家の解体費用はいくら?費用を抑えるコツや更地の注意点を解説
親の代から住み続けている家、親から相続した実家、いつかは取り壊す時が来ます。しかし家の解体はそう何度も行うことではないためいくら費用がかかるのか?取り壊した後はどうすれば良いのか気になりますよね。
この記事では家の解体にいくらかかるのか?費用を抑えるにはどうすれば良いのか?更地にした場合はどうなるのか?を紹介します。

古くなった家屋、解体費用はいくらかかる?
家の解体費用の相場は、家屋の大きさや使用されている建材の種類により異なります。
それぞれの費用相場を見てみましょう。
大きさごとの費用相場
建物全体の解体費用を求めるときには、解体工事の単価によりおおよその建物本体の解体費用を算出することができます。解体工事の単価とは、一坪当たりの解体工事にかかる費用をいいます。
計算式は、以下のとおりです。
解体工事の単価 = 坪単価(の相場) x 延床面積(坪数) |
坪単価の相場は、立地条件や物件の状況により異なりますが、基本的には建物の周囲にトラックや重機の移動が可能であり、廃棄物の量や価格が平均的なものであることを前提とします。トラックや重機などが入りにくい場所での解体工事は、通常の倍以上の坪単価になる場合があるので注意が必要です。
延床面積とは、建物の床の総面積をいいます。建物には、平屋建て、2階あるいは3階建てのものもあります。解体工事をする場合には、各階の床面積を合計した延床面積、坪数の算出が必要になります。吹き抜け部分、ひさしやポーチ部分は延床面積には含まれません。
延床面積は、登記簿謄本に記載されているので法務局で取り寄せて確認ができます。
坪単価の内訳は、解体費用+廃材の処分費用です。解体費用には、人件費なども含まれます。
坪単価は廃材の処分費用を含むので、坪単価は建物の建材の種類によっても異なります。
以下、建材ごとの解体費用の相場を見ていきましょう。
素材ごとの費用相場
建物には、以下の構造種類があります。
・木造:柱や梁などの主な構造部分に木材を使用している建物です。平屋から小規模のアパートなどにも木造が多く見られます。
・鉄骨造:柱や梁などの骨組に鉄骨を使用している建物です。鋼材の厚みにより重量鉄骨増と軽量鉄骨造の2種類があり、前者はビルや高層マンション、後者は一般住宅や小規模店舗などに使用されます。
・RC構造:柱や梁、床や壁などが鉄筋とコンクリートを使用している建物です。マンションやビルなどの強度が必要な建物に使用されています。
解体費用の相場は、木造住宅、鉄骨造、RC造の順で単価が上がっていきます。以下は、建造種類ごとの解体費用の単価の相場をまとめたものです。
構造種類 |
相場費用/坪あたり |
30坪あたりの相場費用 |
木造 |
3~4万円 |
90~120万円 |
鉄骨造 |
5~6万円 |
150~180万円 |
RC造 |
7~8万円 |
210~240万円 |
坪単価は、解体工事と廃材の処分費用を含むのが一般的ですが、中には廃材の処分費用を含まずに激安の坪単価を表示する業者がいるので注意が必要です。解体工事を依頼する際には単価に処分費用が含まれるのか否かを確認しましょう。
坪単価は、建物本体の解体工事を対象としています。したがって、敷地内の倉庫や植木、灯篭や庭石、カーポート、ブロック塀、井戸など建物以外の解体、撤去は、追加工事となり、地域や業者ごとによって扱いが異なります。
坪単価を基準に解体費用の総額を出す場合には、上記の計算式である「坪単価の相場 x 延床面積」にこれらの追加工事の費用を加える必要があるでしょう。
