労働問題はどこに相談すればいい?5つの相談窓口ともっとも効果的な弁護士の立て方を解説
このページを読んでいるあなたは、いま仕事環境や人間関係で悩まれているのではないでしょうか?それはパワハラ・セクハラ・残業代未払いのいずれかですか?
たとえそれ以外の場合であっても、仕事環境でのトラブルは労働問題として扱うことができます。問題提起を行うことで解決や改善へとつながっていきます。
今回は、労働問題にあたるケースとその場合の相談窓口などを解説します。

本記事の執筆者
福谷 陽子
元弁護士 京都大学法学部卒業後、10年間の弁護士実務を経て、ライターに転身。
現在は法律記事を中心に多数のメディアや法律事務所などの依頼を受けて執筆活動を行っている。
公式HP:元弁護士・ライターぴりかの法律blog(https://legalharuka.com/)
労働問題として相談できることの例
労働トラブルに巻き込まれたら、自分一人で解決するのは大変です。第三者に相談しましょう。労働相談では、以下のようなことを相談できます。
- 解雇された
- 残業代を払ってもらえない
- セクハラやパワハラの被害に遭っている
- 給料を払ってもらえない
- 退職金をもらっていない
- いきなり減給された
- 労災に遭った
- 会社を辞めた方が良いか悩んでいる
- 仕事が辛くてうつ病になった、うつ病になりそう
労働問題を相談する窓口とそれぞれの特徴
上記のような労働問題を抱えてしまったときの相談場所には以下のようなものがあります。
2-1.総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、厚生労働省が運営している労働問題の相談所です。具体的には、各都道府県の労働局や各地の労働基準監督署内で相談を受けることになります。電話相談だけではなく面談による相談も受けてもらえます。
お近くの総合労働相談コーナーは、こちらのページから検索してみてください。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
労基署と連携しているので会社に違法行為がみられたら注意してくれますし、労働局にもつながっているので、会社との民事トラブルについて「あっせん手続き」を利用することも可能です。
2-2.労働組合
労働組合は、労働者の権利を守るための団体です。会社側に不当な行為があれば、団体交渉を行って労働者の権利を実現してくれます。
給料を払ってくれないケースや不当解雇の事例などで労働組合に相談すると、組合が会社と交渉をしてくれて、労働者に有利な内容の協定を締結してもらえる可能性もあります。
社会の労働組合や社外の合同労組(ユニオン)に相談をしてみると良いでしょう。
2-3.労働基準監督署
労働基準監督署は、各地の企業がきちんと労働関連の法律を守って運営しているかどうか、監督するための機関です。
違反企業があれば是正勧告を行い、状況が改善されない場合には対象企業を送検し、刑事事件にする権限を持っています。
残業代不払いなどの違法行為が行われているときに労働基準監督署に相談をすると、労基署が企業に注意してくれるので、企業側が適正に対処する可能性があります。
2-4.都道府県の労働局
都道府県の労働局でも労働相談を受け付けています。ここでは、企業側と労働者側の「(和解)あっせん」という手続きを行っています。
あっせん手続を利用すると、企業側との間に労働局に入ってもらって話合いができます。
労働局から解決案を提示してもらうことなどもできてトラブル解決できるケースも多い上、利用料金もかかりません。会社ともめてしまったときには是非とも利用しましょう。
2-5.社会保険労務士
社会保険労務士は、労務管理や年金などに関する専門家です。企業内で社会保険手続きの代行を行ったり労務関係のコンサルティング業務などをしたりしている人が多いです。また、「特定社会保険労務士」という資格を持った人の場合、労働局のあっせん手続きの代理人となることができます。
一人であっせん手続きを進めるのに不安がある場合には、1度社会保険労務士に相談してみるのも良いでしょう。ただし、社会保険労務士は、基本的に本人の代理人にはなれないので、会社との交渉や労働審判、労働訴訟などを依頼することはできません。
あくまで「アドバイス」と労働局でのあっせん手続きの代理人(特定社会保険労務士のみ)の相談となるので、覚えておきましょう。
2-6.弁護士
全国の弁護士にも労働問題を相談できます。
労働問題全般について幅広くアドバイスしてもらうことができますし、弁護士には本人の全面的な代理権があるので、交渉や労働審判、労働訴訟などの手続きについてもすべて対応してもらうことができます。もちろん労働局のあっせん手続きを依頼することも可能です。
ただし、社会保険関係の手続きや保険料の計算方法などについては社会保険労務士の方が適任です。弁護士に依頼するのは、あくまで「法的な権利義務についての問題」です。
たとえば
- 残業代請求
- 不当解雇
- 給料未払い
- 退職金未払い
- セクハラパワハラ
- 労災
などについては弁護士に相談すると効果的です。
労働問題を相談するときに必要な準備
弁護士に相談できる時間は有限なので、できれば効果的に利用したいものです。以下のような準備をしていきましょう。
3-1.疑問点をまとめる
まずは、あなたが疑問に感じている事項をまとめましょう。書面化していかないと、いざ弁護士の目の前に出たときに、何を聞きたかったのか忘れてしまうおそれがあるからです。
3-2.希望をまとめる
次に「自分が何をしたいのか」を考えていきましょう。たとえば不当解雇の事案なら「会社を辞めたいのか、残りたいのか」、セクハラ問題なら「加害者を処罰してほしいのか、慰謝料を払ってほしいのか、会社の責任を追及したいのか、再発を防ぎたいのか」など、いろいろな希望が考えられます。
