などを含みます。
さらに弁護士に離婚調停を依頼する場合には、弁護士費用も必要になります。
離婚調停で備えておくべきこと
離婚調停では、証拠を伴わなければ、いくら当事者が主張をしても説得力に欠け調停委員の心証を形成できないため、主張が認められることが難しくなります。
特に、離婚調停では裁判所が職権で証拠を取得することはありません。
したがって、離婚を成立させたいのであれば、自分の主張をしっかりと裏づけることのできる証拠の取得が何よりも重要になってきます。
しっかり主張する根拠があること
離婚原因には、不倫、DV、借金など様々ですが、離婚しようと思う原因が何であるのか、また離婚するときの条件はどのようなものか、離婚原因や離婚条件をしっかりと書き出しておきましょう。
その際、具体的に財産分与や慰謝料、親権や養育費についても、どれくらいの金額、支払期日などの詳細を自分でまとめておくことで調停の話し合いもスムーズに進みます。
調停では、何をどうしたいのか、自分の意思をしっかりと伝えることで調停委員にも理解してもらいやすくなるでしょう。
妥協できないラインを決めておくこと
調停を有利に進めるためには、自分の主張したい内容を事前に自宅で予習をしておくことも大切です。
相手がどのように出てくるのか予測をたて、それに対する回答なども準備しておけば心強いでしょう。
その際、自分でどうしても譲れない部分はどこなのか、妥協できないラインを決めておき、弁護士ならびに調停委員に伝えることも重要になります。
相手の財産を調べておくこと
財産分与では、基本的に当事者双方の財産を半分に分けることになります。財産分与の調停を有利に進めるには、相手の全財産を開示させることが重要になります。
公平かつ適切な財産分与を受けるには、相手方にすべての夫婦共有財産を開示してもらい
財産隠しがないことを確認することが必要です。
財産隠しがあるような場合は、金融機関や保険会社などに照会をして調査するようにしましょう。無資力な人間から財産は取れませんが、財産隠しを見過ごしてはいけません。
まとめ
調停離婚はお互い顔を合わせずに話し合うことができるものの、最終的には合意によって決着します。100%納得のいく合意は多くありませんが、訴訟のリスクやメリットを考えた上で生産的な妥協も必要です。
現実的に考えた時、どのような条件で離婚できるか?一度弁護士に相談してみませんか?