時効は2年!給与未払いに遭ったときに相談して効果的に回収する方法

給与の未払いが発生した日には、焦りを通り越して怒りを覚えることでしょう。自分の時間と体力と知識を提供したもの対する対価が給料です。
それを上下の立場や縁故を利用して無償で使うことなど許してはいけません。今回はそんな給料の未払いに対してどう対処するのか、またどこに相談するべきなのかを解説していきます。

会社の事故・トラブル(69)労働(68)
目次

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給与未払いについての悩み|労働体制の変革に伴って増加


◾相談者さま

そういえば少し前の給与が未払いの状態になったままだな。ちょっと業績が落ち込んだ時期だったから、待ってあげたけど、今は回復したしもう請求してもいいんじゃないか?

普通に考えても未払いが発生すること自体おかしいし。

名前/年齢/性別

近藤直樹(仮名)/31歳/男性 

相談背景

外資系コンサルや金融など、いわゆるハイキャリアを築いてきた。その経歴から様々な企業からオファーがあるが、今後は自分が事業の運営者として情熱を注げ挑戦的な仕事がしたいと考えている。

そう考えていた時に、教育系ベンチャーから誘いがあり、まさに自分がやりたいことと合致したので参画した。

半年ほど順調に進んでいったが、ここ業績が上がらない状態であった。そして先月・先々月と給与の未払いが発生した。耐える時期だと思い、申告だけはしており、今月はきちんと振込みがあった。

もう少し待ち業績が回復した段階で未払いの給与は請求した方がいいのか?もしもらえなかった場合どうすればいいのか?

相談内容  

  • 未払い給与の回収は自分でした方がいいのか?弁護士に相談した方がいいのか?
  • 未払い給与を回収するための手続きや証拠は?
  • 弁護士への相談費用は?労働基準監督署などとの違いは?

◾担当弁護士

給料が払われない自体が発生する段階でその会社で働き続けること自体を検討した方が良いでしょう。

しかし未払いの給料を回収する前に辞めると連絡が途絶えるなど厄介なケースに巻き込まれやすいので、できるだけ早く回収する必要があります。

今回は未払い給料を回収するための方法や弁護士への相談内容のポイントなどを解説していきます。

本記事の執筆者

福谷 陽子

元弁護士 京都大学法学部卒業後、10年間の弁護士実務を経て、ライターに転身。
現在は法律記事を中心に多数のメディアや法律事務所などの依頼を受けて執筆活動を行っている。

公式HP:元弁護士・ライターぴりかの法律blog(https://legalharuka.com/

給与請求権の時効

会社などの事業所に勤務している場合、雇用主はあなたに「給料」を払わないといけません。給料は労働者にとって重要な権利なので、労働基準法は以下のような給与支払いのルールを定めています。

  • 通貨払い
  • 直接払い
  • 全額払い
  • 毎月1回以上支払い
  • 一定期日支払い

給料は月1回以上の頻度で、定まった日にお金で全額直接支払ってもらわないと、違法です。

ところが今回お困りの近藤さんのように、場合によっては会社が給料を支払ってくれないケースもあります。このようなとき、会社が違法行為をしていることは確かなのですが、近藤さんの方も早急に動かないと、未払いの給与を受けとれなくなってしまうおそれがあります。

給与請求権には「2年」の時効があるからです。

この2年の時効は給料を請求できる状態になったときから進行します。つまり、給料が支払われるはずだった日から2年間、何もせずに放置していると、近藤さんは未払いの給与をもらえなくなってしまいます。

そこで、給与を未払いにされたら、早急に会社に請求し、支払いを受ける必要があります。

給与が未払いの相談できる場所とそれぞれの特徴

会社が給与を未払いにしたとき、自分一人でできることは限られています。どこか、相談できる場所はないのでしょうか?