家を解体する流れを知っておこう
ここでは家の解体工事の流れを見ていきます。
解体工事の全体的な流れは、以下にまとめる5つのステップに分けることができます。
具体的な内容 |
おおまかな期間 |
|
見積もり |
・業者に連絡して解体工事の見積もりを依頼する ・見積もりのために業者に解体建物の現場調査をしてもらう ・解体費用の見積もりを貰う ・複数の見積もりを取り業者を決定する ・工事の契約をする |
・工事前のおよそ2~3ヶ月前に行なう |
事前準備 |
・近隣住民に解体工事の告知をして挨拶回りをする ・解体工事を行なうための各種届出をする (業者が代行する場合は不要) ・ライフラインを停止して引込線などを事前に撤去しておく ・敷地内に工事の邪魔になるそうなものを撤去しておく ・国土交通省の指定する事前調査を行なう |
・工事前の最低でも2~3週間前に行なう |
解体工事 |
・足場の設置や養生シートを施工する ・建物内部の建具、住宅設備機器、造作器具等を解体する ・重機等を使用して柱や屋根、梁などの建物本体を解体する ・建物の基礎部分を掘り起こして解体する |
・木造の解体工事は1~2週間 ・木造以外の解体工事は数ヶ月 |
廃材処理 |
・廃材を分別してトラックで搬出し廃棄する ・廃材処理費用が別途かかる場合もあるので事前に確認する |
・木造の廃材処理は1~2週間 ・木造以外の廃材処理は2~3週間 |
整地・届出 |
・廃材の搬出後に土地をきれいに整える ・法務局に建物滅失登記を登録する |
・整地は1~3週間 ・建物滅失登記は解体から1ヶ月以内 |
解体工事に必要な期間は、一般的な木造住宅であれば通常は1〜2週間程度で建物本体の解体ができます。
しかし、上にまとめたように解体工事は建物本体の解体だけではありません。見積もりから最後の整地まですべての工程を終えるには、数ヶ月から半年ほどの期間を見ておくべきでしょう。また、行政への届出も期限があるので注意が必要です。
撤去・整地の費用相場も紹介
建物内に大きな家財道具が残っている場合、庭に大木が植えられている場合、あるいは地中に埋設物があるような場合には別途料金がかかるので注意が必要です。
以下は、別途費用の相場をまとめたものです。
撤去・整地の内容 |
費用相場 |
建物内の大型家財道具(例:ピアノ) |
5~10万円 |
敷地内の大木 |
5000~10万円 |
地中埋蔵物(木屑) |
5000円~ / ㎥ |
地中埋蔵物(石膏ボード) |
12000円~/㎥ |
地中埋蔵物(レンガ) |
25000円~/㎥ |
地中埋蔵物(タイル) |
25000円~/㎥ |
地中埋蔵物(コンクリートガラ) |
5000円~/㎥ |
アスベストが使用された1975年以前に建てられた建物については、アスベスト撤去費用が別途必要になるので注意が必要です。
アスベスト撤去工事では、処理面積に応じて費用が異なります。以下は、2007年に国土交通省が公表したアスベスト撤去工事のデータを基に、社団法人建設業協会が算出した除去費用の相場です。
処理面積 |
相場費用 |
300㎡以下 |
2~8.5万円/㎡ |
300~1000㎡未満 |
1.5~4.5万円/㎡ |
1000㎡以上 |
1~3万円/㎡ |
アスベストは健康被害を及ぼす危険な物質であるため、解体の際には国土交通省の事前調査が義務づけられているので注意が必要です。
アスベストの事前調査や除去工事には、国土交通省より補助金制度が設けられているので、事前に国土交通省のホームページなどで確認しておくとよいでしょう。
費用を抑えるためにすべきことは?
