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【マクドナルド事件】店長が残業代500万円をゲット/私は管理監督者じゃない!

労働法は働く人にとって大切な知識ですが、学校でも習わないし調べてもなかなか分かりにくいですよね。そこで今回は「管理職になったら残業代が払われなくなった」という問題解決のため、「ムズい法律を日本一面白く解説する弁護士」 林孝匡先生に「日本マクドナルド事件」をしっかり噛み砕いて解説いただきます。

こんにちは、弁護士の林孝匡です(プロフィール

今回は、
日本マクドナルド事件について解説します
(東京地裁/H20.1.28判決)

店長が、残業代500万円をゲットした事件です

どんな事件かというと、

マクドナルドの店長さんが、
約6年の激務で、

キ・・・キツすぎる…

心も身体もボロボロだったんです。

そこで、

店長である私にも残業代を払ってほしいのですが…

と申し入れたんです。

しかし、マクドナルドは、

え、無理ですよ。店長は【管理監督者】なので。

【管理監督者】には残業代を支給しなくてもいいんです

だって、労働基準法にもウチの就業規則にも書いてるじゃないですか

え?わたしが【管理監督者】?店長という肩書きだけど、他の社員と権限があまり変わらないのに…

こんなに働いて残業代がゼロなんて…

納得できず、法廷へGo!

マクドナルドさん!

店長さんの、コノ程度の権限じゃ【管理監督者】じゃないよ

ってことで、残業代を払いなさい。約500万円ね

あと、制裁金として+ 約250万円ね。合計750ヨロシク!

・・・

やったー!

となった判決です。

全国のマクドナルドの
店長1715人は、
狂喜乱舞だったと思います。

よくぞやってくれた!

英雄店長だわ!

マックシェイクで乾杯!

事件の全貌を、くわしく解説します。

今回も判決文を読みました。

判決の全文はコチラ(裁判所HP)

コレを分かりやすく解説してます。

管理監督者とは何ぞや?

も詳しく解説してます。

もし、あなたが、社長や上司から

キミ、役職に就いたから残業代はナイよ

だって、これからは【管理監督者】になるんだから

と言われてたら、
是非とも読み進めて下さい。

会社の言い分は、間違ってる可能性が高いです

この店長と同じように、
残業代を請求できる可能性ありです。

知識武装しましょう

では参ります。

店長の経歴

まずは、店長さんの経歴を聞いてみましょう。

店長に昇格したのは、いつですか?

入社して約13年目です

それから、何年くらい店長を務めてきましたか?

約6年くらいです

働き方は、相当キツかったんでしょうか?

・・・はい。残業が月100時間を超えたり、60日連続勤務があったり…

死にますやん!
過労死ラインが80〜100時間/月だから。

営業ラインの詳細

続いて、
当時のマクドナルドの組織図を見てみましょう。

↓ 役職の高い順です

営業ライン
  • 営業推進本部長
  • 営業部長
  • オペレーションマネージャー(OM)
  • オペレーションコンサルタント(OC)
  • 店長
  • ファーストアシスタントマネージャー
  • セカンドアシスタントマネージャー
  • マネージャートレーニー
  • スウィングマネージャー(アルバイト)
  • クルー(アルバイト)

この中で、

店長以上の役職には、残業代が支給されない

ことになっていました。

就業規則に定められていたからです。

マクドナルドの就業規則

写真はイメージです

当時のマクドナルドの就業規則は、
↓ コレです。

就業規則16条(適用の除外)
 第11条〜第14条の規定は、次の者に対しては適用しない。
 ① 管理または監督の地位にある者
  〜、店長、〜

カンタンに言うと、

店長さんには、労働時間・休日・休憩とかの規定は適用されないよ

だって、店長って【管理監督者】ですから

もちろん、残業代も出ませんよ

ってことです。

この就業規則は、労働基準法を基に作られています。

労働基準法 第41条
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

労働基準法はザックリ、

監督若しくは管理の地位にある者=【管理監督者】には、残業代は払わなくていい

と言ってます。

ここでのポイントは、

ポイント

労働基準法は、
「店長は管理監督者だ・・・」

とは言ってないんです!

マクドナルドが独自に

店長は【管理監督者】です。なので残業代は払いません

言ってるだけなんです。

この扱いに
Xさんが疑問を感じたんです。

店長とはいえ、他の社員と権限があまり変わらないのに。残業代がゼロなんて…

そこで、Xさんは、
外部のユニオンに加入しました。

マクドナルドと交渉するためです。
(当時のマクドナルドには労働組合がなかったんです)

その後、交渉が行われました。

しかし、マクドナルドは、

店長さんは【管理監督者】なので残業代をお支払いすることはできません

と、譲らず。

店長さんは、

訴訟します

舞台は、裁判所へ!

