遺産相続の手続きは難しい?全体の流れと相談すべきトラブルを紹介
遺産相続にはいくつもの手続きがあるので忙殺される前に手続きの代行をご検討ください。弁護士はあなたの法的手続きを代理でき、相続争いなどのトラブル解決でも役立ちます

ご家族が亡くなった後に行うべき手続きは思いのほか多く、着手が手間取っているうちに申告の期限がきてしまうことや数ヶ月以上も後回しになってしまうことがあります。また、遺産相続の流れをスムーズに終わらせられず法的トラブルに発展することも考えられます。
この記事ではご家族を亡くし手続に追われている負担が少しでも減るように、遺産相続が終わるまでにはどんな手続きが必要か?その流れと備えるべきトラブルについて紹介します。
・相続の手続きは多く、一人で行うことは困難です。
・相続の基本的な流れは相続人を特定する、財産を調査する、遺産分割するの3ステップ
・相続争いに備えたいときは弁護士に相談しよう。
被相続人の死亡に伴って必要な手続き
被相続人が亡くなって心の整理をする間も無く色々な手続きが進行します。まずは遺産相続の手続きを進める前に被相続人の死亡に関して必要な手続きを速やかに終わらせましょう。
死亡届の提出と葬儀
人が亡くなったら、死亡の事実を知ってから7日以内に死亡届を提出しなければいけません。
そして、速やかに遺体の埋葬あるいは火葬許可証を取得します。こちらも死亡の事実を知ってから7日以内の提出が求められます。
年金に関する申請
国民年金の受給停止申請は亡くなった日から14日以内、厚生年金に関しては亡くなった日から10日以内の申請が原則です。期限を過ぎている場合は自治体に確認をした上で手続きを進めていきましょう。
保険に関する申請
国民健康保険と介護保険に関しては死亡後14日以内に資格喪失の手続きが必要となります。
世帯主の変更
世帯主の変更は死亡後14日以内に行いましょう。
公共料金やその他サービスの解約
公共料金の費用やカードの年会費、その他サービスの会費を支払っている場合、解約を申し込むまで料金が発生します。速やかに遺族が解約手続きを行いましょう。
ただし、通常の手続と異なり亡くなったことを証明しなければいけない都合上、手続きが面倒になります。コールセンターへの連絡だけで何時間も費やす場合も考えられます。
死亡後の手続きが終わるまでのトラブルは誰に相談したらいい?
死亡後の手続きが終わるまでのトラブルとしては「手続きの量が多く煩雑である」ことが大きいです。一部は葬儀会社が引き受けてくれますが、それ以外の部分に関しては行政書士や司法書士、弁護士の協力を得ることが望ましいです。
相続人を特定するために必要な手続き
死亡に関する手続きが済んだら、いよいよ相続に関する手続のスタートです。相続は被相続人の死亡を以て開始していますが、手続きが終わるまでは財産に触れることを最小限にとどめておきましょう。
遺言書の確認をする
被相続人は財産を受け継ぐ相手を遺言で指定することができます。遺言によって財産を与えることを遺贈と言います。遺言は相続人の意思によって覆せないため、遺産分割協議よりも先に遺言を探しましょう。
遺言には次の種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自筆証書遺言は被相続人がご自身で所持されていることも予想されますが、相続法改正により法務局での保管が可能となりました。したがって法務局への確認が必要となるかもしれません。なお、法務局で自筆証書遺言が保管されていた場合は検認が不要です。
公正証書遺言や秘密証書遺言は公証役場に保管されています。こちらも公証役場への問い合わせが必要となります。
遺言書に関するトラブルは誰に相談したらいい?
遺言でトラブルになることは大きく分けて2つ。有効性と遺留分です。これらはどちらも法律トラブルに該当する可能性が高く、法律手続きの代行が可能な弁護士への相談がおすすめです。
遺言の有効性とは?
