自己破産するとどうなる?できなくなること、備えるべきデメリットを解説
自己破産をすると周りに知られてしまうかも、何かとんでもない罰を受けるかも、いざという場面で人生を台無しにしてしまうかも…
知らないからこそ過度に心配しがちな自己破産。実際には債務者を救う制度という側面があります。
この記事では、自己破産をすると制度上何が起きるのかを正しく理解し冷静にメリットとデメリットを比較するための知識を紹介いたします

・自己破産のせいで人生を失うことはない
・自己破産すると信用取引が10年間できなくなる
・結局、自己破産した方が人生の再スタートがしやすい
自己破産すると結局、何ができなくなるの?どんな嫌なことが起きるの?
自己破産を検討する上で気になるのは、当然「自己破産したらできなくなること」や「自己破産によって失われるもの」でしょう。まずは、自己破産について過剰に語られがちなデメリットについて正しい知識を得ることから始めましょう。
99万円を超える現金と生活に必要ない財産が処分される
自己破産をすると財産を処分される。これは本当のことですが処分される財産には制限があります。以下に該当するものはたとえ弁済が足りなくても手元に残せます。
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の財産
- 生活に必要なもの
おそらく生活が困窮している状況において、貯金ができているケースは少なく、資産価値20万円を超える財産もほとんどお持ちでないと思います。逆に言えば資産価値が20万円以下であれば家も車も残すことができます。家を残すのは難しいですが、5年落ちの高級でない国産車であれば、多くのケースで残すことができます。
クレジットカードが作れなくなる
債務整理するとクレジットカードが作れなくなる理由は、任意整理や個人再生そして自己破産をしたことの履歴が信用情報機関に記録されるからです。銀行や信販会社、貸金業者はこの信用情報を元に申込者を審査するため債務整理をした人は原則として信用取引ができません。
このような特徴から、良くない信用情報が載ることをブラックリスト入りと呼ぶことがあります。
具体的に言うと、このようなことが起きます。
- クレジットカードが作れなくなる
- キャッシングできなくなる
- ローンを組めなくなる
- スマホの分割払いができなくなる
要するに後払い・立替払いの審査が通らなくなるのです。自己破産をした場合は最長で10年間はブラックリストに登録されます。この間にどう生活していくかは事前に考えておくと良いでしょう。
あなたもすでにブラックリスト入りしているかもしれません
ブラックリストに登録されると、金融機関に「この人にお金を貸してはいけないな」と判断する材料を与えることとなります。ブラックリストに登録されるのは、債務整理をした場合や、長期滞納をした場合です。
もしあなたが既に61日以上の滞納をしているならば、既にブラックリスト入りしている可能性が高いです。債務整理をしていなくても、ブラックリストへの登録期間はなんと5年!
ブラックリスト入りが怖くて自己破産をためらっているなら、すぐに返済状況をご確認ください。そして長期滞納が判明したら、ブラックリスト入りを恐れずに、すぐに弁護士へ相談しましょう。もはや債務整理を避けるメリットがありません。
引越ししづらくなる
自己破産によって家を処分する場合、引越し先を探さなくてはいけません。もちろん自己破産で法的に引っ越せなくなることはありませんが、家賃保証会社の一部は信販系です。つまり、ブラックリストに登録されるとその情報を元に、家賃保証会社が破産した人を審査する可能性があります。
したがって、自己破産後の引っ越しを考えている場合は協会系あるいは独立系の保証会社を用いるか、連帯保証人を探しましょう。
自己破産するなら家賃が払えなくなる前に
協会系の保証会社は信用情報機関のデータを見ることはできませんが、その一方で家賃保証協会で家賃の支払い状況を見ることができます。家賃の長期滞納があると協会系の保証会社から家賃保証を断わられる場合が多いです。
自己破産を相談するなら家賃が払えなくなってすぐがギリギリのタイミング。家賃を数ヶ月滞納しているようなら1日でも早く弁護士にご相談ください。
配偶者にバレてしまう
自己破産は恥ずかしいことだから家族にバレたくないと言う人は珍しくありません。原則として会社や家族に通知されることはありませんが、自己破産は生計を同じくしている人の収入状況を報告しなくてはならず、必然的に配偶者はその事実を知ってしまいます。
配偶者にバレずに債務整理したいなら任意整理を選ぶことになりますが、そもそも任意整理が不可能なほど大きな債務を抱えているなら隠さず話し合うことが重要です。
いざと言うときは奥様、旦那様との話し合いを弁護士がサポートすることが可能です。離婚問題への発展を懸念するなら、債務整理と離婚問題の両方に注力する弁護士への相談がおすすめです。
誰が読むかわからない官報に載ってしまう
官報に載ってしまうことをデメリットに感じる方もいらっしゃいますが、官報を積極的に読む方は滅多にいません。あなたも、自己破産について調べた結果、官報の存在を知ったのではありませんか?
