未婚の母の認知は必要?婚外子(非嫡出子)を妊娠したら
未婚の母の子どもの「認知」は必要なのでしょうか?実は、未婚の父親は「認知」が必要なのですが、未婚の母親は「認知」が原則不要とされています。なぜこのようなルールになっているのでしょうか。結婚していない男性との間の婚外子(非嫡出子)を妊娠した未婚の母親のやるべきこと・考えるべきことも合わせてご紹介します。

婚外子(非嫡出子)は父親の「認知」が必要。未婚の母親は?
認知は、親の認知届の提出により、婚外子(非嫡出子)と親に法律上の親子関係を成立させるための手続きです。
そして、婚外子(非嫡出子)とは、不倫相手との子など、結婚していない男女の間にできた子どものことをいいます。
婚外子(非嫡出子)と親に法律上の親子関係を成立させるために親がする手続きというと、母親の認知も当然必要な気がします。
しかし、結論からいうと、婚外子(非嫡出子)ができた場合、父親の認知は必要ですが、未婚の母親の認知は原則不要です。
未婚の母親が子供を認知しなくていい理由をわかりやすく解説!

- 婚外子(非嫡出子)ができた場合、なぜ父親の認知は必要であるにもかかわらず、母親の認知は原則不要か
- 母親の認知が必要な場合はあるのか
など、未婚の母の認知の問題は考えていくと複雑な部分も多々あります。
認知は、婚外子(非嫡出子)と親に法律上の親子関係を成立させるもの
冒頭で説明したとおり、認知は、親の認知届の提出により、婚外子(非嫡出子)と親に法律上の親子関係を成立させるための手続きです。
婚外子(非嫡出子)とは、結婚していない男女の間にできた子どものことをいいます。
そもそも、結婚している男女の間にできた子(嫡出子)と両親の間にははじめから法律上の親子関係がある
民法772条1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
したがって、結婚していない男女の間にできた子供と両親との法律上の親子関係は原則成立しない
民法772条1項は、「結婚している男女の間にできた子供は、原則そとしての2人の子供となる」というルールを定めているとわかりました。
民法772条1項のルールは、裏を返すと、結婚していない男女の間にできた子の場合には、法律上、原則としてその2人の子供とはされないということを意味します。
つまり、結婚していない男女と子供との関係を何らの手続きもせずに放置しておくと、生物学上親子であるにもかかわらず、法律上親子と認められないという不都合なことになってしまいます。
そこで、結婚していない男女の間にできた子(=婚外子・非嫡出子)と親との法律上の親子関係を認めるために、「認知」という特別な手続きが必要になるわけです。
民法が両親とも認知が必要であるかのように規定していることが混乱の原因!|実際はそうではない
民法779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」と定めています。
つまり、親子関係を定める最も重要なルールである民法が両親両方の認知が必要であるかのように規定しているのです。
一方で、現在の判例や実務では、未婚の母親の婚外子(非嫡出子)に対する認知は原則不要としています。
これが、「母親に認知が必要か否か」という疑問や混乱を生む原因になっているのです。
民法779条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
判例は、母親の認知を原則不要と明言している!
母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生する最判昭和37年4月27日民集16巻7号1247頁
未婚の母親の認知が原則不要な理由は、母子の親子関係は分娩の事実により明らかであるから
同判決は、未婚の母親の認知が不要な理由は、母子の親子関係が分娩の事実により明らかであるからだと考えていると読めます。
分娩とは、子どもが母親の子宮内から出てくることをいいます。
どの母親の胎内からどの子供が出てきたのかさえわかっていれば、改めて母親に認知届を提出させる必要はないと考えているのでしょう。
したがって、原則的に法律上の母子関係を成立させるための「認知」のような手続きは不要とされたのです。
通常は、どの母親の胎内からどの子供が出てきたのかなどは病院の記録などにより明らかですから、未婚の母親の認知も原則として不要になるわけです。
基本的にはここまでの話で大丈夫なのですが、未婚の母親の認知が「原則」不要というルールには「例外」もあります。
例外的に、分娩の事実により明らかでない場合には、母親の認知が必要といえる|捨て子の場合
最高裁判所の判例が未婚の母親の認知が不要とした理由が母子関係が分娩の事実により明らかであるところにあるとすれば、裏を返せば、分娩の事実により明らかといえない場合には、母親の認知が必要ということになります。
具体的には、母親の子宮内から子供が出てきたという事実により母子関係が明らかにならず、未婚の母親の場合であっても例外的に認知が必要とされるのは、捨て子(棄児)の場合です。
捨て子(棄児)の場合、通常その子がどの母親の胎内から出てきたのかは不明であり、当然に母子関係を発生させることはできないからです。
捨て子(棄児)は現在でも少なくなく、依然として社会問題となっています。
例外的に未婚の母親の認知が必要なのは捨て子(棄児)の場合のようなケースに限られることから、結論としては、通常、母親の認知を検討する必要はないということになります。
民法の条文は、読み替える必要がある
婚外子(非嫡出子)を妊娠した未婚の母親が考えるべきこと

まずは、その子を生むかどうかを考える
まずは、妊娠した子を産むかどうかを考えるのが何よりも大切です。
自分や父親の経済力、育児の環境・能力、自分や父親の年齢、職業、タイミング…子供を産むかどうかを決めるに際して考えるべきことは非常に多くあります。
婚外子(非嫡出子)を生むかどうかは、人の生命にかかわることであり、最終的に自分で決定するほかありません。
家族や医師・専門家の意見を聞きつつ、慎重に判断してください。
その子の父親との結婚を考える
婚外子(非嫡出子)の父親たる男性と結婚するかどうかも考えてください。
子にとって両親が結婚しているか、結婚していないかは重要な問題です。
もちろん、相手や自分の状況や意思次第で、結婚が難しい場合もあるでしょう。
その場合、結婚ができないという状況を前提に、子を産むかどうかを改めて検討してみてください。
ちなみに、子供を妊娠した後、出産する前に婚姻届を提出すれば、子供は嫡出子として扱われます(判例・実務)。
結婚・出産を決める場合には、できれば出産前に婚姻届を提出するのが良いでしょう。
【胎児認知】不倫相手や交際相手に子供ができた場合の胎児認知|通常認知との違いなどについても参考になるでしょう。
結婚せずに子を生むことを考えた場合には、父親に認知をしてもらう|認知調停の申立ても要検討
認知を受けたうえで、養育費を請求する|支払ってもらえない場合は、養育費請求調停を申し立てる
母子家庭向けの手当てを活用する
結婚せずに子供を生むことを決意することは、多くの場合シングルマザーとなることを決意することと同じことです。
ひとり親で子供を育てるのは簡単なことではなく、それを踏まえて国や公共団体も母子家庭向けにさまざまな手当を用意しています。
母子家庭向け手当まとめ|シングルマザー必見!を参考に、母子家庭向けの手当ての活用を検討することは必須です。
婚外子(非嫡出子)について困ったことがあれば弁護士に相談
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