2-1.労働条件相談ほっとライン

まずは電話で手軽に相談できる方法として「労働条件相談ほっとライン」をご案内します。厚生労働省が解説している電話相談サービスで、各種の労働相談を受け付けています。

「とりあえず、今の会社の対応が労働基準法に違反しているか知りたい」という場合などにお勧めです。平日の夜間と土日の終日に利用できます。

【営業時間】  

平日17時~22時 

土日10時~22時

電話番号:0120-811-610

http://www.zenkiren.com/jutaku/hotline.html

2-2.労働組合

次に、労働組合に相談する方法があります。労働組合とは、労働者の権利を守るために労働者が集まった団体です。大きく分けて、社内の労働組合と会社に縛られないユニオン(合同労組)の2種類があります。

社内に労働組合があれば、1度そちらの方に相談してみましょう。すると、労働組合が会社に交渉を申し入れてくれるかもしれません。

社内に労働組合がない場合や、社内の労働組合が会社の言いなりで動いてくれない場合などには、外部のユニオンに相談してみるのも1つの方法です。ユニオンであれば、会社とのしがらみがないので、比較的強い態度で会社に接してくれて、良い条件での協定などを締結してくれる可能性もあります。

ユニオンにはいろいろあるので、あなたの地域や業種の労働者を受け入れてくれる団体を探して相談してみると良いでしょう。

2-3.労働基準監督署

給与未払いの場合、地域の労働基準監督署に相談してみるのも1つの方法です。給与支払いは会社の義務であり、不払いは明確な労働基準法違反となるので罰則もあります。そこで会社が給与を支払っていないならば、労基署から会社に対し、強く改善指導をしてもらえる可能性が高いです。

会社も刑事事件になるのをおそれるので、よほど悪質でない限り、きちんと給料を支払ってくれるでしょう。

2-4.弁護士

労基署に訴えても会社の態度が変わらないのであれば、最終的に弁護士に相談するしかありません。

弁護士は、法的な権利を実現するための専門家です。労働者の「給与を受けとる権利」が侵害されているならば、弁護士が対応して会社に未払い給与の請求を行い、法的に給料を支払わせることが可能です。

弁護士に相談する際には、ネットなどで弁護士事務所のホームページを検索して、労働問題に対応している弁護士を探しましょう。

今回ご相談の近藤さんも、まずは社内の労働組合や労基署などに相談をしてみて、解決しなさそうであれば早急に弁護士を探して相談の申込みをするのが良いでしょう。

給与未払いで相談した弁護士がしてくれること

給与が未払いになっているときに弁護士相談をすると、弁護士は何をしてくれるのでしょうか?

3-1.アドバイスをしてくれる

まずは、会社に未払い給与を請求するためのいろいろなアドバイスをしてくれます。

必要となる証拠の種類や集め方、具体的な請求方法、時効の問題、予想される会社の対応などについても教えてくれますし、あなたが今心配していることや知りたいと思っていることなどについても、質問したら答えてくれるでしょう。

3-2.代わりに給与を請求してくれる

未払い給与を払ってもらうには、会社に請求する必要があります。またすんなり払ってもらえない可能性が高いので、交渉も必要になるでしょう。しかし労働者個人が1人で巨大な会社相手に交渉しても、有利に進めることは難しいものです。

弁護士は、こういった会社への請求や交渉の手続きをすべて代行してくれます。弁護士に依頼すると、よりスピーディに多額の未払い給与を回収できる可能性が高くなり、メリットが大きいです。その間に転職活動もできます。

3-3.労働審判や労働訴訟を代行してくれる

会社に直接請求して交渉をしても、お互い妥協点を見いだせず、給与の支払いを受けられないケースがあります。その場合、労働審判や労働訴訟を起こして解決するしかありません。

労働者個人がこれらの裁判手続きを進めると、不利になってしまう可能性も高くなります。特に労働訴訟は素人の個人が1人で進めるのは困難です。

弁護士に依頼すると、労働審判や訴訟も適切に進めて有利な条件を勝ち取ってくれるでしょう。また裁判手続きは非常に面倒ですが、弁護士に依頼したら、手間もかからなくなります。

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弁護士に未払い給与回収を相談・依頼したときの費用相場

弁護士に未払い給与の回収を依頼すると、以下のような費用が発生します。

4-1.法律相談料

法律相談料は弁護士に当初に相談をするときに発生する費用です。相場は30分5000円です。ただ、今は無料で労働相談を受け付けている法律事務所も増えています。

4-2.着手金

着手金は、弁護士に交渉や労働審判、労働訴訟等を依頼したときに発生する費用です。

だいたい10~20万円程度になりますが、着手金無料で受けてくれる事務所もあります。また労働審判や労働訴訟になると、別途着手金が必要となることが多いです。

4-3.報酬金

報酬金は、未払い給与を回収できたときに発生する費用です。だいたい、回収できた金額の10~20%程度です。

4-4.実費

実費は、郵便の費用や交通費など実際にかかった費用です。労働審判や労働訴訟になると、印紙代や郵便切手として数千円~数万円程度かかるでしょう(印紙代は請求金額によって異なります)。

