債務不履行とは?よくあるケースや損害賠償請求の流れを解説
お金が払われない、商品に手違いがある、明らかにクオリティが低い、運送を頼んだ物品が破損してしまった…債務不履行は至る所で起きる法律トラブルです。この記事では相手が約束を守ってくれないとき、債権者として何ができるのか?損害賠償請求の際に知っておくポイントも分かりやすく解説します。

・債務不履行とは契約の義務を果たさないこと
・故意じゃなくても帰責事由があれば債務履行の請求可能性あり
・債務の履行だけでなく損害賠償の請求もできる
債務不履行とは?
債務不履行とは、契約の義務を果たさないことです。
債権・債務とは?
一般には馴染みのない言葉だとは思いますが法的に何かを請求できる権利のことを債権、逆に法的に何かをするべき義務のことを債務といいます。また債権者と債務者が一方的に決まっている場合はむしろ少なく大抵は双方に債権と債務があります。
例えば雇用契約を例に見ると雇用主と労働者はそれぞれこのような債権と債務があります。
債権 | 債務 | |
雇用主 | 労働を求める | 給与の支払い |
労働者 | 給与の受け取り | 労働力の提供 |
このようなお互いに債権者であり債務者であることを定めた契約を双務契約と言います。一方で贈与のように債権者と債務者の役割が分かれている契約を片務契約と言います。
債務不履行の種類
債務不履行が問題となりやすいのは、「一方が債務を履行したとき」あるいは「先に債務履行をする側がその義務を果たしていないとき」です。ここでは債務不履行にどのような種類があるのか見ていきましょう。
履行遅滞
債務の履行が遅れている状態です。商取引や借金の場合は「滞納」といえば分かりやすいかもしれません。もちろん、現物を提供する場合でも仕事が長引いている、労働者がストライキを起こしたなどの理由で履行遅滞になることがあります。
家賃が払われない、借金を返してもらえないなど履行遅滞は至る場所で発生します。
不完全履行
債務は履行されたように見えるが実際には全然違う!という場合は不完全履行に当たる可能性があります。例えば夢のマイホームが欠陥住宅だったという場合に問題となります。商品に問題はなくても、注文していた品物と異なる場合は同様に不完全履行となりえます。身近な例だと、出前のメニューが違ったなどがあります。
大切なのは、契約通りの義務を果たしたかどうかです。
履行不能
時には債務を履行できなくなってしまう場合があります。これを履行不能と呼びます。例えばアーティストがコンサート直前にスキャンダルを引き起こした場合、宅配の途中で商品が壊れてしまった場合など履行遅滞や不完全履行と異なり債務不履行を訴えても同じものを受け取ることはできません。
もちろん、履行不能が相手の責めに帰すべき事由であれば債権者に救済の道が残されています。
天変地異や紛争など免責される理由については契約書に記されていることが多いです。
債務不履行があったとき債務者に対して何ができる?
債権者は債務者に対して何ができるのか?ここでは債務不履行に対して行うべきことを紹介します。
契約の解除
冒頭で説明した通り、契約の多くはお互いが債権者であり債務者でもある双務契約です。相手の債務履行がない場合にこちらばかり損をすることは最小限に抑えましょう。
債務不履行にもう耐えられない!となったら契約の解除です。契約解除をすればとりあえずこちらの債務も無くなります。
契約はお互いの合意で締結されますが、債務不履行があった場合は一方的に契約解除が可能です。
権利の回復
債務不履行に対して、債権者は履行の請求または損害賠償の請求が可能です。
まず履行の請求を選ぶべき場合は債務の履行によって十分な利益を得られる場合です。例えば仕事が多少遅れたくらいであれば、事情次第では契約を継続したまま履行を求めることも可能です。
一方で債務履行があっても十分な利益を得られない場合や、履行不能になっている場合は損害賠償の請求となります。もちろん債務を履行させた上で損害賠償を求められる場合もあります。
例えば借金を滞納した時に追加で払う遅延損害金がこれにあたります。他にも逸失利益が発生した場合は賠償が上乗せになるでしょう。
契約で損害賠償の支払いを決めることは可能?
トラブル防止のために契約の段階で債務不履行の基準や原状回復の方法などを条項にしておくことは珍しくありません。ただし債務不履行があった時点で契約が守られていないことから、書面にしておけば安心というわけでもないのです。
あくまでトラブルを円滑的に対処するための条項であり法的紛争になったときに有力な根拠という捉え方が良いでしょう。
強制執行
債務不履行について法的紛争をしたにも関わらず履行もされなければ賠償もされない。このときは裁判所に申し立てて強制執行することとなります。
分かりやすい言葉で言えば差押です。ただし、差押を成功させるためには相手の住所と財産状況を知っておく必要があります。
債務不履行の損害賠償について知っておくべきポイント
前述の通り債務不履行があった場合は債務の履行と損害賠償を選ぶことが可能です。しかし、相手が約束を破れば必ず賠償を請求できるとは限りません。次のポイントが重要となるので抑えておきましょう。
この3点の明確化が難しいときは弁護士への相談がおすすめです。
債務不履行の証明
債務不履行の証明は必ずしも簡単とは限りません。なぜなら契約において明確にされていない論点でトラブルになる可能性があるからです。つまり債務不履行を否定された場合は賠償をいくら払うか?の前に「本当に契約を破ったのかどうか?」で争わなければいけません。
債務者の責めに帰すべき理由であったこと
債務者のせいで債務不履行になったことの証明も求められます。立証責任は原告側にあることが一般的ですから、契約書だけでの判断が難しい時ほど証拠を揃える必要があります。
損害と債務不履行の因果関係
お金で解決できると言っても、言い値を払わせることはできません。なぜその金額を損害賠償として求めるのか?しっかり根拠を示せるようにしてください。
まとめ
債務不履行があった場合、債権者は債務の履行または損害賠償を求めることができます。しかし相手が請求したらすぐに行ってくれるとは限りません。争いが複雑化する前に債権回収や企業法務に強い弁護士へ相談しましょう。
もちろん、相手にも言い分はあることと思いますが一見納得できそうな事情でも法律や判例に照らし合わせてどうか?その点はやはり法律の専門家に判断を求めるべきです。債務不履行の解決は相手が履行できる状態のうちに行うことが基本なのでスピード重視での対処を心がけてください。