弁護士がベンチャーに参画するやりがいとは?【イベント潜入レポ】

カケコムは、初の試みである「弁護士×ベンチャー Meetup」を開催しました。ベンチャー支援に興味のある弁護士や、関係者20名以上が参加し、大盛況となったミートアップ。インターン生が当日の様子をレポートします!

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目次

カケコムは、初の試みである「弁護士×ベンチャー Meetup」を開催しました。ベンチャー支援に興味のある弁護士や、関係者20名以上が参加し、大盛況となったミートアップ。インターン生が当日の様子をレポートします!

1.登壇者のご紹介

(1)野本 遼平さん(グロービス・キャピタル・パートナーズ)

ベンチャー・スタートアップに対して投資をする、VC(ベンチャーキャピタル)で働かれている野本さん。メルカリやスマートニュース、今回登壇されている草原さんのREADYFORもグロービス・キャピタル・パートナーズの投資先に含まれています。今の会社では完全にキャピタリストとして働かれており、会社の中でも弁護士であることを忘れられているときもあるとか(!)。最初は小規模の弁護士事務所に所属され、その後ベンチャー中心の弁護士事務所へ。2015年にKDDIグループのSupershipホールディングスにジョインし、経営戦略室長や子会社役員を歴任されていました。

(2)草原 敦夫さん(READYFOR)

READYFORというベンチャーでCLO(最高法務責任者)をされている草原さん。クラウドファンディングの会社で、「誰もが実現できる世の中をつくる」をビジョンに掲げて、経済合理性のみではお金の流れていかない領域にもお金を流していくべく事業をされています。もともとは森・濱田松本法律事務所で主に上場企業のコーポレート・ガバナンス、会社訴訟・非訟、M&Aなどの企業法務をされてました。

(3)重松 英さん(桃尾・松尾・難波法律事務所)

今月末に今の事務所を離れ、株式会社ツクルバというベンチャーに参画予定の重松さん。アンダーソン・毛利・友常法律事務所から桃尾・松尾・難波法律事務所に移籍した後、昨年夏に米国留学・研修から帰ってこられました。ツクルバは高校同期が立ち上げられた会社で、もともとは顧問弁護士として週1〜勤務されていました。急成長とともに法務チームを立ち上げていくフェーズでジョインを決意。企業法務全般をされてきたジェネラルな経験がベンチャーで生きてくるのではないかと語ります。

2.本編

 

対談は、カケコムCEOの森川がモデレーターを務め、登壇者の3人に質問をする形式で進みました。

スタートアップにジョインして良かったことはなんですか?

草原さん:楽しいことが一番良かったですね。弁護士時代も楽しかったのですが、目の前のクライアントを助けるだけでなく、自社の事業の成長のために仕事できているのが楽しいです。

野本さん:僕も楽しいと思っています。過去に何が起きたかを精査するだけでなく、未来志向で働くことができるのが魅力的ですね。

重松さん:これから成長していこうという業界に身を置いて仕事していると、ある種気分が上がりますよね。法律以外でも自分の力が試される環境で、自分を枠をはめすぎずに成長していけるというやりがいもあると思います。

なぜベンチャーに深く関わることに?

重松さん:留学から帰ってきて、これから自分のクライアントを得てパートナーになっていこうという時に、顧問弁護士としてツクルバとご縁がありました。そこで仕事をしてくうちに、どういう分野で仕事をしていく弁護士になりたいかということを考えた時に、ベンチャー企業の「シェアリングCLO」みたいなことをやるのは面白いのではないかと思いました。従来の顧問弁護士よりももう少し深く会社にコミットするような働き方も面白いかなと思ったのです。ただ、そうすると、ちゃんと中に入って色んな苦難を共に経験してそれを乗り越えてみないと、どうしても借り物感がでてしまうと思ったんですね。そういう経験ができるのは今しかないなと思ってジョインを決めました。

草原さん:法務というと、ともすると「守り、コンサバ、成長のブレーキ」というイメージがあると思うのですが、弁護士として仕事する中で、法務のポテンシャルはもっとあるんじゃないか、もっと事業の実現や促進に貢献できるんじゃないかと思うようになりました。ちょうど「戦略法務」という言葉が注目されはじめていて、法務を使って事業価値の向上にチャレンジしてみたいという想いから、ベンチャーの中に入りました。

弁護士としてベンチャーに参画する強みはなんですか?

