働き方改革とは?雇用主も労働者側も気になる具体的な変化はなにか、弁護士が回答

働き方改革、昨今話題になってますよね。実際に何が改革されたのか、どのような企業に影響があるのか、ご存知ですか?働き方改革の意外に知らないあれこれを弁護士の先生に詳細に解説していただきました。「何がどう変わるのか」「こんな時には誰に相談するべきか」といった疑問にもお答えいただいています。ぜひ参考にしてみてください。

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目次

働き方改革とは

働き方改革は主に労働時間の管理等について企業に一層の厳格化を求めていくことこれまで規制が緩かった待遇面(正規と非正規の待遇格差)の是正をすることに焦点があてられています。

 

最近は裁量労働制で月170時間もの労働があった女性の会見や、正社員と同じことをしているのに給料が違う非正規社員の声など、こうした問題が増えてきていますよね。こうした事態を改善していくための法案が、今回解説して行く働き改革の内容になります。

 

働き方改革の目的

働き方改革は、業務をより効率化して、長期的に働ける人材を確保すること非正規社員でもたくさん働け、働く意欲を持ち続けられる環境を作ることで、企業や日本全体をより良い方向に導いていくことの2点が主な目的となります。

 

昨今労働人口が減ってきているため、働く環境を整えることで、企業側にとっても長期的に働ける人材を確保することができるようになります。また、時間管理に関して今まで罰則などの適用がなく、健康問題や過労死事案などの長時間労働による弊害が一部企業に起きていました。

 

そのため今回の働き方改革法案では、特に時間面に関して罰則を設け、規制をかけることを重視しています。

 

主な6つの施策と求められる企業の対応

残業時間の上限

新上限では原則日2時間、月45時間、年360時間までと定めています。

これまで労務時間管理をタイムカードで分単位で管理してきた企業への影響は少ないですが、時間管理システムを導入していなかったり、一部従業員に時間管理のルールがないなどの企業は改善を求められます。

経営者の方などで管理方法などに不明点がある場合は、弁護士、社労士、コンサルタントへ相談し、対応していく必要があります。

 

5日間の「有給休暇取得」義務化

こちらは名前の通り、有給休暇を5日間取ることを義務化した制度です。

この制度は大企業ではすでに行なわれているところも多いです。そのため有給消化率がなかなか上がらない中小企業向けのものとなります。

これまでは個人が個別申請して許可することが多かったため、こうした制度を構築し、より有給を取りやすいようにしています。

 

勤務間インターバル制度努力義務

退社してから一定時間たたないと出社してはいけないという制度になります。

努力義務になりますので、守らないと罰則があるといものではありません。完全に義務化されると、一部業種(夜勤がある業種や営業時間が長い店舗の店長職等)のシフト組みが難しくなってしまうという課題もあります。

今後は業種に合わせた柔軟に対策が課題となってきそうですね。

 

「割増賃金率」の中小企業猶予期間の廃止

こちらは残業代の割増賃金率が25%から50%になると定めたものです。

中小企業にはこれまで、人件費が上がることを考慮して猶予が与えられていました。それを今回の法案により、2023年までに改善することが求められるようになります。長時間労働の規制と合わせて、割増賃金率も上がることで、長時間労働をさせないようにしてほしいというメッセージにもなっています。

これらが改善されれば最悪のケースである過労死を防ぐことにも繋がりますよね。

 

「産業医」の機能強化

安全配慮義務が厳しくなってきたため、企業の各部署と産業医との連携が強化されることとなります。

 

具体的には産業医へ企業側がよりこまめに情報を提供することとなり、「ひとつきの時間外労働時間が80時間を超えた労働者の氏名を共有すること」等が提供する必要のある情報となりました。

また、産業医からの「勧告」も強化されました。4月から、勧告された内容は事業主により衛生委員会か安全衛生委員会への報告が義務になっています。

 

労働者が自分からは言い出しにくいことも産業医の機能強化によって外部に伝わりやすくなっています。

 

非正規雇用者の待遇改善

「同一労働・同一賃金の原則」(同じ労働に対しては正規社員と同じ額の賃金を払う)にのっとったものです。

長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件で同じ業務を行う正社員と嘱託社員で、労働条件(賃金を構成する各種手当て)が異なることを不合理とした最高裁判例は有名かと思います。

こうした蓄積された判例を法律に反映し、明文化したものがこの非正規雇用者の待遇改善です。これにより現場の説明責任が重くなり、例えば正社員にある手当がパートにはない場合など、企業側に説明義務が発生するようになります。

説明できない場合は移封となりますので、気をつける必要がありますね。

 

 

対象が特殊な施策

高度プロフェッショナル制度

専門職の人の労働時間や働き方が優遇される制度です。

時間に基づく賃金制度はもともと工場労働などを想定しています。クリエイティブな仕事や高度知識を要する仕事は、時間とパフォーマンスが連動しないため、今回新しく追加された制度です。

しかし該当する職種が限られているため(金融関係のディーラーや研究職等)、この制度の利用者はほとんどいないのが実情です。

 

 

働き方改革に関係のある人、企業

昨今の働き方改革では、中小企業に影響のあるものが多いですが、コンプライアンス体制が弱い大企業にとっても労働環境の改善に取り組まなくてはいけなくなるような内容になっています。

 

大企業の場合

飲食業等は特に、労働環境のチェック機能が弱い企業の風土改革が課題になってくるでしょう。

残業時間の上限や割増賃金率の増加など、労働基準監督署が調査し、体制を整えていくことになります。

 

中小企業の場合

中小企業はまず、コンプライアンスが整っていないところもまだまだ多くあります。

そのためまずはコンプライアンス意識を持ってもらうことが大切になります。

 

働き方改革により、以前よりコストが多少増えてしまう面はありますが、企業を長持ちさせるためにはこのようなコストを割いていくのは必須です。今後は社員が長く働き続けられるような企業づくりが大切なのです。

 

弁護士からのアドバイス!

