親権を放棄することはできる?|離婚時の親権放棄の手続きとその注意点
「親権を放棄したい」と考えたときに、実際に親権を放棄する方法はあるのでしょうか。親権は親の義務でもあり、簡単に放棄することはできませんし、そもそも親権を放棄したいと考えること自体が許されることではありません。それでも、やむを得ない事情により親権を手放すことを考えている人のためにいくつかの方法をご紹介します。

どうしても親権を放棄したい事情がある場合の親権変更の手続きや離婚による親権の放棄

親権は、親だけに与えられた子供に対する権利です。
一方で親”権”は「権利」というより「義務」であるといわれることもあります。
親権は子供のために行使しなければならず、非常に制約が多いことからすれば、適切な理解でしょう。
親権は子供の財産を管理し、監護する権利であると同時に、子が育つために必要な親の責務なのです。
ですから、本来、「親権を放棄したい」と考えること自体、よいことではありません。
このような理解を前提に、やむを得ない事情があり、どうしても親権を行使し続けることが難しいという人のための解決策や手続きを今回は解説していきます。
親権は義務でもあるので、病気などの状況によってはその義務が果たせないという場合も考えられるからです。
繰り返しになりますが、どうしても親権を放棄しなければならない事情がある場合のみ、親権の放棄を考えるようにしてください。
親権を父親/母親側に移すことによる親権放棄の一般的な方法

協議離婚を機に親権を放棄したい場合|離婚届の親権者欄に配偶者の名前を記載
協議離婚をするとき、離婚届けの親権者欄で配偶者の名前を記載することで、離婚後の親権者が配偶者になり、自分は親権を手放すことができます。離婚のときに親権を放棄する最も簡単な方法であるといえます。
調停離婚により親権を放棄したい場合|夫婦関係調整調停の申立
協議で親権者を決めることができなかったときは、夫婦関係調整調停を申し立てて、調停手続きの中で親権者を配偶者に指定するべきだと主張することになります。調停・審判により親権を放棄できなかった場合|離婚訴訟の提起
調停手続きを経て、審判により自分が親権者と定められ、それに納得がいかない場合や、そもそも離婚の話し合い自体がまとまらなかった場合には、離婚訴訟を提起し、その中で親権者を配偶者とするよう主張することになります。
自身が親権を行使できない理由や、相手が親権者にふさわしい理由を主張していくことになるでしょう。
離婚”後”に親権を放棄したい場合|親権者変更調停の申立て
認知を機に親権を父親に移したい場合|協議・親権管理権届の提出/親権者指定調停・審判の申立て
子が婚外子(非嫡出子)である場合で認知を受けたときには、協議によって親権を父親に移すことができます(民法819条4項)。
具体的には、婚外子(非嫡出子)を妊娠・出産した母親は、父親に認知を受け、その際に協議により親権を父親に移すことで親権を手放すことができます。
話し合いで親権放棄の手続きがうまくいかなかったという場合は、親権者指定調停を申立て、家庭裁判所に父親を親権者と指定するよう主張することができます(民法819条5項)。
親権を父親/母親に移さない親権放棄の方法

親権を父親/母親に移すことが適切でないという場合の親権放棄の方法もあります。
親権を行使できないやむを得ない事由がある場合|親権辞任の許可の申立て
親権を行使できないやむを得ない事情がある場合で、父/母に親権を移すことが適切でないと考えられるときは、親権辞任の許可の申立てを行うことになります(837条1項)。
民法837条1項 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
子の両親が婚姻関係にない場合や、両親が二人ともが親権辞任の申立てを行う場合には、親権辞任の許可が下りた場合、未成年後見人が選任されます(838条1項・840条1項)。
また、親権を辞任した後、やむを得ない事由が消滅したら親権回復の許可を申し立てることもできます(837条2項)。
ただ、やむを得ない事由があったとしても、親権の辞任をするときには、父親も母親も両方親権者でなくなることが子供にどうような影響を与えるかなどを慎重に考える必要があるでしょう。
また、この手続きをとる前に子の手続きを行う前に監護権のみを祖父/祖母などの第三者に移すといった方法も検討すべきでしょう。
面倒を見ることだけが負担になっている場合には、監護権のみを移す手続きが最も有効な場合が多いはずです。
親権を放棄(喪失・停止)させる方法もある
今までは、自分から親権を放棄する方法を見てきました。
逆に、親権者以外が親権者の親権を放棄(喪失・停止)させる方法もあります。
この手続きは父母両方に問題がある場合にも有効です。
虐待やネグレクトがあった場合に、親権の喪失や停止が認められます。
親せきであれば直接親権の喪失・停止の審判の申立てを行うことができますが、実際には、自分の親せきや近所の子に限らず、親権者の親権の行使に問題があると考えられる場合には、早急にお近くの児童相談所にご相談ください。
親権放棄の注意点

親権を放棄するのは難しいことがわかりましたが、ここでは特に注意すべき点を挙げていきます。
そもそも親権を放棄する必要があるかを考える必要がある|養育費の問題とは直接関係はない
監護権のみを移すことも考えてみる
監護権とは、親権に含まれる子供に関する権利で、子供と共に生活をして日常の世話や教育を行う権利のことをいいます。
親権と監護権は話し合いだけで分離することが可能なので、親権を行使できないと思っても、面倒だけ他の人にみてもらうということが可能です。
重要な法律問題なので、弁護士に相談することが適切
親権だけでなく監護権などの問題も合わせて法律の専門家である弁護士に相談するのが望ましいでしょう。