野本さん:リーガルマインドは超使えると思っていました。ビジネスも要件事実と似たような思考プロセスを取っていて、事業やプロジェクトのゴールを達成するために何が必要かを構造的に分解し、それが揃っているかをファクトベースで照らし合わせ、足りないリソースを調達します。皆さんはリーガル領域のプロフェッショナルだと思うのですが、こういったスキルは、実は企画や戦略業務の部分でも活かせると思います。

草原さん:法務の真骨頂は、多様なステークホルダーの利害を調整して課題を解決することだと思っています。事業も、当然色んなステークホルダーとやっていくので、それぞれの利益に配慮しないと良い事業はできませんので、法務のマインドが活きやすいと思います。また、資格の有無と直結するわけではないのですが、会社法のみ勉強しましたというわけではなく、それこそ憲法から、司法試験の勉強を通じて体系的に法律を学んでいるというのは弁護士の地力であり、強みだと思います。

重松さん:自分はまだ実際に中に入っていないからなんとも言えないのですが(笑)、今こういう段階で採用してもらえるのは強みだと思います。法律という1つの武器があるから採ってもらえる。法律を基礎としつつも、総合格闘技的に色々挑戦していきたいと思いますが、そのための1つのチケットとして弁護士資格があるというのは良かったなと思います。

弁護士の方がベンチャーに参画するとして、どういった能力が必要とされるでしょうか?

野本さん:職人的に領域を絞るのではなくて、「なんでもやります!」という姿勢が必要だと思います。事業会社、とくにスタートアップではファンクションではなく結果が求められていて、「法的見解はこうです。以上。」では意味がありません。最終的なゴールを実現するために、例えば契約手当てするのがいいのか、それとも開発でカバーするのがいいのか柔軟に選択できる発想も必要であると感じています。

草原さん:待たない姿勢です。法務は経営・事業のパートナーという面もあって、色々な部門に絡むので、積極的に情報をとりにいったり議論する、要は絡みにいくことが大事です。法務に閉じないで他部門とコミュニケーションを取ることは重要だと思います。

重松さん:自分で主体的に提案していくプロアクティブな姿勢が求められていると思います。法律と関係ないことを面白がってやれるマインドも大切ですね。「それ法律と関係ないんで」と敬遠するのではなく、法律以外も頼られていることを武器、自信にしてやっていくのが大事なんじゃないかなと思います。

今後のキャリアプランはどのようなものですか?

重松さん:自分は、まさにこれから会社にジョインする立場なので、ツクルバで法務チームの立ち上げを含めてしっかりと仕事をして、ツクルバの成長に貢献したいと思っています。将来的に、軌道にのってツクルバ的にもOKで需要があれば、他の会社等のサポートをするのもありうるかなとは思っています。兼業は認められているので。

野本さん:あまりキャリアプランとかはなくて、その都度その都度面白そうと思った仕事に取り組んでいますが、基本的には、成長産業に身を置きつつ、あまり周りとキャラがかぶらないように心がけています。

草原さん:READYFORの中で事業を成長させる、社会にもっともっとも大きなインパクトを与えられる会社に成長させていければと思っています。また、イノベーションを「法の遅れ」が阻害しているという現状認識はあるので、この解決に貢献できるような人の動きを作るとか、情報発信をしていくといった活動はしていきたいです。

3.質問タイム

 

今回は、会場にお越しの方からの質問タイムも長めに取られました。

まずは弁護士の方から、「横断的な事業理解や、法の遅れを肌感覚で気づく能力は、弁護士事務所での日々の業務ではなかなか求められないと感じています。今の事務所でそのような力を少しでも得るためには、どういうアンテナを張ればいいでしょうか?」というご質問。

草原さん:弁護士事務所の中に閉じていても限界はあって、界隈の人間とつながることが大事ではないかと思います。それこそTwitterで発信するでもいいですが、「自分はこういう関心をもっています」という旗を立てることが大事かと思います。

