自首をすると減刑されるって本当?出頭と自首の違いも解説
刑罰や処分を軽くするために自首することをお考えなら、早めに行いましょう。捜査機関に発覚する前である方が望ましく、同じ罪を犯した場合でもデメリットが軽減されやすい傾向にあります。この記事では自首と出頭の違い、気になる自首のメリットを伊奈さやか弁護士に解説いただきます。

自首と出頭は違う?早めに自首すべき理由はここにある
自首と出頭の違いはこちら
自首という言葉はニュースでも聞いたことがあると思います。
自首に関しては、刑法第42条1項に、
「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」
と定められています。
捜査機関に発覚する前というのは、事件自体が明確化していない場合から、事件は明るみになっているが犯人は明確化していない場合を含みます。
一方で、出頭とは、捜査機関が犯人を特定している場合に自ら捜査機関に出張することをいいます。
つまり、大きな違いは、犯人として特定されているかいないかです。
自首すると減刑されるって本当?
刑法42条には、自首した場合に「その刑を減軽することができる。」とあります。
必ず刑が軽くなるとは書いていませんが、ほとんどの場合は、刑が減軽されます。
なお、先ほどの出頭の場合は、自首のように減軽を認める条文はありませんが、刑を軽くする情状の一つになり、結果として減軽されることはありえます。
結論、自首をするなら早いほうが良い
自首は捜査機関に発覚する前、又は、犯人として特定される前に捜査機関に犯罪をしたと申し出たときに成立するものですから、自首となるには、捜査機関に通報される前がベストでしょう。つまり、自首をするなら早ければ早いほうがいい、ということになります。
自首をするメリットは減刑だけではない
自首をするとどれくらい減刑されるのか?
自首の場合は、任意的減軽ですが、刑の減軽の方法は、刑法第68条に記載があります。
例えば、祐希の懲役の場合は、その長期と短期を2分の1にします。
ただ、どの程度減軽されるかについては、他の事情も含めて裁判官の裁量になりますので、絶対に半分になります、というように具体的な例を記載することは難しいです。
【参照条文】
(法律上の減軽の方法)
第六十八条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
四 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。
五 拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。
六 科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。
逮捕・勾留・起訴・実刑のリスク軽減
自首した場合は、逮捕や勾留のおそれも少なくなります。
とくに勾留の場合、勾留を認める要件として「逃亡するおそれ」というのがあります。
自首をするということは、自分から罪を認め所在を明らかにする行為といえますので、逃亡するおそれがない、と認定され、勾留されるリスクが少なくなります。
また、自首した場合には、起訴されずに不起訴となる可能性があったり、
起訴されても刑が減軽されて、実刑ではなく執行猶予がつく可能性が高くなります。
【参照条文】
刑事訴訟法60条1項
第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
自首は報道対策になる
自首した場合には、多少は報道対策になる可能性はあります。
警察として事件を大きく見ないで終わらせることがあるからです。
ただ、自首したことが報道されたことを耳にしたこともあると思いますので、報道対策になるかどうかは、事案の大きさや社会に与える影響にもよると思われます。
自首した後の流れ
自首した後は、どのように取り扱われるのか、その流れをご紹介します。
事情聴取と自首調書の作成
自首した場合は、まずは事情聴取されます。
また、刑訴法245条、241条により、自首を受けた捜査機関や検察官は、自首調書を作成する義務があります。
場合によっては逮捕される。
自首したとしても、事案の重大性や、被疑者の生活状況、精神状態などにより、逮捕されることがあります。
逮捕された後は、当番弁護といって、無料で弁護士を呼べる機会があります。
また、勾留された場合で私選弁護人がついていない場合は、国選弁護人が選任されます。
実況見分の立ち会いや取調べ
自首後には捜査が始まります。
例えば、事件発生現場での実況見分に立ち会ったり、犯行再現をしたりします。
また、並行して、話を聞かれる取調べが行われます。
起訴または不起訴
逮捕後勾留された場合には、勾留期間の満期までに、起訴または不起訴が決まります。
勾留されていない場合には、捜査機関の捜査が終わった後に、起訴または不起訴が決まります。
逮捕されない場合は在宅で手続き
逮捕されていない場合には、上記の実況見分の立ち会いや取調べのときだけ、警察署に呼ばれて応じます。
また、起訴後も在宅の場合には、公判日(裁判日)に、自分で裁判所に出頭します。
なお、在宅の場合には、起訴後に国選弁護人が選任されます。
自首同行を弁護士に依頼するメリット
逮捕可能性を下げる
弁護士が同行することにより、被疑者の実質的な監督が期待できるため、逃亡のおそれがさらに減少し、逮捕可能性が下がります。
もっとも、事案の重大性によっては、逮捕が免れないこともあります。
自首の準備ができる
自首する場合に、申告する犯罪の内容や経緯をまとめたり、また、証拠物品を持参することもでき、自首の準備ができます。
プライバシーの対策にもなる可能性があるる
捜査機関が犯人の特定のために捜査をすると、もしかすると、自分の家族や会社にまで捜査が入るかもしれません。
しかし、自首することで、先に捜査機関に犯人が分かるので、そのような捜査がされず、結果としてプライバシー対策になる可能性があります。
可能性がありますとしたのは、捜査機関は、犯人確保後には起訴に向けて捜査をするので、結局、家族に事情聴取したり、動機形成に関係がある場合には職場の関係者から事情聴取をすることもありますので、絶対にプライバシーが保護される結果になるわけではないからです。
示談の対応が可能
被害者がいる犯罪の場合、示談の対応を弁護士が行うため、早期から、被害者とコンタクトして示談を進めることができます。
特に、自首後逮捕されてしまった場合は自分自身で被害者と連絡をとることはできません。
また、示談の進捗についても、弁護士から捜査機関に報告することで、正確な内容が報告できます。
まとめ
人は間違うものです。
間違ってしまった場合、隠していると、明らかになったときにさらなる不利益を受けます。何より、隠している間、精神的に落ち着かないものです。
間違って犯罪を犯してしまった場合は、自首することを考えてみてください。
一人で自首することが怖い、自信がない、一歩が出ない、というときは、弁護士に相談するのも一つの方法です。
弁護人は被疑者の味方です。
不安にならず、相談してください。