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離婚の年金分割を検討すべき状況や方法について、基礎から弁護士が解説します。

離婚の年金分割は、種類がいくつかある上にルールが複雑なため、理解しづらいです。今回はそういった年金分割の基礎に加え、実際に年金分割を行うべき場合などを弁護士がくわしく解説します。年金分割ってそもそもどういう仕組み?自分は年金分割したほうがいい?年金分割をする方法は?こういった疑問をお持ちの方は必見です。

<今回ご解説いただく先生のプロフィール>

小倉 悠治(おぐら ゆうじ) 弁護士

小倉悠治法律事務所代表/金沢弁護士会 所属

 

「出会えてよかった」と言われる弁護士になれるよう心がけています。その場限りの弁護ではなく、継続的な信頼関係を信条に弁護活動を行います。

得意分野:離婚・男女問題

 

詳細はコチラ

 

 

離婚の年金分割の前提

年金分割は2つあり、「合意分割」と「第三号分割」に分けられます。

合意分割と第三号分割の大きな違い

合意分割はその名の通り、当事者間の合意が必要になります。これに対して第三号分割は当事者間の合意が必要ありません。そのため、第三号分割でトラブルになることは、ほとんどありません。

よって当記事では、問題になりやすい「合意分割」について解説していきます。

 

そもそも年金分割の仕組みとは

離婚の年金分割を解説する前に、年金分割の仕組みをご説明いたします。年金分割とは、離婚に際し、夫婦の年金保険料の払込記録を合意された按分割合に基づいて書き換える、というものです。

したがって離婚の際の年金分割で実際に行われる手続きは、婚姻期間中における夫婦の厚生年金の保険料払込記録を、夫婦が半分ずつ払ってきた、という記録に書き換えることです(按分割合が0.5の場合)。つまり、年金分割とは単純に相手の受け取る厚生年金のいくらかをもらう手続きではなく、記録を書き換える結果、最終的に受け取る年金額が変わる、というものなのです。

 

離婚の年金分割で増額の平均や利用割合

離婚後の年金分割で得られる平均金額

平成29年度の厚生労働省のデータから、年金分割利用で受給額は平均で3万円ほど増額することが分かります。

 

ちなみに表の第1号改定者は年金分割で厚生年金が減る人を示し、第2号改定者は受け取る人を示しています。

月額で3万円なので、年間で36万円となり馬鹿にならない金額です。

 

その反面、利用者は多くない

最高裁判所事務総局のデータ、「離婚時年金分割に関する事件の概況 ー平成19年4月~12月ー」によると、離婚調停に付随して申し立てられた年金分割は9.7%、離婚訴訟に付随して申し立てられた年金分割は8.3%になっています。

 

情報としては古いのですが、実際いまでも離婚時に年金分割を行う事案は多くない印象です。利用することで得られる平均額は大きいのに、なぜ年金分割はあまり利用されないのでしょうか。一つには、手続きの煩雑さに比べて、得られるメリットが見えにくかったり、意外にもらえる金額が増えないという実態があるかと思います。ただ、メリットをしっかりと知れば、将来の収入安定のために重要な制度とわかると思います。以下では、年金分割の対象や注意点等について解説をしていきます。



離婚時の年金分割の対象

対象は婚姻期間中の厚生年金のみ

「収入に対する夫婦の働きに差はない」という認識のもと、会社で働かずとも家庭を支えてきた側にも厚生年金を均等に受け取る権利があるという考えます。財産分与と同じ理屈です。逆に言えば「婚姻期間外の厚生年金は関係がない」と捉えられ、結婚前や離婚後の期間に相手が支払ってきた厚生年金の記録は対象になりません。

 

ちなみに計算については同居期間か婚姻期間のどちらで行うか、という議論が生まれることがありますが、基本的には証明のしやすさから婚姻期間で行われることが多いです。

つまり、「相手の厚生年金の半分をまるまる受け取ることができる」というのは誤解です。よくよく婚姻期間の厚生年金を計算してみたらあまり多くなさそうだからやめよう、という方も多いのではないかと思います。

 

分割は「相手の厚生年金の半分をもらうこと」ではない

年金分割は相手の納付記録半分を自分のものにする、と誤解される方がいらっしゃいますがそれは誤りです。婚姻期間中の二人の納付記録が均等になるようにする、というのが正しい内容です(按分割合が0.5の場合)。言葉だけでは分かりづらいかと思いますので、以下の図を参考にしていただけますと幸いです。

図のように二人の厚生年金納付記録が均等になるように差分を埋める計算になります。

 

つまり、婚姻期間中にお仕事をされていた方同士での合意分割は効果が低い可能性もあります。むしろ、分割を請求したら自分の厚生年金が減ってしまうようなケースもありますので、年金分割を利用しない、というケースもあると思います。婚姻期間中に働いていた方で年金分割を検討している方は注意が必要です。