今日は労働者の権利が強い時代です。

ブラックな働かせ方をしてしまうと退職者が出たり、インターネットに悪評が書かれたりすることも珍しくなく、それを隠したりごまかしたりするのは非常に難しいです。その結果、優秀な人材が来なくなったり、訴えられる可能性もありますので、多少コストがかかっても、労働者にとって働きやすく長続きしやすい環境づくりが非常に大切になります。

 

 

改革を怠ることで罰則規定はあるの?

働き方改革の中でも、制度によって罰則があるものとないものに分かれます。

ここでは、どの制度に罰則があり、どの制度にはないのか、一部をご紹介いたします。

罰則があるもの

罰則がないもの(努力義務)

時間規制

5日間の有給取得義務

残業代の割増

勤務時間インターバル制度

 

残業時間の上限など、時間の管理が今後一番働き方改革において重視されるようになります。

これを守らないと労働基準監督署の捜査対象になったり、送検リスク(検察庁に犯罪として記録が残ってしまう)がある等、罰則もありますので、経営者の方は注意が必要です。

また5日間の有給休暇取得義務は、全ての企業を網羅して監督し、罰則が設けられるとは考えにくいですが、大企業等は守らなかった場合、罰則を受ける可能性もあります。

中小企業の残業代割増に関しては、制度の施行開始時期が過ぎても労働者に払っていない場合は、賃金の不払いにあたりますので罰則が課せられます。

これらに対し、勤務間インターバル制度に関しては努力義務になりますので、特に罰則は設けられていません。

 

ここまで各制度の罰則の有無を紹介しましたが、個人にとっては、これらの制度は企業側に何かしら違反があった場合、労働基準監督署に個人で相談に行く口実になります

違反申告があった場合は、捜査に繋がっていくこともありますので、企業風土改善のきっかけにもなるかもしれません。

 

監視監督する機関

監視監督をする機関のおおもとは厚生労働省になりますが、基本的には労働基準監督署が監督することになります。

 

 

企業にちゃんと取り組んでもらうためには

コンプライアンス意識が低い企業では、形だけ整えて中身が伴ってこないところもありますが、働き方改革をきっかけにちゃんと改善していこうとする企業も多くあります。しかし意識の低い企業の場合、改革の中身をちゃんと把握しておらず、罰則があるのを知らないこともあります。

これからは目先の利益だけでなく、長い目で見たときに何が企業にとって重要か考えることが大切になってきますね。

 

法律を変えることと実務レベルで環境が改善されるかどうかイコールではありません。

まずは法律を変えることで、人々の意識を変えていき、さらに実務に繋げていくことが今後は必要となります。

 

 

働き方改革による労働の改善点と今後の課題

国は現在労働の課題として長時間労働非正規社員と正社員の格差労働人口不足の3つをあげています。

まず長時間労働と、非正規社員と正社員の格差に関しては、今回の働き方改革が改善するきっかけになると考えられます。また、これらの条件が整えられ、労働環境が改善されることで、長期的に働いてくれる人が増え、間接的に労働人口不足も多少改善される可能性もあります。

今後は女性の働き方改革をより進めていくことで、結婚や子育てを原因とした退職が減り、さらなる労働人口不足の解消にも繋がっていくかもしれませんね。

 

 

働き方改革について気になる方はこちら

労働基準法違反になるケースと訴えられないための正しい知識

労働問題はどこに相談すればいい?5つの相談窓口ともっとも効果的な弁護士の立て方を解説

これって不当解雇じゃないの?仕事でのトラブルはまず弁護士へ相談するべし

残業代請求された場合の正しい対処方法

 

 

まとめ

ここまで働き方改革の内容をご紹介してきました。

しかし労働基準監督署が全ての企業を網羅して監督していくのは難しいです。何か企業側に違反があった場合は、個人レベルで労働基準監督署に相談にいくことが大事だということを認識しておきましょう。

 

こんなときは弁護士に相談を!

働き方改革で労働時間の条件が決められたり、中小企業の割増賃金率が変動したりしました。

これらに企業が違反した場合や、残業代を請求する場合等は、労働基準監督署だけでなく弁護士に相談することも可能です。違反しているかどうかの確認の相談にものってくれます。

弁護士に相談することで、企業側への一つの意思表示にもなり、企業が変わるきっかけにもなり得るのです。

困ったらまず弁護士に相談してみましょう!

相談する際は、弁護士によって得意分野も異なってきますので、自分の状況にあった弁護士を探すことが大切になってきます。現在はカケコムなど、状況に合った弁護士を探してくれるサービスもございますので、そういったサービスを活用するといいですね。

また、企業側や経営者も、弁護士へ相談することで現状では会社にとってどんなリスクがあるのかを知ることができます。きちんと現状を把握して、足りないところがあれば対策していくようにしましょう。

 

 

 

谷 靖介 弁護士

リーガルプラス法律事務所 代表弁護士

東京弁護士会 所属

 

より多くのトラブルを抱えた人の力になりたい”という思いを胸に、日々弁護活動を行う。

得意分野:交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続問題、離婚・不貞問題、未払い残業代請求、中小企業法務、刑事事件

 

この記事の作成者

カケコム編集部