まずは自分なりに実現したい内容を考えておいて弁護士に伝えて意見を聞き、その上で最終的な方針を決定しましょう。
3-3.資料を揃える
弁護士に相談すると各種の労働トラブルの証拠の集め方を教えてもらえますが、相談前に自分でもできるだけの資料を揃えておくべきです。資料があれば弁護士にもより状況が伝わりやすくなりますし、有利か不利かなども含めて適切に判断しやすくなるからです。
たとえば
- 会社から受けとった解雇通知
- 解雇理由通知書
- 残業時間を示すシフト表や業務日報の控え
- スケジュール帳
- セクハラやパワハラ発言をメモした記録
などを集めて弁護士のところに持っていきましょう。
労働問題を弁護士に相談するメリット
労働問題を弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。
まず、適切なアドバイスを受けられます。労働トラブルは、ケースによっては非常に複雑で、自分では何から対処して良いかわからないケースも多いです。弁護士に相談すると、その人の状況に応じた最適な対処方法を提案し、教えてもらえるでしょう。
また、トラブルを抱えて不安になっている場合でも、弁護士に相談すると法律の専門家の立場からアドバイスしてもらえるので安心できます。実際に会社に対して何らかの請求をするときには代理人になってもらうこともできますし、労働審判や労働訴訟を起こして会社に責任を追及するときにも、弁護士が代理すると有利に進みます。
渡辺さんのように、身の回りに労働問題で困っている方がおられるならば、弁護士への相談を進めることが望ましいです。
労働問題を弁護士に無料で相談できる?
労働問題を弁護士に相談すると、費用がかかることがネックだと感じる方も多いです。ただ、今の時代、弁護士は決して高額ではありません。多くの場所で無料相談を受けることができます。
まず、自治体(市区町村役場)で月に1~2回程度、弁護士相談を実施しています。予約制で時間制限がありますが、無料で弁護士のアドバイスを受けられます。
また収入が一定以下の方の場合には、法テラスでも弁護士の無料相談を受けられます。さらに一般の弁護士事務所でも無料相談サービスを提供しているところが増えています。
これらのサービスを利用すれば、費用をかけずに弁護士のアドバイスを受けられるので、是非とも上手に活用してみてください。
労働問題に強い弁護士の探し方
6-1.労働問題に強い弁護士とは
弁護士に労働トラブルを相談するのであれば、「労働問題に強い弁護士」を選ぶべきです。弁護士にもいろいろな取扱いジャンルがあり、人によって得意不得意が異なるからです。
労働問題に強い弁護士の特徴は、残業代請求や不当解雇などの各種の労働トラブルの取扱件数、解決実績が高いことです。そして現在の手持ち事件の中で労働問題の割合が高いケースも多いです。労働問題に熱心に取り組んでおり、労働トラブルの解決方法についても詳しい知識とスキルを持っています。
このように労働問題解決の豊富な実績とそれによって培われた高いスキル、知識により、労働トラブルを有利な方法で解決できるのが労働事件に強い弁護士です。
6-2.労働問題に強い弁護士の探し方
労働問題に強い弁護士を探すには、その弁護士事務所の「ウェブサイトの内容」を確認するのが手っ取り早くわかりやすいです。サイト上に労働問題に関する記述が多く「労働問題が得意」などとアピールしている弁護士は労働問題に強い可能性が高いです。労働関係のコラムや解説記事が充実しているかどうかにも着目しましょう。
また労働問題に力を入れている弁護士は、労働相談を無料にしているケースも多いので、「労働相談は無料」と書いてある弁護士事務所を探してみるのも1つの方法です。
労働問題に関する具体的な判例の紹介
大阪地裁平成27年8月10日(残業代請求)
バス会社の従業員(助役)が会社に残業代請求をした事例です。この裁判では、残業時間を計算する際に労働者の「仮眠時間」が、労働時間に含まれるかどうかが争われました。
裁判所は、従業員が「仮眠時間」に何らかの仕事をさせられていたわけではないので、仮眠時間は労働時間に入らないと判断しました。
https://www.y-klaw.com/faq1/773.html
http://www.ik-law-office.com/blog/category/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E6%99%82%E9%96%93/page/2/
長崎地裁平成12年9月20日(不当解雇)
タクシー乗務員が諭旨解雇された事案です。解雇理由は、採用時の犯罪歴(麻薬取締法違反)の秘匿と業務命令違反です。
裁判所は、この従業員の採用時に会社側の方から特に犯罪歴についての質問をしていなかったことを重視し、従業員が自ら犯罪歴を告白しなかったとしても懲戒事由にあたらないとして、解雇を無効としています。
http://ootori-roudou.com/saibanrei/tyokaikaiko
労働問題では?と思ったらまずは相談することが大事
セクハラ・パワハラ・不当解雇などなど、労働問題と言われるものはいくつもあります。そしていまではその問題を相談し解決するための相談窓口がいくつもあります。
また社会的にも解決していかなければならないという時流になっています。もし仕事環境で悩まれているようでしたら、まずは
- 総合労働相談コーナー
- 労働組合
- 労働基準監督署
- 都道府県の労働局
- 社会保険労務士
に相談してみましょう。それでも解決しない場合は、弁護士を立てる手続きをしましょう。