離婚の仕方について、最速の方法や法的根拠の必要性などを対応例も交えて弁護士が解説
離婚の仕方は何通りか?最速で離婚したい場合はどうすればよいか、そしてどれぐらいかかるのかを弁護士が実際の対応例を交えて解説します。はやく離婚したいがどうすればよいかわからない方や、実際にかかる期間について知りたい方に向け、離婚の基礎を紹介します。

今回ご解説いただく先生のご紹介です。
勝又 賢吾(かつまた けんご) 弁護士
幅広い分野を取り扱っておりますが、その中でも特に離婚や労働問題を多く扱っています。
こうした悩みやトラブルは、早期相談が大切なことも多いですので、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。
得意分野:離婚・男女問題、労働問題、交通事故詳細プロフィールはコチラ
離婚の仕方、何をすれば離婚が完了するか
離婚の仕方は大きく2つ
離婚の仕方は大きく分けると「夫婦双方が離婚条件に合意する」か「判決をもらう」の2つです。
夫婦双方の合意による離婚
夫婦双方が離婚条件に合意するかで離婚を決めるのが協議離婚と調停離婚です。
協議離婚は夫婦のみでの話し合い、調停は調停委員という二人を仲裁する役目を持った人を挟んでの話し合いになります。
判決をもらう離婚
判決をもらうのは裁判離婚になります。裁判官によって離婚が認められるか、そして離婚の条件について法律的見地から決定をもらうこと、これを判決といいます。
離婚決定後の手続きは大きく3つ
離婚を決める場面は上述の通り、①協議、②調停、③裁判によって分かれ、それぞれ離婚完了の手続きは変わります。以下に示すとおりです。
1.協議での離婚完了の仕方
協議は夫婦のみでの話し合いであり、夫婦が合意しさえすれば完了し、あとは離婚届に必要事項を記入して役所に提出すれば完了です。
2.調停での離婚完了の仕方
調停は調停委員を交えた話し合いで、夫婦が合意すれば調停調書を裁判所に作成してもらえるので、調停が成立したその日に離婚の効力が発生します。
その後、10日以内にその調書を持って役所で届け出をすれば手続きは完了します。
3.裁判での離婚完了の仕方
離婚を認める判決をもらえば離婚が完了します。
判決まで行かず、途中で相手と和解する場合は和解調書が作成されます。これは調停調書と同じように裁判所が発行する書面となり、法律的な効力が有ります。
離婚理由(法定離婚事由)は離婚に必ず必要か
離婚を検討する人ならば一度は”法定離婚事由”という言葉を聞いたことが有るかと思います。法律的に離婚が認められる理由のことなのですが、かならず必要、というわけではありません。
そもそも何のための理由なのか、どんなときに必要なのか、見ていきましょう。
そもそも法定離婚事由とは
夫婦の片方が離婚に応じないときに、それでも離婚をするべきかを客観的に判断するための法律的な指標です。
つまり、離婚したいけど相手が応じない場合、最後はこの法定離婚事由に当てはまる事情があるかどうかで決まるということです。
また、離婚自体を認めるかどうかが争われる場合に必要になるので、離婚自体に同意して財産分与などの条件面で争っている場合は必要ありません。
必要なとき
裁判では必要です。
離婚を求めて裁判になり、相手が離婚に応じない場合、法定離婚事由に該当する事実があれば裁判官は離婚を認めることになります。
逆に裁判では法定離婚事由がないと離婚は認められないわけです。
不要なとき
協議や調停など、話し合いの場合は不要です。
なぜ不要かというと、協議や調停などの話し合いの場合、お互いが合意しさえすれば良く、裁判官に認められる根拠が必要ないからです。
最速の離婚の仕方は?
協議離婚でまとめる
最も早い離婚の仕方は、協議離婚で夫婦が離婚条件に同意し離婚を決定することです。
確認ですが、協議離婚とは夫婦同士のみでの話し合いで離婚、およびそれにまつわる条件を決める話し合いをすることです。条件がまとまりさえすれば、あとは離婚届を提出するだけで完了する為、うまく行けば最も早い方法となります。
離婚が早期に実現する話し合いの特徴
以下のポイントがうまく行かないと離婚完了までが長くなりやすいです。
冷静な話し合い
相手の要求にいちいち過剰反応せずに、冷静にお互いの要望をすり合わせられる状態であることは、離婚交渉が長期化しない要因の一つと言えます。
感情的だと、ただの要求のぶつけ合いになってしまい、どちらも相手の要求を聞き入れることが難しいでしょう。
離婚条件を譲りあえる
早い離婚の実現にはどこかで相手に譲歩する姿勢が必要で、「この部分は譲るから、この部分は譲ってくれ」という話し合いをお互いができないと長期化しやすいです。また、二人の絶対に譲ることのできない離婚条件がかぶると長期化しやすいので、その場合は長期化することをある程度覚悟する必要があるかもしれません。
どうしても譲れない条件がかぶった場合は、弁護士に一度話を聞きに行くことで、長期化した際に自分の要求が通る見通しをたててもらうことをおすすめします。勝ち目の無いところで踏ん張って長期化させるより、あきらめて他の条件を有利にしていくことができるかもしれません。
互いに離婚条件の基準を理解
ある程度は離婚条件の決定基準を知っていないと、そもそも話し合い自体が困難になりかねません。初心者の人に説明なしで仕事をお願いするような状況、といえばわかりやすいでしょうか。指標が無いと、決めようも無いわけです。
早く離婚が完了するケース
弁護士の介入なし