裁判でのドデカイ争点

裁判で争われたのは、

  • そもそも【管理監督者】って、何ぞや?
  • で、この店長さんは【管理監督者】にあたるのか?

です。

この勝負、

勝てれば(管理監督者じゃなければ) → 残業代、数百万円を獲得

負ければ(管理監督者になってしまえば) → …ゼロ

まさに、Dead or Aliveな戦い。

どのような戦いが繰り広げられたのか、
ご覧ください。

【管理監督者】って、何ぞや?

まずは、

【管理監督者】って、何ぞや?

について、バトルが繰り広げられました。

マクドナルドの主張

マクドナルドの主張は、

店長は、クルーなどの部下をまさに「管理」して「監督」してます。なので店長は【管理監督者】にあたります

などと主張しました。

裁判所の認定

しかし、裁判所は、

それだけじゃダメだね。概念が広すぎるよ

と一蹴。

管理監督者にあたるかは、以下の事情を総合して判断すべき

と、示しました。

要約すると、

  1. 実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
  2. 自分の裁量で労働時間を管理できるか
  3. 管理監督者にふさわしい収入か

をミックスして判断する!

と判示しました。

この判断方法は、
厚生労働省の通達(H20)にも引き継がれてます。

さらに、
マクドナルド事件以降の

裁判にも受け継がれています
ex. 三井トラスト・アセットマネジメント事件(東京地裁/R3.2.17判決)

管理監督者って、なかなか認められないです。

だって、マクドナルドさんが言うように、

部下をまさに「管理」して「監督」してるので【管理監督者】です

が通用すれば、
ほとんどの上司は
管理監督者になっちゃいますからね。

残業代ゼロとか、死にますやん。

====

ってことで、
まずは、
管理監督者の定義がビシっ!
と決まりました。

お次は、

この店長は【管理監督者】といえるのか?

です。

この店長は【管理監督者】といえるのか

「管理監督者じゃない」と言っておくれ!

ここからがクライマックスです!

以下の3つをミックス判断したら、

  1. 実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
  2. 自分の裁量で労働時間を管理できるか
  3. 管理監督者にふさわしい収入か

マクドナルドの店長は、どうなるのか?
管理監督者といえるのか?

この判断は、人によって変わります。
働き方によって変わります。

あなたが戦う時も、ここが正念場です

3つの要素について、
裁判所がどう判断したのか、
順番に解説します。

1. 店長は経営者と一体的な立場といえるか

まずは1つ目。

店長は、経営者と一体的な立場といえるか?

裁判所は、

店長は、経営者と一体的な立場において、重要な職務と権限が与えられてないじゃん

と認定しました。

ザックリ言えば、
経営者と肩を並べるくらいの権限がナイじゃん
ってことです。

こう認定した理由は、以下のとおりです。

人事への関与度合い

  • たしかに、店長は、アルバイトのクルーを採用して、時給を決定したり、スウィングマネージャーへの昇格を決定する権限や、クルーやスウィングマネージャーの人事考課を行い、昇給を決定する権限を持ってる。

しかし!

  • 将来、アシスタントマネージャーや店長に昇格していく社員を採用する権限はない
  • 店長は、アシスタントマネージャーに対する1次評価者として、その人事考課に関与する
  • がしかし、最終的な決定までには、OCによる2次評価のほか、上記の三者面談や評価会議が予定されている

このような事情からは、

店長はマクドナルの労務管理を一部担ってはいるが、経営者と一体的立場にあったとは言い難い

と認定。

さらに、

店舗の運営

  • たしかに、店長は、店舗従業員の代表者との間で時間外労働等に関する協定を締結するなどの権限があった
  • シフトの決定や次年度の損益計画の作成、販売促進活動の実施などについて一定の裁量があった
  • 店舗の支出について一定の事項に関する決済権限があった。

しかし!

  • 店舗の営業時間の設定は自由にできず、本社の決定に事実上従う義務がある
  • 全国展開する飲食店という性質上、店舗で独自のメニューを開発したり、原材料の仕入れ先を自由に選んだり、価格を設定することはできない

さらに、

店長会議などの模様

ここは、証人が語ってくれてます。

おそらく、別の店舗の店長さんかなと。

店長会議って、どんなものでした?

店長は、店長会議や店長コンベンションなど、マクドナルドで開催される各種会議に参加してるんですが、これらはマクドナルドから企業全体の営業方針、営業戦略、人事などに関する情報提供が行われるほかは、店舗運営に関する意見交換が行われるくらいでしたね

その場での経営方針などの決定に、店長が関与してるわけじゃないんです

ブラボーな証言!

以上の事実を考慮して、
裁判官は、

たしかに、店長は、店舗運営においては重要な職責を負っていますね〜

が、しかし!