遺言は被相続人の意思で正しく書かれたことが求められます。
まず認知症が原因で意思能力がなかった場合や、詐欺・脅迫などによって意思とは異なる遺言を書かされた場合などには無効となります。次に要件に不備があった場合は遺言の一部または全部が無効となります。逆に遺言に書かれていたことが本人の意思に反していても、それを実証できなければ有効となりえます。
遺留分侵害額請求権
例えば、遺言に「遺産はすべて愛人に譲る」と書かれていた場合に相続人の権利がなくなってしまいます。そこで民法は遺言で財産をもらえなかった相続人にも必要最低限の財産を請求する権利を設けています。これを遺留分侵害額請求権(旧法においての遺留分減殺請求権)と言います。
相続人を特定するための戸籍はすべて取り寄せる
相続人は原則として民法で定められており、これを法定相続人と呼びます。
- 配偶者
- 子(代襲相続あり)
- 子がいない場合は直系尊属
- 子も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹(1代のみ代襲相続)
法定相続人は以上の優先順位で決められますが代襲相続とは「その順位の相続人が亡くなった場合にその子や孫が相続人の地位を得ること」です。
遺産分割には相続人の合意が必要ですから家族関係がいかに複雑だったとしても相続人を調査しなくてはいけません。そのために用いるのが戸籍謄本です。戸籍謄本には戸籍に属するすべての人間の氏名や続柄などが載っています。被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本を取り寄せ、必要に応じて除籍謄本や改正原戸籍謄本も取り寄せる必要があります。
戸籍を取り寄せる中で全く面識のない家族の存在が発覚するケースもあります。
戸籍の取り寄せがめんどくさい!法定相続分がわからない!そんな時は誰に相談すればいい?
戸籍の取り寄せは本籍地の役所あるいは郵送によって行います。戸籍の取り寄せは手間と時間がかかるものですが、被相続人の家族関係が複雑になればなるほど相続人の特定が面倒になります。
また、養子や婚外子、異母兄弟、代襲相続など相続分の割合が簡単に判断できない場合も考えられます。戸籍の取り寄せや家系図の作成に関しては行政書士や司法書士、弁護士が可能です。相続人が行方不明の場合も対処法を相談することが良いでしょう。
相続財産を把握するために必要な手続き
この記事では便宜上相続人の確定の次に相続財産の把握について説明していますが、できれば同時進行で行いましょう。特に資産よりも負債が多いケースは被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内の期限である相続放棄や限定承認の可否が問われます。
相続財産の把握は遺産分割と相続税申告に必要です。義務ではありませんが、相続財産を記録するための財産目録を作成しておくことが望ましいです。
相続財産の調査
被相続人が所有している財産は原則、相続財産として扱われます。値段がつきそうにないものでも財産評価が終わるまでは勝手に処分することなく保管しておきましょう。ちなみに、葬儀費用など被相続人の財産から支払い可能な項目があります。簡単に思いつくだけでも現預金や有価証券、不動産、車や高級品、特許とさまざまです。
ただし相続人が被相続人から受け継ぐのはプラスの資産だけではありません。マイナスの財産つまり負債も相続してしまいます。例えば借金や買掛金、損害賠償債務などです。
相続財産の評価あるいは換価
相続財産が必ずしもお金だけとは限りません。不動産や車、貴金属や骨董品など価値を確定するのが難しい財産もあるでしょう。そのような場合でも相続財産に評価額をつけなくてはいけません。法律に基づいて評価額を計算できる場合もあれば、専門の鑑定士に値段を割り出してもらう場合もあります。
また相続税の支払いや遺産分割を見越して、処分の難しい財産をお金に換えてしまうことも時には悪くない選択です。
相続放棄や限定承認とは?