特に揉めることもなく、夫婦で離婚届けに記入して提出できた場合は、最短で1ヶ月ほどで離婚ができうるかと考えます。
こういった場合は弁護士に相談されずに終了することが多いでしょう。
弁護士の介入あり
弁護士の介入にも様々なケースがあります。私の対応したものを事例としていくつかご紹介いたします。
ほとんど夫婦だけで決めきれていたケース
例えば相談から1ヶ月で完了したケースとしては、ほとんど条件が当事者同士で決めきれていて、細かい金額面等や書面の書き方だけを「ここはこう書いて公証役場に持っていけばいいですよ」というアドバイスをさせていただき、すぐに完了したことがあります。
財産分与のみ決められていなかったケース
また、財産分与の条件だけ決めきれていないケースで相談に来ていただいた場合もあり、そちらは相談から半年ほどで離婚が成立しました。
おもに慰謝料の交渉代理を行ったケース
調停で相手の不倫に対する慰謝料の話し合いがうまくいかず、調停から交渉代理をご依頼いただきました。とにかく慰謝料さえ決まればすぐに離婚には応じるということになり、金額の調整だけを行い、代理開始から5ヶ月で完了しました。
継続的なご相談から、最後に交渉を代理したケース
相談段階では、あくまで裏方として、「次はこう言ってみたらどうか」というアドバイスを継続し、最後の調整ということで代理人として介入したときには、合計で9ヶ月くらいかかりました。介入までに半年、介入からは3ヶ月といった形です。
協議離婚でもっとも揉めやすい部分とは
財産分与
離婚時に、夫婦が共同で築いた財産を分け合うことを財産分与と言います。
すぐに思いつく財産として家や車、預貯金等があると思いますが、実はその他にもダイヤなどの指輪や生命保険の解約返戻金など、細かい部分があとから問題になり、長期化する要因になることがあります。
逆に住宅ローン等の借金を代表とする「負の財産」についても分与対象となりますので、誰が何を負担するのか、という点もどちらも受け取りたくない部分なので長引く原因となります。例えば「家の名義人はあなた(夫)だからローンはあなたが負担し、預貯金は私が家事であなたを支えたからこそ築けたのだから、均等に半分にしましょう。」と妻が主張してきた場合、夫としてはマイナスだけを押し付けられている気がして納得出来ないと思います。
お互いに専門知識がないと「何をどう分けるべきか」の基準がないのでこういった主張のぶつかり合いになり、気づけば感情的で話し合いすら出来ない状況に陥る、ということも珍しくないのです。
親権
財産分与については主にお金の問題のため、最悪「また買えばいい」という発想も持てる可能性があります。
ですが親権、つまり子供とのこれからの生活については、絶対に替えがきかない自分の血肉を分けた人間を誰が育て、親子として生活していくのか決める問題ですので、とかく感情的になりやすく、ゆえに冷静な話し合いがしにくいです。
ともすると相手が親として不適格であることを主張する悪口の応酬になり兼ねず、最悪の場合には面会交流すら危うくなります。親権と面会交流については別記事にて詳しく解説しておりますので、気になる方は以下の記事もご確認ください。
離婚における弁護士への相談の仕方
早めの法律相談が大事
弁護士相談を最初におすすめする理由はいくつかあります。
まず1つ目の理由は、相談いただくタイミングがあまりに遅い場合は、打てる選択肢が少なく手遅れになっていることも、残念ながら少なくありません。
2つ目の理由は、相談自体は高額ではないからです。初回の相談の場合は30分無料にしている先生も一定数いらっしゃいますし、そうでなくても大抵は30分5000円が相場かと思いますので、お気軽にご相談ください。
弁護士に状況を話し、アドバイスを求める法律相談に来るタイミングは、早くて困ることはありません。離婚を検討している、離婚を切り出されたタイミングでご相談されることをおすすめします。
話を書類にまとめてからの相談がおすすめ
法律相談は初回に限り30分間無料の先生もいます。そういった機会を最大限に活かすには短い時間で要点を深堀りする必要があります。
30分間は意外とあっという間に過ぎてしまいますので、話がまとまっていないと相談が不十分になってしまいます。
見せるため、というよりも相談内容の整理のためにも予め経緯や最も揉めている点をまとめて来ていただけると弁護士としても相談に乗りやすいです。
何度か来ていただくことも珍しくない
離婚の話し合いはどんなに早くても3ヶ月は見込むので、何度か相談にいらっしゃることも珍しくないです。
話し合いが進むにつれて気になる部分は変化するものなので、可能であれば細かくコンタクトしたい先生をお探しされることをおすすめします。
まとまらない場合、その後
調停と裁判
協議で離婚がまとまらない場合は、基本的には第三者である調停委員を交えての離婚調停、裁判官を交えて判決を求める離婚裁判に進むことになります。
調停は、調停委員が方針やトピックを決めながら進めていくものではありますが、基本的には当事者間の話し合いですので、調停委員が「こうしなさい」というように何かを判断するというものではなく、両者が納得すれば離婚が成立します。
裁判は、判決まで行く場合、裁判官に納得してもらえるような理由や証拠が必要になります(法定離婚事由や相手の落ち度の証明など)。
どうすれば調停委員や裁判官に伝わる説明ができるか、結末はどうなりそうか、自分の打てる選択肢はなにか、不安な方は、早い方ができることが多いので、早めの弁護士への相談をおすすめいいたします。