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確実に未払いの退職金を回収する方法は?必要な証拠と手続き方法を解説

会社を辞めるとき、本来支給されるはずの退職金が支払われないケースがあります。
退職後に退職金を請求することも可能ですが、退職金請求権には「時効(5年)」があります。期限内に請求しないと退職金を支払ってもらえなくなる可能性があるので早めに対応しましょう。
今回は、未払いの退職金を回収するために必要な証拠と請求手続きの方法を解説します。

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未払いの退職金に関する悩みが増加中

相談者さま

そういえば、前職って退職金規定があった気がする。毎月の給与明細からも退職金の科目があったし。

でも私2年しか働いてないからもらえるのかな?もらえるに越したことはないけど、手続きってめんどくさいのかな?

名前/年齢/性別

安達裕里香(仮名)/24歳/女性 

相談背景

有名私立大学の卒業の帰国子女。卒業後就活人気企業の総合商社に入社。

グローバルで挑戦的な仕事に期待していたが、実際の業務は事務作業的なタスクワークの連続で、憧れとは程遠い地味で固い内容であった。

そんなモヤモヤした感情を抱きながら2年が過ぎた夏に、大学の同期のM君に遭遇。彼は外資系の金融機関に入社したらしく、詳しく話を聞いたところ若手でも責任感ある仕事ができ楽しいといっていた。

これをきっかけに転職を決意し、見事成功。

転職後数ヶ月経った頃に、年末調整のために前職の給与明細を見直していたところ、退職金という名目で給料から引かれているお金があった。そういえば退職金はもらってなかったと思い、退職金について調べ始めた。

相談内容

・退職金って何年働いたらもらえるの?時効はあるの?
・退職金がもらえるケースとそうでないケースは?
・未払いの退職金をもらうために必要な証拠と手続きは?
・未払いの退職金を請求する際に弁護士に依頼するメリットは?

 

担当弁護士

会社に退職金規程があれば、退職金が支給されます。

ただし例外もあるので、詳しく調べていき、退職金を請求できる場合は手続きをしていきましょう。

本記事の執筆者

福谷 陽子

元弁護士 京都大学法学部卒業後、10年間の弁護士実務を経て、ライターに転身。

現在は法律記事を中心に多数のメディアや法律事務所などの依頼を受けて執筆活動を行っている。

公式HP:元弁護士・ライターぴりかの法律blog(https://legalharuka.com/

退職金とは

退職金は、労働者が勤務先の会社を退職するときに、一定の要件のもとで支給されるお金です。
退職金には、2つの性質があると考えられています。

退職金の性質 概要
功労に対する報酬、慰労金 従業員が会社で長年働いてきた功労に報いること
賃金の後払い 在職中には賃金が少しずつ積み立てられて、退職時にまとめて支払われること

 

上記のような性質からして、退職金は在職期間が長くなればなるほど高額になるのが一般的です。

退職金が支給されるケースとは?

会社を辞めても必ず退職金が支給されるわけではありません。支給されるのは以下の2つのケースに該当する場合です。

  • 就業先に退職金規定がある
  • 就業先に退職金支給の慣行がある

それぞれのケースを詳しく説明します。

(1) 退職金規程がある

退職金が支給されるには、その会社に「退職金規程」があることが必要です。退職金規程とは、雇用者が退職金の支給要件や計算方法などについて定めた規則です。独立してもうけられていることもありますし、就業規則と一体化されていることもあります。
退職金を支給することは、労働基準法などの法律による義務ではありません。企業が自主的に「退職金規程」を定め、労働者との間に「退職金を支給する契約」ができている場合に限り、退職金支給義務が発生します。
勤務先に退職金規程がない場合、どんなに長く勤めたとしても、退職金を請求できません。
 

(2) 退職金支給の慣行がある

ただし、退職金規程がもうけられていなくても、社内に退職金を支給する慣行があれば、そのルールが会社内にできあがっているので、退職金を請求できます。慣行がある場合、労働者は退職するときに「当然退職金を支給してもらえる」と期待しますし、企業側も「当然支払う必要がある」と理解しており、その期待や現状を保護する必要があるからです。

慣行によって退職金が支給される場合の具体的な支給金額や支給方法については、これまでの退職金支給事例をもとに判断します。

退職金が支給されないケースとは?