野本さん:例えばM&Aなどの業務をされているのであれば、対象会社をより理解するために相手の業務をついでに調べてみるといいかもしれないですね。今の業務の延長で一段深堀りして、業界や収益構造がどうなっているのかを調べてみるといいのかなと。

次に、弁護士の方から「事務所ではクライアントを見て仕事をしていたと思いますが、事務所から移って、誰を見て仕事するようになりましたか?」というご質問。

重松さん:まだジョイン前ではありますが、会社の人が依頼者のような感じになると思います。だからこそ、カルチャーフィットというか、「この人たちが依頼者だったらいいな」とか「この会社やこの人たちのために仕事がしたい」と思えるような会社を選ぶことが大切だと思います。

野本さん:会社のビジョンやミッションに共感できていると、「会社、あるいはその先にある世の中の困っている人に価値提供しているんだ」と視野が広がるんですね。だからちゃんとビジョンに共感できる会社に入ると、社会課題に向き合ったいい仕事ができると思います。

さらに、弁護士の方から「これから法務が活躍の場を広げて、経営にがっつり踏み込んでいくためには、会社内部・外部の弁護士はどのような役割をすればいいでしょうか?」というご質問。

草原さん:法務にはポテンシャルがあると思いますが、他方で法務というのはかなり分かりにくいものだと思っています。実際に法務をやっている身としては、法務の可能性も感じますが、そうでない人からすると、法務に対して「保守的でコンサバな事務をやっている人ね」ぐらいのイメージしか持たないかもしれません。。だからこそ、法務の価値を発信していくことが重要だと思います。ちなみにベンチャーの界隈にいると、規制領域でのイノベーションが取り残されたり、「サービスの安心・安全」がないとマーケットが立ち上がっていかないという現状があるので、「法務って実は重要だよね」という認識が広がっている印象は持っています。今後、ますます組織の中で働くインハウスロイヤーは増えるでしょうから、外部の弁護士は、強みや専門性を磨くことは重要だろうと個人的に感じています。

野本さん:僕は法務に領域を絞らないで興味・関心のある方向にスキルを広げていくべきだと考えています。法務はツールに過ぎないので、あまり枠にとらわれないほうがいいのかなと。どういう結果を出すかにフォーカスして皆がコラボレーションすれば、逆に法務の新しい価値を見出せるのではないかと思います。

最後に、弁護士の方からリーガルアドバイスとビジネスジャッジのバランスについてのご質問。

草原さん:中に弁護士がいるという前提はありますが、リスクは忖度せずに言ってほしいですね。外部の弁護士事務所は客観的な視点でリスクを分析し、その分析結果を踏まえて依頼者側でビジネスジャッジをするという役割分担がよいと思います。

野本さん:前職では外部の大手事務所を使っていたんですが、リスクやビジネスジャッジはこっちでやるので、見落としてしまいそうなテクニカルなところをくまなく洗い出してもらうところに価値を感じていました。

最後に登壇者の3人から一言ずついただきました。

重松さん:これからベンチャーにジョインするというフェーズで参加させていただいたので、想像での話となってしまった部分もありますが、来月からジョインした後は、経験にのっとった、より生々しい話ができると思うので、機会があればまたどこかで交流させていただければと思います。

草原さん:弁護士は個人事業主だと思っているので、目先のPLにとらわれすぎず、先行投資期間があってもいいかなと思っています。ベンチャーに行くと「人のつながり」や貴重な経験もつめるので、「のれん」みたいなものができる気がしています。一種の投資と思って飛び込んでもよいのかなと思っています。

野本さん:職業人としてどのような戦略をとるかは皆さん考えていると思うのですが、ベンチャーやIT産業も1つの選択肢であると思ってます。向こう10年くらいでは絶対弁護士の方が儲かると思いますが、20年30年後にAIの精度も高まり、インハウスも溢れてくる中で、代替不可能な付加価値が出せないと厳しいのではないでしょうか。そこを見据えてどのように差別化するか考えていただき、チャレンジの機会の多いスタートアップ、IT業界に是非来ていただけると嬉しいです。

4.編集後記