自己破産が終わるまで職業が制限されてしまう
自己破産をした場合、弁護士のような士業や保険外交員に警備員といくつかの資格が制限されます。しかし免責許可を受けるなど自己破産手続きが終わればその職業に復帰できるケースがほとんどです。
つまり永続的な資格停止や失職はありません。
自己破産してもこんなことにはなりません
自己破産は曖昧な知識で「とにかく悪いこと」で「全てを失う」ものであるかのように語られることがあります。しかし、自己破産をしたことだけでこのようなことにはなりません。
- 仕事をクビになる
- 学校を退学させられる
- 賃貸住宅から追い出される
- 結婚できなくなる
- 戸籍に載る
- 家族や親戚、近所にバレる
- 無一文になる
自己破産は債務者の生活を支える手続きであって、債務者を罰するための手続きではありません。少なくとも自己破産のせいでお金に困ることはありませんからご安心ください。
自己破産はメリットも大きい
一方で自己破産をするとこのようなメリットがあります。
取り立てが止まる
破産の申し立てを行った後は、債権者が債務者に取り立てることができなくなります。弁護士に自己破産の手続きを委任した場合は弁護士が債務者に代わって債権者の対応を行いますから、一切のやり取りが不要になります。
取り立てが止まった後は、債務の支払いをしなくて良いので自由財産の範囲で貯金ができます。ただし、弁護士報酬は約束した方法で、きちんとお支払ください。
差押から財産を守れる
既に債権者から裁判を起こされている場合でも、破産開始決定が開始後は、財産の差押から身を守ることができます。ただし、破産手続きの中で可能な限りの財産は処分されます。
債務が免責される
自己破産の特徴は債務が免責されることにあります。任意整理や個人再生と異なり減額される債務に制限はなく、申し立てる上での債務総額にも制限がありません。極端な話、10億円の債務でも自己破産なら全て免責が可能です。
ただし、税金や養育費、その他裁判官が免責を認めなかった債務については免責許可決定後も支払い義務が残ります。
ギャンブルや浪費といった免責不許可事由に当たるかもしれないお金の使い方をしたときは、弁護士へ相談することが望ましいです。手続きの進め方によっては裁量免責が可能かもしれないからです。
自己破産を弁護士に依頼した場合はこのような流れで進みます
自己破産の手続きは難しく、期間も半年から1年とかかるため、弁護士へ委任することが一般的です。また、弁護士に頼まず自己破産する場合は、最低でも少額管財事件として20万円の予納金を支払うこととなるため、思ったほどの費用節約はできません。
ここでは自己破産がどのような流れで進行するのか紹介します。
弁護士への委任
弁護士へ相談する場合、どの債務整理を選ぶことが望ましいかを一緒に考えてくれます。どうしても家を残したければ個人再生を、債務が減ることが最優先なら自己破産を選びます。そして返済額の調整だけで乗り切れるなら任意整理も選択肢になります。
正式に委任契約をしたら、債権者に受任通知が送られます。その後は一切の取り立てがストップします。
破産申し立て
破産申し立てには債務の金額や債権者の一覧、債務者の収支状況といった書類が必要です。弁護士は、債務者が自ら作成、収集しなければいけない書類を除いて、書類の作成代行や取り寄せをしてくれます。
破産申し立ての後は裁判所での審尋や債権者集会が行われます。。
原則として弁護士報酬は破産申立までに払い切ります。
破産手続き開始
目立った財産がなければ債権者への弁済もできないため、破産手続きの開始と終了が同時に行われます。これを同時廃止と言います。ただし、免責不許可事由(浪費等)が疑われる場合は、同時廃止とはなりません。
目立った財産がある場合や免責不許可事由が疑われる場合は、債務者に代わって財産を管理する破産管財人が任命されます。これを管財事件と言います。
ご想像通り、同時廃止の方が解決までの期間が短く、費用の負担が少ないです。
免責許可
裁判所から免責許可決定が出されて、それが確定すれば晴れて借金地獄から解放されます。決定から確定まで時間があるのはその間に、申告していない債権者が名乗り出る可能性があるからです。(これが、官報に自己破産や個人再生の情報が掲載される理由です)
自己破産後の生活を考える
自己破産は思ったよりもデメリットが少なく、思った以上のデメリットがある。この記事の内容を要約するとこのようになりますが、大切なのは実際に自己破産後どう生活していくか想像することです。せっかく破産しても、家賃などを滞納してまた借金生活に戻るのであれば、破産する意味がありません。
クレジットカードを使えない間はどうする?
一昔前はクレジットカードは便利な取引手段の一つに過ぎませんでした。しかし現代は「クレジットカードがないと取引できない」ケースも増えてきています。キャッシュレス経済がますます盛んになる中、どのような手段が使えるのか?
実はデビットカードなら自己破産中でも作ることができます。カード決済のみの場合でも、デビットカードでの決済は原則として可能です。
収支計画を改めることが、本当の解決です
債務がなくなったからといって、支出を増やすことは良くありません。借金生活から解放されるためには債務整理の後も貯金し続けられるような収支計画を立てることが大切です。
自己破産をした後、原則として7年間は再度の自己破産ができません。
まとめ
自己破産したらどうなる?
その不安のせいで、過大な返済に追われている人は珍しくありません。自己破産に心理的な抵抗があるとしても、借金を払えない状況がこの先解決しないのなら債権者のためにも破産すべきです。
自己破産をしても当面の生活費は残ります。費用の支払いや住まいの問題については、一度弁護士へ聞いてみましょう。それだけでも、未来が広がるはずです。