 

一方で退職金が支給されないケースはどういう場合でしょうか?以下の3つに当てはまると退職金が支給されない、もしくは回収するのが難しくなります。

  • 就業先の在職年数が短すぎる
  • 就業先から懲戒解雇されている
  • 時効(5年)が過ぎている

それぞれ詳しく説明していきます。

(1) 在職年数が短すぎる

「退職金を請求するには、何年くらいの在職期間が必要なの?」と疑問を持たれる方も多いです。

退職金規程は個々の企業が独自に定めるものなので「何年以上在職したら退職金を支給する」という決まりはありません。

ただ上記の退職金の性質(功労報酬、賃金の後払い)からすると、一定年数働いていないと退職金を支給する理由が見当たりません。

そこで、多くの企業では、最低でも3年程度在職していないと退職金が支給されません。


自分のケースでいくらの退職金が支給されるのか正確に知りたい場合には、勤務先の退職金規程を確認しましょう。退職金規程は、就業規則とセットになっていることが多いです。もしわからない場合には、総務の人や上司などに尋ねましょう。

(2) 懲戒解雇されている

勤務先で退職金規程があり、長年勤務してきた方でも、懲戒解雇されると退職金が支給されないことが多いです。

退職金を請求するには、普通解雇整理解雇、あるいは自ら退職していることが必要です。

(3) 時効が完成している

退職金請求権には、5年の時効があります。
そこで、退職金を請求できる状態になってから5年が経過すると請求不可能となります。

未払い退職金を請求するための証拠

退職金の支給要件を満たしていても会社が払ってくれない場合、退職後に労働者の方から退職金を請求することが可能です。

ただし、より確実に退職金の支払いを受けるためには「証拠」が必要です。証拠がないと、会社から「退職金を支給する義務は無い」「退職金の計算方法に合理性がない」などと反論されて、支払いを受けられなかったり減額されたりする可能性が高くなるからです。

以下では、退職金を請求するのに必要な証拠の例を示します。

退職金の請求に必要な証拠

会社に退職金支払い義務があることを示す証拠として、以下のものを集めましょう。

  • 退職金規程
  • 就業規則
  • 労働契約書
  • 労働条件通知書
  • 入社時に渡された説明書
  • 先の退職者による証言、支給明細書

勤務先に退職金規程が存在せず「慣行」によって退職金請求するケースでは、これまでに退職した人の証言や支給明細書が必要です。「慣行になっている」とまで言うためには、複数名の証言を集めるべきです。

退職した事実に関する証拠

次に、会社を退職した事実を証明する資料も用意しましょう。(企業側が退職自体を争わない場合には不要です)

  • 離職票
  • 解雇通知書

勤務中の条件や勤続年数の証拠

雇用条件や勤続年数の証明資料も退職金の計算方法にかかわってくるので集めましょう。

  • 給与明細
  • 雇用契約書、雇用条件通知書など

未払い退職金の請求方法と手順

未払退職金を請求するときには、以下のような手順で進めていきます。

(1) 内容証明郵便で請求

退職金請求を行うとき、まずは自分で未払いになっている退職金額を計算する必要があります。

その上で、未払い退職金を書面によって請求するのが良いでしょう。

このとき、「内容証明郵便」という郵便を利用することをお勧めします。内容証明郵便とは、郵便局や差出人の手元に、相手に送付したものとまったく同じ控えが残る郵便です。

退職金請求権には時効がありますが、内容証明郵便を利用すると発送時を証明できるので、確実に期限内に請求した証拠を残すことが可能です。「配達証明」というサービスを利用すると、送達時も明らかになるので、相手から「請求書を受けとっていない」と反論されるおそれもなくなります。

