相続した土地の名義変更はどうする?相続登記の流れと注意点を解説
土地を相続したら相続登記をしましょう。実際の所有者と登記の情報が違うままにしていると、余計な法律トラブルの原因になるうえ新たな相続が起こった際の処理が面倒になります。
この記事では土地を相続した後の名義変更手続きについて初歩から解説します。

・相続登記は2024年から義務化される見通し
・数代に渡った登記はとても面倒です。
・登記は難しい手続きのため迷ったら弁護士に相談を
土地の相続から名義変更の流れ
まずは土地の相続から名義変更の流れを解説します。主に4つのステップを踏む必要があります。
相続人の特定
土地の相続手続きをおこなうには相続人の特定(確定)が必要です。故人の戸籍を確認しましょう。民法では相続人の順位が定められいて、前の順位にあたる人が相続人になれば次の順位にあたる人は相続人になりません。
相続人の順位は以下の通りです。
- 常に相続人:被相続人の配偶者
- 第1順位:被相続人の子ども(養子も含む・子がいない場合は孫)
- 第2順位:被相続人の父母(直系尊属)
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥・姪)
被相続人の子どもまたは兄弟姉妹がすでに死亡しているなどの理由で相続できない場合、さらにその子どもが同じ順位で相続人になります(代襲相続)。
被相続人の父母ともに相続できない場合は、祖父と祖母が相続人です。ただし父母のどちらかが相続人になれば祖父と祖母は相続人にならないことも覚えておきましょう。
遺産分割は遺言執行
遺言書がある場合の遺産分割は、遺言の内容にもとづいて順に手続きを進めます。遺言書がない場合は法定相続になるか、遺産分割協議を経ての相続になります。
遺言執行者がいれば、故人の預貯金や貸金庫契約の解約や払戻し、名義変更、生命保険の請求手続き、医療費や公租公課、債務の支払いもおこないます。
相続登記
土地の相続を受けた人は、登記の手続きをおこなう必要があります。相続登記に必要な書類を正しく揃えて法務局に提出しましょう。
土地の相続登記について特に期限はありませんし、相続登記をしなかったことによるペナルティはありませんが、なるべく早めに相続登記を済ませることが大切です。
各種費用の支払い
相続した土地の相続手続きには、各種費用がともないます。
どのような案件か、どの専門家に依頼するかによって多少の違いはありますが、相続登記だけを単体で弁護士などに依頼する場合は3万円~7万円ほどが平均相場です。
土地の相続登記以外に相続人が誰か調査したり戸籍を取り寄せたり、ほかにも遺産分割協議書の作成などをお願いすると費用相場上記よりも高くはなります。
相続登記の流れを詳しく解説
土地の相続登記の流れについて詳しく解説します。各手続きのポイントなどもぜひおさえてください。
必要な書類を揃える
土地の相続登記に必要な書類をそろえましょう。遺言書や分割協議書などの有無にかかわらず必要な書類一覧は以下の通りです。
【土地の相続登記に必要な書類一覧】
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 収入印紙
- 登記申請書
- 返信用封筒
相続する予定の土地における固定資産税評価証明書は、土地がある市区町村役場(所)で入手できます。登記申請書は自分たちで作成することも可能です。
【遺産分割協議をおこなって土地の相続をする場合の書類一覧】
遺産分割協議をおこなって土地の相続をする場合は、以下の書類を用意しましょう。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 収入印紙
- 登記申請
- 返信用封筒
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
【法定相続人が相続する場合の書類一覧】
法定相続分通りに土地の相続をする場合に必要な書類一覧は、以下の通りです。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 収入印紙
- 登記申請書
- 返信用封筒
【遺言によって法定相続人が相続する場合の書類一覧】
遺言によって法定相続人が相続する場合に必要な書類一覧は、以下の通りです。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 収入印紙
- 登記申請書
- 返信用封筒
- 遺言書
必要書類を作成する
土地の相続をする場合の必要書類において、作成しなければならない書類は「遺産分割協議書」「登記申請書」の2点です。
遺産分割協議書はひな形(テンプレート)をダウンロードして使うこともできます。自分たちが書きやすそうなテンプレートを見つけてミスのないように作成しましょう。
登記申請書も遺産分割協議書のようにさまざまなサンプルがありますが、記載すべき事項、内容などがあるので注意して選んでください。
自分たちでミスなく作成することは難しい場合が多いと思いますので、そのときは専門家に依頼しましょう。
法務局で申請する
遺言書もある場合は遺言書の原本も法務局に提出しましょう。
土地の名義変更を早めに行うべき理由
最後に、土地の相続をされた人が名義変更を早めにおこなうべき理由をお伝えします。後の面倒ごとを防ぐためにも土地の名義変更は早めにおこなうことが重要ですので、ぜひ知っておきましょう。
法定相続人の勝手な行動を抑えるため
いつまでも土地の名義変更を行わないままだと、良識のない法定相続人が登記の書き換えを勝手にする可能性もいなめません。
登記をめぐるトラブルを防ぐため
土地の名義人が不在のままだと「この土地はいったい誰のものもの?」と親族同士でもめたり相続問題に発展したりする可能性もあります。そのため、土地の相続を受けた人は早めに相続登記をおこないましょう。
次の相続が起こると相続登記が複雑になる
土地の相続登記をしなければ、次の相続、その次の相続が開始した際の相続登記が複雑になったりします。相続に関する話し合いも必要です。確認したり用意すべき書類も増えて大変なため、相続登記は早めにおこなうことがすすめられます。
土地の処分をする際、結局登記が必要になる
土地を処分する際にはまずもって相続登記手続きが必要になるため、土地の名義変更はできるだけ早めにおこなうのがおすすめです。
不動産の売買では、一般的に代金決済だけでなく所有権移転の登記も申請します。所有権移転登記は、登記簿上の所有者(登記義務者)と新たに所有者となる人(登記権利者)との共同申請でおこなうのが通常です。しかし、売主と所有者の名義が一致しない状態では代金決済と同時にすべき登記義務を果たすことができません。
後に土地を処分する際に困らないためにも、土地の相続を受けた人は不動産登記をおこないましょう。
まとめ
現在は相続登記に期限も義務もありませんが、登記情報を直さないことはデメリットが大きいです。面倒だからと先延ばしにするよりは弁護士に依頼して相続登記をしてもらった方が良いでしょう。