給与未払いを回収する流れ

未払い給与を請求するときには、以下のように進めましょう。

5-1.口頭で請求

まずは会社に対し、給料が未払いになっていることを伝えて任意に支払ってくれるように請求しましょう。会社が支払いに応じたら、大事にせずに解決できます。

5-2.内容証明郵便で請求する

口頭で請求しても払ってくれない場合には、内容証明郵便を使って未払い給与の請求通知を送りましょう。このことで会社にプレッシャーをかけることができます。弁護士名で請求すると、より効果的です。

5-3.交渉をする

内容証明郵便を送ってもすんなり支払ってくれることは少ないので、その後会社と交渉を進めます。未払い給与額がいくらになっているのか、それをいつまでにどのようにして支払うか、話し合って決めましょう。

5-4.合意書を作成して支払いを受ける

お互いに支払い条件に納得したら「合意書」を作成しましょう。その内容に従って未払い給与を支払ってもらいます。

5-5.労働審判を起こす

会社と話合いをしても解決できない場合や、会社が無視して話合いに応じない場合などには、裁判所で労働審判を起こしましょう。労働審判では専門知識を持った労働審判員が間に入って話を進めてくれます。合意できない場合には、裁判所が解決方法を決定してくれます。

5-6.労働訴訟を起こす

労働審判でも解決が難しい場合には、最終的に労働訴訟によって解決するしかありません。

訴訟を1人で進めるのは難しいので、弁護士に依頼しましょう。判決で支払い命令が出たら、会社も給料の支払いに応じるでしょう。

未払い給与回収に必要な証拠

未払い給与を回収するには、以下のような証拠を集めましょう。

  • 給与明細書
  • タイムカード
  • 業務用のパソコン利用履歴
  • メール、FAXの送信履歴
  • 業務日報、運転日報
  • シフト表
  • 就業規則
  • 勤怠表
  • 雇用契約書、雇用条件通知書
  • 勤務時間・業務内容を自分で書き残した記録(手帳や日記など)

未払い給与に関する具体的な事例や裁判例の紹介

実際に給与を支払ってもらえない場合に会社に請求する典型的なケースにはどのようなものがあるのか、みてみましょう。

7-1.不当解雇の事例

多いのは、不当解雇の事例です。

解雇すると、会社はその後労働者に給与を払わなくなります。しかし不当解雇であれば解雇は無効で賃金請求権がある状態なので、労働者は未払い給与を求めます。

解雇が無効であることが確認されると、会社の側に未払賃金の支払い命令が下されて、会社は労働者にまとめて未払賃金を支払います。

 

  • 東京地裁平成22年2月9日 三井記念病院事件

不当解雇から判決までに約2年9か月かかった事例において、未払賃金約1700万円の支払い命令が出ています。

  • 東京地裁平成19年3月9日 日産センチュリー証券事件

不当解雇から判決までに約14か月かかった事例において、未払賃金約700万円の支払い命令が出ています。

https://kigyobengo.com/media/useful/126.html

7-2.経営不振の事例

会社が経営不振に陥っている場合、資金不足で給与支払いが困難となり、給与が遅れ遅れになります。

この場合には、労働者は早めに未払い給与を請求する必要があります。早く回収しないと、会社が倒産してしまうかもしれないからです。

近藤さんのケースでも、なるべく早めに対応するのが良いでしょう。

給与未払いが発生したら一刻も早く然るべきところに相談しましょう

給与の支払いは会社の義務です。それを受け取る権利が労働者にはあります。縁故の仲だからや巨大組織に立ち向かえないといった理由で見逃す人も多いのは事実です。

しかしそれを繰り返すことによって経営者や雇用主が給与の未払いを常習化するとあなた自身の問題だけでは済まなくなります。給与の未払いが発生したら、まずは

  • 労働条件相談ほっとライン
  • 労働組合
  • 労働基準監督署

に相談するようにしましょう。それでも動かない場合は、弁護士を立て会社と戦うようにしましょう。そのための準備も日頃から行うように心がけましょう。

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この記事の作成者

カケコム編集部