もし相続したくない、財産以上に負債が多そうだという場合は相続放棄や限定承認によって相続人の財産を守ることが可能です。相続放棄と限定承認の期間は3ヶ月ですが、この起算日は被相続人の死亡を知った日が原則です。
ただし相続財産を調査する段階まで負債の存在を知り得なかった事情を立証できれば、相続放棄や限定承認の期限を伸ばせる可能性があります。
相続財産に関するトラブルは誰に相談すれば良い?
相続財産に関するトラブルとして考えられることは相続放棄・限定承認をしたい、相続財産の調査の時間を節約したい、相続財産の評価に困るなどが考えられます。
これらの相談ができる相手としては、税理士や弁護士が考えられます。
相続財産をどのように分けるか決める!遺産分割協議
相続人と相続財産が確定したらいよいよ遺産分割協議です。もし遺言が有効だった場合は遺言執行によって財産が分けられ、遺言で言及されていない財産がある場合は遺言執行とは別に遺産分割協議も行います。
遺産分割協議は全員の合意が必要
遺産分割協議とは要するに遺産を分割するための話し合いです。遺産分割協議のゴールは相続人すべての合意ですから、一人でも反対する相続人がいれば協議がまとまりません。もちろん特定の相続人を無視して遺産分割協議を押し通すこともできません。
最悪の場合、相続人の調査が不十分なまま遺産分割協議を終えた後に新たな相続人が現れて協議のやり直しになり得ます。
遺産分割協議に期限がないものの、逆に言えば遺産分割協議を何年も続けて良いことになります。もちろん、財産を動かせないまま話し合いが長期化することは相続人にとっての負担になります。
遺産分割協議で相続争いになったら誰に相談すれば良いの?
遺産相続で懸念されるトラブルとしてよく知られているのが相続争いです。家族であるからこそお互いの不満があったり特別受益や寄与分の問題になったりと主観で争うほどに紛糾します。そのような時、法律問題に明るい人が立ち会えば冷静かつ迅速な解決が期待できます。
また、遺産分割協議を尽くしてもどうしてもまとまらない場合、調停や審判によって法的に遺産の分け方を決めることが可能です。
示談・調停・裁判、どの段階においても、相続争いになってしまったときは、迷わず弁護士に相談しましょう。広く示談や訴訟の代理人ができるのは法律資格の中でも弁護士のみです。
遺産分割協議が終わった後に行う手続き
無事に遺産分割協議がまとまれば相続手続きも終わりに近づきます。ここでは相続した財産について必要な手続きとそこで備えておきたいトラブルについて紹介します。
各種名義変更
遺産分割協議に基づき銀行口座や動産などの名義変更を行いましょう。他にも継承するものがあれば行うべきですが、そのとき根拠となるのが遺産分割協議書です。言うまでもなく、相続人の誰かが「自分が相続した」と偽ることへの対策です。
相続登記
名義変更の中でも後回しにしがちな手続きが相続登記です。不動産の取り扱いにおいては実際の所有よりも登記が重視されいざという時に不動産に関する権利を駆使できない可能性があります。
例えば不動産を売り払うことができなかったり、自分以外の相続人に登記されてしまったりします。また、共有で相続した場合もそれぞれの登記が求められます。
相続登記を相続から3年以内に行わなければ罰金10万円を支払うこととなりますが、罰金以上に二次相続の困難さを考えれば値段の高い安いに関わらず相続登記をすべきです。
相続税の申告
相続税の申告は相続開始から10ヶ月です。相続税の税率は国税局のホームページからご覧になれますが、相続税の控除額を知らないと余計に税金を納めてしまうことになりかねません。中にはみなし相続財産という制度によって相続税の計算に使われる財産もあります。
相続税を納めないと追徴税も請求されるため、しっかり手続きしましょう。
まとめ
相続の手続きは往々にして負担となります。まずは一つひとつ手続きをこなしていき、独力では難しいというときは手続きの代行を委任しましょう。これだけでも効率的な相続が可能になります。
そして財産評価や登記、相続争いでお悩みの時は弁護士へ相談しましょう。弁護士は法律問題について受任できる分野を制限されません。