熟年離婚した場合の年金分割について知っておくべきこと
熟年離婚後の年金分割について徹底解説致します。婚姻時から夫婦で積み立ててきた年金は、どのように分割し、受け取ることができるのか?どこまでが分割の対象となるのか?様々な疑問にお答えします。離婚後の年金に不安を抱えている人はぜひご覧ください。

熟年離婚の年金分割について
最近増えている熟年離婚。これまでコツコツ納めてきた年金は一体どうなってしまうのでしょうか?本来であれば夫婦二人で受け取るはずだった年金も、離婚をすればその受け取り方は変わってしまいます。
本記事では、まず熟年離婚の現状について、そして次に年金分割について詳しく解説していきます。
老後、自分がしっかりと年金を受け取るためにも、正しい知識を身に付けておきましょう。
熟年離婚を考えている方、手続きを進めようとしている方は必見です。また、将来的に離婚を考えているという人も、年金分割について知っておくと安心ですよ。
熟年離婚の現状
年金分割の話の前に、まずは熟年離婚の現状を把握しておきましょう。
近年、熟年離婚が増えてきていることはご存知でしょうか?
熟年離婚について(1) 熟年離婚率の変化
熟年離婚とは、20年以上連れ添った夫婦が離婚することとされています。
最近の熟年離婚率を見てみると、昔に比べて上昇してきているようです(厚生労働省HP 平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況 参照)。また、離婚まではしなくとも別居をしている夫婦も多く、熟年別居率も増加傾向にあるようです。
熟年離婚について(2) 熟年離婚の主な原因
熟年離婚の原因には様々なものがあります。子育てを終えて新しく第二の人生を歩みたい、配偶者の親の介護をしたくないなど、熟年離婚ならではの原因も多々あります。
他にも、一般的な離婚の原因である性格の不一致、浮気、DVなどもやはり熟年離婚の原因として挙げられます。
熟年離婚の年金分割について
では、ここから熟年離婚した際の年金分割について解説していきます。離婚した後、2人の年金はどうなるのでしょうか?
熟年離婚の年金分割(1) 年金を受け取る権利は夫婦で分割可能
熟年離婚をした場合、年金を受け取る権利は夫婦2人で分割することになります。
婚姻時から支払い続けてきた年金は、もちろん熟年離婚をしても受け取る権利があります。離婚したら受け取れない、ということはありません。共稼ぎでも妻が専業主婦だったとしても、年金分割は認められます。
熟年離婚の年金分割(2) 年金分割制度は2種類ある
年金分割制度には2種類あるのをご存知でしょうか。
年金は、婚姻時からどんな仕事をしていたのかや、妻が専業主婦の場合などで、それぞれ支払いの形が異なります。そのため、自分たち夫婦の状況を踏まえた分割方法で年金を受け取ることになるのです。
夫の合意が必要な「合意分割」
合意分割制度とは、夫の合意や裁判所の決定が必要になる、厚生年金または共済年金の分割方法です。夫婦間の合意がなければ、年金を分割し受け取ることはできません。
合意分割で受け取れる年金の分割割合は、その夫婦によって異なりますが、最大で半分の分割が認められます。
夫の合意が不要な「3号分割」
合意分割と異なり、夫の合意がなくても分割し受け取ることができる分割方法を、3号分割といいます。3号分割は平成20年4月から始まった制度で、分割割合はどんな場合でも2分の1と決められています。
婚姻期間中、夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合などに利用できる分割制度となります。
熟年離婚の年金分割における注意点
ここでは、熟年離婚の年金分割における注意点をまとめました。年金を受け取るためにも、しっかり押さえておきましょう。
注意点(1) 退職金も分割(財産分与)の対象に
熟年離婚の年金分割について話し合ったり手続きを進める際には、年金だけでなく、夫の退職金も財産分与として分割の対象になるので覚えておきましょう。
夫の退職金は夫のものだと認識されやすいですが、退職金は勤続の功労の報償としての性格も有するといわれています。妻の支えがあってこその夫の勤続ですから、財産分与ができるのです。
注意点(2) 自営業の場合、年金分割はできない
熟年離婚で年金分割をすることが可能なのはここまでの説明でご理解いただけたかと思います。しかし、夫が自営業の場合などには、残念ながら年金分割をすることはできません。
自営業者が加入する国民年金は、サラリーマンなどが加入している厚生年金ではありません。年金分割は厚生年金が対象なので、自営業の方の国民年金は分割できないのです。
注意点(3) 専業主婦は3号分割の利用を
妻が働かずに専業主婦でいた場合に年金分割をするには、3号分割を利用しましょう。
先ほどもご紹介しましたが、3号分割は夫の合意がなくても利用することが可能です。また仮に、離婚後に元夫が亡くなった場合にも、年金分割をしておけば元妻の本人名義の年金として受け取ることができます。
注意点(4) 夫婦で共働きだった場合の年金分割方法
熟年離婚をする共働きの夫婦でも、年金分割をすることは可能です。
夫婦が共働きであった場合には、夫と妻の年金保険納付記録を元にし、総額を合計し、年金分割の分割割合を決定します。このとき、夫の収入よりも妻の収入が多いと、年金分割は妻から夫に対して行われるケースもあります。
注意点(5) 年金分割の不明点は弁護士に相談を
熟年離婚の年金分割は、各夫婦の職業や仕事内容、収入によって大きく異なります。年金分割の種類を知っていても、分からないことはたくさんあるはずです。
しっかりと年金を受け取りたいのなら、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。