パワハラの裁判事例とその結果を7つ、弁護士が紹介します。
今回はパワハラの事例について、実際に裁判になったものを弁護士が紹介します。6種類のパワハラにおける裁判と、裁判を起こしても認められなかった1つの事例から、実際にパワハラで裁判を行うとどうなるのか、そしてパワハラで裁判を考えたらどんなことに気をつけるべきか、見ていきましょう。

<今回ご解説いただく先生のご紹介>
松村 智之 弁護士京都弁護士会所属。親子二代で対応する松村法律事務所にて、困っている方の次の1歩目になるべく弁護活動を行う。
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パワハラ事例(1) 身体的な攻撃の事例
身体への暴力の事例として、東京地判平成17年10月4日の裁判例をご紹介します。
パワハラの内容
上司から物や手拳で何回も殴打されたり、蹴られたりした。
訴訟の結果
暴行をした上司と会社に対する慰謝料請求が認容された。
(暴行をした者が複数おり、認容額は10万円から100万円まで区々だった。)
パワハラ事例(2) 精神的な攻撃の事例
罵詈雑言など精神的な攻撃の事例として、東京地判平成20年11月11日の裁判例をご紹介します。
パワハラの内容
上司に諫言したことを発端にして、上司から繰り返し罵倒された。
訴訟の結果
慰謝料として80万円が認容された。
パワハラ事例(3) 人間関係からの切り離しの事例
職場での隔離などの事例として、東京地判平成14年7月9日の裁判例をご紹介します。
パワハラの内容
本来の担当職から、たった一人だけで行う業務に配置を変えられ、席も不自然な場所(資料置き場)に変えられ、その席に座り続けることを余儀なくされた。結果として退職に追い込まれた。
訴訟の結果
慰謝料として150万円が認容された。
パワハラ事例(4) 過大な要求の事例
遂行可能な業務量を明確に超える指示などの事例として、仙台高判平成26年6月27日の裁判例をご紹介します。
パワハラの内容
長時間労働が恒常化し日常的な叱責なども受け続け、業務量が適切に調整されなかった。精神疾患を発症し自殺に至ったため、遺族が訴訟提起した。
訴訟の結果
慰謝料として2200万円が認容された。
パワハラ事例(5) 過少な要求の事例
本人の能力と比較して著しく不相当な業務に従事させ続けた事例として、横浜地判平成11年9月21日の裁判例をご紹介します。
パワハラの内容
運転士業務に従事していた方が軽い接触事故を起こした後、上司からの指示で運転士業務ではない他の業務(草むしり)に長期にわたり従事させられた。
訴訟の結果
慰謝料として60万円が認容された。
パワハラ事例(6) 個の侵害の事例
私生活への過度な介入の事例として、横浜地判平成2年5月29日の裁判例をご紹介します。
パワハラの内容
賃借している自宅の契約更新のことで大家とトラブルになっていたが、そのトラブルに大家と知り合いであった上司が介入してきた。更に、上司は人事にも影響が出ることを示しながら、トラブルの解決を強引に進めてきた。
訴訟の結果
慰謝料として30万円が認容された。
パワハラ事例(7) 損害賠償請求が認められなかった事例
大阪地判平成25年12月10日の裁判例をご紹介します。
パワハラと原告が主張した内容
被害者は上司から度々罵られ、怒鳴られ、暴力を振るわれたと主張した。
訴訟の結果
証拠不十分で慰謝料請求が認められなかった。相手方がパワハラを真っ向から否定。
従業員にも落ち度が有るような事案で、パワハラを裏付けるための証拠もなかった。
パワハラを受けたら
なにより証拠が先決
周囲がパワハラの解決のために動いてくれるかは、証拠の有無にかかってきます。今回ご紹介した事案でも、パワハラを裏付ける証拠がなかったため損害賠償請求が認められなかったというものがありました。
まずはパワハラを証明できる証拠をしっかりと集めた上で、どのような対処をするのか検討しましょう。具体的なパワハラの対処法については以下の記事で解説しています。
弁護士に相談
パワハラを受け、自分で対処するのが難しい場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士はそもそもパワハラにあたるのかを法律に沿って判断したり、上司や会社に対して損害賠償の請求を本人に代わって行うことができます。
弁護士費用については、相談料金は初回無料〜30分5000円程度、代理を依頼する場合には合計で20〜40万円が相場です。詳しくは以下の記事をお読みください。