書面を送ったら、会社との間で退職金の支給額や支給方法について話し合います。

合意ができれば、「退職金支払いについての合意書」を作成し、合意内容に従って退職金を払ってもらうことができます。

(2) 労働局・労働委員会のあっせんを利用する

会社と直接交渉をしても退職金を支払ってもらえない場合、都道府県の労働局や労働委員会における「あっせん」という手続きを利用して、退職金支給についての話合いができます。

労働局は都道府県ごとに設置されている行政機関であり、労働委員会もまた同じように地域に設置されている行政機関です。どちらにおいても労働者と雇用者との法的トラブルについて、話合いのあっせん(仲介)を行っています。

あっせんを利用すると、担当者が間に入って労働者と雇用者との話合いを進めてくれるので、自分達だけで話合いをするよりも解決につながりやすいです。ただしあくまで話合いの手続きなので、双方が最終的に了承しなければ決裂して終了します。

(3) ADRを利用する

労働問題を解決するためにADR(裁判外の紛争解決手続き)」を利用することも可能です。ADRでも専門の担当者が間に入って労使問題の調整をしてもらえます。

各地の弁護士会において労働問題のADRが用意されているので、一度お住まいの弁護士会に問い合わせてみて下さい。

(4) 労働審判を利用する

話合いでは解決が難しい場合「労働審判」の利用によって解決を目指しましょう。労働審判とは、裁判所における労使問題専門の解決方法です。

労働審判を利用すると、当初の3回は調停によって話合いを行いますが、調停が成立しない場合には裁判所が「審判」によって解決方法を決定します。

当事者同士では合意ができない場合でも、裁判所から一定の解決方法の提示を得られるので、最終解決につながりやすいです。

労働審判では、調停段階で合意して解決できるケースも多いですし、審判が出たときに異議が出ずに確定するケースも合わせると8割程度は最終解決しています。

(5) 訴訟を行う

労働審判では、審判に対して当事者が異議を出せば、審判内容は効力を失います。この場合には労働訴訟によって解決を目指すしかありません。

訴訟で裁判官が判決を下せば他機関に訴え出ることはできないので、最終的に退職金トラブルを解決することができます。

未払い退職金請求に弁護士を使うメリット

未払退職金を請求するときには弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

(1) 適切なアドバイスを受けられる

弁護士に相談すると、各場面において適切なアドバイスを受けられます。

どのような証拠を保全すべきか、会社に請求する際や話合いの際にどのような対応をとるのが良いのか、合意のタイミングなどについて教えてもらえるので、予想外の不利益を受けることがなくなります。

(2) 有効な証拠集めができる

退職金請求のためには証拠集めが極めて重要です。

弁護士に相談すると、ケースごとに有効な証拠の種類や集め方をアドバイスしてもらえるので、有利に請求手続を進めやすくなります。

(3) 代理交渉してもらえる

未払い退職金を請求するときには、会社との交渉が必要です。しかし一個人に過ぎない労働者側は会社と比べると、弱い立場となります。

法的知識と交渉スキルに長けた弁護士に交渉を依頼すると、力の差が解消されて労働者に有利な解決内容を実現しやすくなります。

(4) 裁判手続きになっても安心

未払い退職金の請求をしたとき、労働審判労働訴訟などの裁判手続きが必要になるケースも多々あります。

これらの手続きでは法的な観点からの主張や立証が必要となるので、一般素人の方が一人で臨むと不利になる可能性が高まります。

労働問題に強い弁護士に依頼していれば、これまで培ったスキルや専門知識を活かして有利に手続きを進めることができ、依頼者に有利な解決を得られやすいです。

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まとめ

退職金には5年の時効があるので、未払いになっているならば早急な対応が必要です。自分一人でできることには限界があるので、早めに弁護士に依頼して請求手続きに着手しましょう。
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