よって、得られるメリットが大きい方は利用し、そうでない方は利用しない。この境目が大きい制度であることがわかります。



離婚時に年金分割を検討できる状況

相手の年収が高かった

厚生年金は収入に応じて納付額が変動します。つまり、一般的には収入が多いほど厚生年金額も高くなると言えます。

これまでの話を踏まえ、年金分割を行うかどうかは、年金納付金額が相手の方が多い場合に検討することになります。

 

そのため、相手の収入が高かった場合、年金分割で得られる利益が高くなるので、年収が高く、婚姻年数も一定期間あるのであれば分割を検討することとなります。

 

婚姻期間が長い

婚姻期間が長ければ、年金分割の対象になる厚生年金も多くなるので、そういった方は選択することもありうると思います。逆に婚姻期間が短い場合は、手続きの煩雑さと比べて、年金分割をしない方がほとんどかと思います。

分割するか決めるには、“相手の厚生年金”“婚姻期間年数”を考慮し、自分が得られる金額を算出してみると良いと思います。ただし、年金分割で得られる利益が高いから行う、というものでもないかと思います。実際には自分が受けることになる金額が有益かどうかは、どういった生活をしたいかによって判断が分かれるものです。

 

具体的な手続きは日本年金機構のホームページに詳しく記載されています。

https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/kyufu.files/0000000011_0000023772.pdf

 

離婚時の年金分割の按分割合

厚生年金を分割する方法である「合意分割」において重要なのは、「按分割合」です。

 

按分割合とは、分割対象の納付記録を書き換える際の割合のことです。通常は0.5、つまり1/2に分けることが多いです。分割した後に、両者の納付記録の額が均等になるように分けるということです。わかりやすい例は10:0の状態から相手に5を渡して5:5、9:1から相手に4を渡して5:5にするというようなものです。

 

当事者間の話し合いで合意すればよいのですが、裁判所で調停や審判によって決定することもできます。

 

離婚の年金分割の注意点

請求期限(原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内)

離婚してから2年で年金分割の時効となります。2年を経過すると、裁判所での手続きもできなくなってしまうのです。

例外として、調停や審判の手続きをしている場合があげられます。ただ、この場合でも、審判もしくは調停成立から1ヶ月以内に手続きすることが求められるので、話し合い完了後にかなり急いで手続きをする必要があります。

 

中には、裁判所における手続きだけで終わりと考えてしまう方あり、時効を経過してしまうということもあります。裁判所の手続きの後、しっかりと年金事務所で手続きをしないと、せっかく年金分割の調停等をしながら、最終的に分割ができなかったということになりますので、注意したいものです。

 

離婚時に年金分割で悩んだら

法律事務所

多くの場合、年金分割は離婚の相談に付随してなされることが多いです。そのため、法律事務所における相談で、年金分割に関してもしっかりと相談をしていただくことが一番便利です。

 

年金事務所

年金分割は年金事務所で手続きする必要があります。ですが、相手と一緒に年金事務所に行く必要があるので、その前提で揉めていたりする場合は法律事務所に相談し、代理による手続き等を依頼することも検討してみるとよいです。年金分割の手続きは複雑ですので、相談しながら手続きをされることで安心して進めていけます。

また、自分の想定している金額が間違っている可能性もあるので、年金事務所で試算してもらい、正しい金額を出してもらうことも可能です。ただし、試算ができるのは基本的に50歳以上の方のみなので注意が必要です。

 

年金分割以外で老後の安心を得る方法

財産分与の最大化

夫婦の一方の財産や収入などが低く、離婚後の経済的な自立に不安がある場合、生活費を補うような財産分与である、扶養的財産分与という方法もあります。

主に長い間を専業主婦として過ごしてきた妻に対して行われたり、高齢で離婚後の就労が困難であるという状況などを理由に利用されることがあります。

また、児童手当などの他の助成制度を視野に入れた上で、なお経済的に不安がある場合などに検討していただくとよいと思います。

 

ですが、様々な手を尽くしても離婚には経済的な不安がつきもので、それは払拭しきれない問題で、「それでも離婚がよいと思うのか」を考えることこそが真に取り組むべき問題です。いま一緒にいることの苦痛と、将来の経済的な不安、どちらを天秤にかけて重きをおくか、よく検討しなくてはなりません。

 

熟年離婚の場合、年金受給がすでに始まっていることも多いので、分割される側にとっては恐怖でしかありません。なので年金分割より、他の手段を考えるほうが話がまとまることもありますので、年金分割について考えたら、弁護士への相談を通じて他の手段を検討することも視野に入れましょう。

 

最後に先生からひとこと

年金分割は調停に持ち込めばまず間違いなく按分割合0.5を獲得できます。その意味で、将来の経済的安心を獲得するためには是非とも検討の必要な制度です。一方、年金を多く納め、婚姻期間が長い人にとって言えば、将来の収入に大きな影響のある制度と言えます。いずれにしても、年金分割単体で考えるのではなく、離婚に際して、将来の経済的自立に際しての一つの制度であると考え、離婚全体の中でベストな選択をすることが重要です。一人で悩まず、まずは信頼できる弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

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