店長の職務、権限は店舗内の事項に限られており、企業経営上の必要から、経営者と一体的な立場において、重要な職務と権限を付与されていない

と認定しました。

チェーン店の店長って、
こう認定されるケースが多いと思います。

お次は、店長の働き方についてです。

2. 自分の裁量で労働時間を管理できるか

2つ目。

店長は、自分の裁量で労働時間を管理できるか?

裁判所は、

自分自身で労働時間を管理できるような状況じゃなかったっス

と認定しました。

こう認定した理由は、以下のとおりです。

  • 店舗には必ずシフトマネージャーを置くことが義務になっており、シフトマネージャーが確保できないときは、店長が自らシフトマネージャーを務めていた
  • そのため、60日以上の連続勤務をしたこともある
  • 早朝や深夜にもシフトマネージャーを多数回、務めなければならなかった
  • その結果、残業が月100時間を超える場合もあり、労働時間は相当長時間に及んでいた

長時間労働については、
証人が証言してくれました。 
(この方も別店舗の店長かと)

店長さんて、どれくらい働いてるんですか?

店長の業務を遂行するには、月150時間くらい残業することもあります

と証言。

エグすぎる。
過労死ラインの2倍近く

(過労死ラインは残業80〜100時間/月)

これらの事情を考慮して、
裁判官は、

たしかに、店長は、自分のスケジュールを決定できるし、早退や遅刻するときに、上司であるOCの許可を得る必要はないなど、まぁ形式的には労働時間に裁量があるんだけどねぇ〜

が、しかし!

上に述べたような店長の勤務実態からすれば、労働時間に関する自由裁量性はなかった

と結論づけました。

そりゃ、

自由!

↑ とは、ほど遠い働き方ですからね…。

さて
ラストは、店長さんの収入について。

3. 店長の収入

ラスト。

店長は、管理監督者にふさわしい収入だったのか?

裁判所は、

管理監督者の待遇として、不十分であ〜る

と結論づけました。

↓ こんな事情が考慮され、不十分だと認定されました。

  • C評価の店長の年額賃金が579万2000円
  • これは、店長より下のファーストアシスタントマネージャーの平均年収よりも低かった
  • B評価の店長の年額賃金はファーストアシスタントマネージャーの平均年収を上回ってはいたが、その差は44万6943円にすぎない
  • 週40時間を超える店長の労働時間は、平均39時間
  • これはファーストアシスタントマネージャーの38時間を超えている

平社員からの
給料ちょいマシくらいじゃ、

裁判官は

ダメ〜

と判断することが多いです。

結論:店長の勝利!管理監督者じゃない!

店長の勝利です!

まとめると、

  1. 実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか ×
  2. 自分の裁量で労働時間を管理できるか ×
  3. 管理監督者にふさわしい収入か ×

すべて×となり、
ミックスしても、もちろん×

なので、

この店長さんは管理監督者じゃないです。残業代約500万円を払いなさい

との判決になりました。

さらに、

あと、プラス付加金250万円ね。合計750ヨロシク!

と命じました。

付加金って

お仕置きだ!

ってな感じです。

企業がチョー悪質なら

残業代と同じだけ払いなさい

と命じることもあり
(すなわち倍返し!)

労働基準法 第114条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

付加金をいくらにするかは、
裁判官のサジ加減ひとつです。

エイヤ!

と決定します。

マクドナルド事件では、残業代の5割でした。

お伝えしたいこと

他の肩書きでも残業代請求できる可能性あり

今回は、店長の事件でした。

でも、店長だけじゃなく、
ほかの肩書きでも
残業代を請求できる可能性があります。

たとえば、

  • 部長
  • 統括本部長
  • 次長
  • 課長
  • ハイパーメディアクリエイター
    などなど

多くの会社では、社長や上司が、

昇進おめでとう!

ありがとうございます!

役職に就いたから残業代はナイけどね。【管理監督者】になるんだから

うそやん!

ってなると思うんです。

そう言われたら、是非とも、

  1. 実質的に経営者と一体的な立場といえるような権限があるか
  2. 自分の裁量で労働時間を管理できるか
  3. 管理監督者にふさわしい収入か

を検討してみてください。

肩書きの名前が
どんなにエライさんチックであっても、
それだけで管理監督者になるわけじゃありません。

上の3つのミックス判断で、管理監督者になるかが決まります

ご自身で判断することはカナリ難しいので、

残業代ナシって納得できないのよね〜

とモヤモヤしてる方は、
弁護士さんに相談してみて下さい。

労働時間の証拠を残しておく

あと、
残業代請求の交渉や裁判では、

実際に働いた時間は何時間なのか?

もカナリ争われます。

実際に働いた時間の証拠を残しておきましょう。

マクドナルド事件では、
↓ 働いた残業代がこのように認定されました。

コツコツの証拠あつめが重要です

今回の解説は以上です。

知識武装して、残業代をゲットしましょう!

 

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