解体費用を安く抑えるためには、以下の方法があります。
複数の見積もりを取る
同じ解体工事であっても、地域や業者によって見積もりがそれぞれに異なることがよくあります。これは先述した解体工事の単価が異なっていたり、業者の規模や現場までの距離などが異なるためです。
また、先述したように多くの契約をとるために、見積もりを安価にして廃材処理など追加費用を後から請求する業者もあります。
複数の業者の見積もりをとり、費用、工事の内容、工期などを比較してから業者を選ぶようにしましょう。
また見積もりをとる際に、業者の対応や人柄なども比較することができます。対応が丁寧で信頼できる業者に依頼することで、結果的に解体費用を節約することにつながります。
補助金を活用する
自治体によっては建物解体の補助金制度を設けているところもあります。解体費用の補助が受けられる条件は各自治体により様々です。まずは物件のある自治体や都道府県のホームページを確認していただくなどして、自治体に直接問い合わせることをおすすめします。
また、建物のある地元の解体業者に依頼することで利用できる補助金や助成金制度もあるので、地元の業者に問い合わせてどのような補助金や助成金が受けられるのかについても確認してみましょう。
全国300近くの自治体では、老朽化した空き家を解体する際に問題となる解体費用の捻出、固定資産税の費用負担、さらには耐震化促進事業の一環として解体費用を賄うことを目的として助成金、補助金制度を設けていますがその名称は様々です。
主なものとしては、老朽危険家屋解体工事補助金、危険廃屋解体撤去補助金、木造住宅解体工事費補助事業などがあります。
また補助金は、あらかじめ予算が設定されており予算内であれば支給対象になりますが、予算を超えると支給条件を満たしていても支給されない場合があります。これに対して、助成金は予算などはなく、基本的な条件を満たせば支給される制度です。
業者の仕事範囲を減らす
解体業者に依頼しなくても、事前にご自身でできることをしておくことで解体費用を安く抑えられることがあります。
建物の中にある家財道具などは、あらかじめ撤去・搬出することで費用が節約できるので、工事が始まる前に処分しておくことをおすすめします。
特に、ベッドやテーブルにピアノ、冷蔵庫や洗濯機などの大型家財は、回収するのにも数週間を要する場合があります。工事の着工日前にこれらの家財を搬出しておくことで、解体費用の1〜2割程度を安く抑えることができる場合もあります。
また、解体工事に当たってはトラックや重機を使用するので庭など建物周辺の場所が必要になります。庭などに草や木が生い茂っているような場合は、あらかじめこれらの処理をしておくことで解体費用を抑えることもできるでしょう。
ただし、大木や灯篭など処理が難しいものに関しては、事前に業者に相談して解体工事をする際に一緒に処分して貰うことも可能です。見積もりの際に業者に相談してみるとよいでしょう。
更地と建物がある土地は法律上の扱いが違う?
家を解体すると税金面や建替えの場合に不利になるケースもあるので、事前に確認しておくことが重要になります。
固定資産税の計算
建物を解体して更地にすると、固定資産税が最大6倍になる可能性があるので注意が必要です。固定資産税は、土地の上に居住用の建物が建っていると減税を受けられるという特例がありますが、建物を解体することでこの特例を受けられなくなるからです。
ただし、2014年に施行された空き家対策特別措置法により、適切に管理されていない空き家については、固定資産税の特例措置が受けられなくなりました。放置されている空き家が上記の特定空き家に指定されると固定資産税が高くなります。
とくに、解体建物のある土地を売却したい場合には、解体してから売却するか、売却してから解体するのかにより固定資産税も変わってくるので注意が必要です。建物を解体することを条件に古家付土地として売却すれば、固定資産税の問題も解消される場合もあるので事前に確認しておくことが重要です。
再建築不可の土地かもしれません
建物を解体してしまうと二度と建物が建てられない、再建築不可の土地もあるので注意が必要です。
建築基準法では、建物の建築に際して詳細な基準が設けられていますが、これらの法規制は年々改正されることが多々あります。建物が建てられたときには適法だったものが、建物を解体して再建築する際には建築できない場合もあるので、解体する前に今後の動向を含めて確認しておくことが必要です。
まとめ
老朽化した家に住み続けることは可能といえ、相続や引っ越しなど空き家を所有することはデメリットが大きく解体を考えるべきでしょう。また、土地の放棄は現在施行されている日本の法律では認められていないため再建築不可の土地なら取り壊し前の不動産売却も選択肢となります。
利用しない住宅の処分で迷っているときは、法律トラブル回避のためにも一度弁護士に相談することをお勧めします。