アカハラとは?弁護士が教育機関のハラスメントの定義や事例、解決策を解説します。
アカハラという単語を知っていますか?大学などの教育機関で起こるハラスメントのことを指す言葉で、大学教授から他の教授や助手へのハラスメントもあれば、大学教授から生徒へのハラスメントを指す場合もあります。法的な対処が可能な場合もありますので、当記事を読んでアカハラを受けているかを確認し、どんな選択肢があるか学んで解決しましょう。

今回ご解説いただく弁護士のご紹介です。
勝田亮 弁護士アネスティ法律事務所 代表弁護士平成18年10月 仙台弁護士会登録(59期)バランスを大切にした誠実な対応が得意。金融機関での数年のサラリーマン経験もあり、得意分野は多岐にわたる。詳しいプロフィールはコチラ
アカハラとは
アカハラとは、アカデミックハラスメントの略語で、法律上の定義はありませんが、大学などの研究・教育機関において、教授などがその権力を濫用して学生や職員などに対して行う嫌がらせを意味します。
アカハラは、大きく分けると、学生・大学院生に対するもの(授業を受けさせない、学位論文を受け取らない、就職活動を妨害するなど)と、職員に対するもの(昇進の差別、研究妨害など)があります。
学生・大学院生の場合は、大学などの研究・教育機関とは労働契約関係にありませんが、だからといって大学などの研究・教育機関がアカハラを放置していいということはありません。このアカハラによる損害賠償請求訴訟も提起されており、大学側でも、アカハラ防止に向けて取り組んでいるところもあります。
アカハラの言動例
では、アカハラには実際にはどんな行動が含まれているのでしょうか、アカハラの代表的な行動例を見ていきましょう。
研究室で必要機材の不当な使用禁止
たとえば研究が必要な学生に対して、必要機材が学校に備わっているにも関わらず理由なく使用禁止とすることは、アカハラにあたります。また必要機材を不当に廃棄する等の類似行為も同様です。
指導の放棄
教授として義務である指導を放棄し、生徒に適切な対応を行わないこともアカハラです。例えば、生徒が論文や研究棟にに関わる質問や確認依頼をしたにも関わらず、その対応を一切行わない等の行為です。
学生の研究論文の不正利用
研究論文に共著者として自分を入れるよう強制したり、学生の研究データを改ざんしたり、自分の研究結果として発表したりする等、研究データを不当に扱う行為もアカハラにあたります。
また、教授本人がデータを改ざんするのではなく、学生に改ざんを要求したり強要したりする行為も同様です。
学生への不当な不利益
例えば他のゼミへの転向しようとしている学生に対して、次のゼミに受かりにくくするよう教授間でネガティブなことを吹聴したり、「自分に従わないといい評価をつけない。就職に影響するぞ」等と権力を使って脅すこともアカハラです。
もちろん、不当でなく、学生にも原因が合っての処分であれば問題ないかと思います。
教授が不当に単位を与えない
「その学生が気に入らないから」等、不当な理由で単位を与えないこともアカハラです。また単位を取れなかった理由を開示しないことも同様です。
暴力をふるう
パワハラにも該当する可能性がありますが、暴力をふるう行為もアカハラにあたりえます。場合によっては刑法208条暴行罪や刑法204条傷害罪等の刑事犯罪行為にも十分なりうるため、迷うことなく信頼できる方や弁護士に相談しましょう。
学生の名誉を傷つける行為をする
ほかの学生たちの前で「ばか」「あほ」といったような暴言を吐いたり、身体的特徴をいじったり、虚偽の噂や悪評を流したりする等、学生の名誉を傷つける行為もアカハラです。
プライベートに過剰に干渉、介入する
例えば休日等の授業時間外での研究や論文作成等を強要したり、もちろん個人情報を流したりすることもアカハラにあたります。等の学生のプライベートへの干渉、介入行為もアカハラ行為にあたります。またプライベートの話をしつこく聞き出すことも同様です。個人情報を流すことももちろんNGです。
セクハラ行為を行う
胸や尻を触る、恋人の有無をしつこく聞く、デートにしつこく誘う、単位の取得と引き換えに性的な関係を強要する等のセクハラ行為もアカハラです。「男なのに」「女性なのに」といったような性別的特徴をあげて批判的な言動を行うことも同様です。
アカハラの事例
アカハラの事例(1)
県立高校のバレーボール部の顧問の教師が部活動中に部員に対して行った行為が指導の域を超えた暴言・暴行であると認定され、高校を運営する県が賠償責任を負わされた事件(前橋地裁平成24年2月17日判決)。
体育会系部活動において行き過ぎた指導行為が暴行行為となった場合、仮に保護者が苦情を言わなくても、それは行き過ぎた指導(暴行)を是認する黙示の承諾になるのではないと判断されており、顧問と生徒という完全な上下関係においては、生徒から教師に対して反論が困難であるという事情を認識した適切な指導が求められます。
アカハラの事例(2)
県立医科大学における教室主任(教授)の助手に対する兼業承認申請への押印拒否が、違法な公権力の行使であるいやがらせに該当するとされ、助手の県に対する損害賠償請求が認められた事例(大阪高裁平成14年1月29日判決)。
一審の大阪地裁は、原告が主張する個々の嫌がらせ行為があったのかについて検討し、その一部を認定、それが違法な公権力の行使にあたるとし、大阪高裁も一審の判断を支持しました。大学という特殊な環境の中における研究者相互の衝突も、その地位や行為の内容が嫌がらせ行為として、損害賠償請求の対象になりうることを示した裁判例です。なお、本件は最高裁まで争われました。
アカハラの相談窓口
各大学の相談窓口
まずは各大学に設置されている相談窓口へ相談しましょう。国立大学の場合は「一般社団法人 国立大学協会」のサイトに相談窓口一覧が記載されているので、国立大学の学生の方は一度確認してみてください。大学の窓口で解決できなかったり、大学に相談しづらかったりする場合は、外部の窓口へ相談しましょう。
例えばNPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)というNPO法人もあります。こちらの団体では、アカハラに関する講演や研修、専門相談員の紹介等を行っているNPO法人です。大学の窓口で解決できなかった場合はこちらに相談をし、第三者視点で適切な専門相談員を紹介してもらうのもひとつの手です。
アカハラの対処法がわからない場合
弁護士に相談
大学や高校の部活など、狭いコミュニティの問題であり、また、教授と学生、先生・顧問と生徒など、完全な上下関係から生じる問題なので、誰にもハラスメントの相談ができず、被害者が一人で抱え込んでしまい精神的に追い詰められてしまうこともあります。
学校によっては相談窓口を設置していたり、NPO法人でもアカハラの相談を受け付けている団体もあります。それらの相談窓口に相談し、さらに法的な支援が必要であるという場合は、弁護士へ相談してみてください。
最近では、ハラスメント問題に詳しい、あるいは積極的にかかわってくれる弁護士も増えております。弁護士の敷居は高いと思われるかもしれませんが、弁護士は相談された内容についての守秘義務を負っていますので、勇気をだして相談してみてください。きっといい解決方法を提示してくれると思います。
今回ご紹介したもの以外でもアカハラに当てはまる言動は多くありますので、「アカハラかな?」とおもわれた場合も弁護士に相談してみるといいでしょう。
先生からのメッセージ
アカハラというのは2000年くらいから出てきたと言われている言葉です。なかなか表面化しづらい問題であり、故に被害も深刻になりやすい問題です。
学校側としても、このアカハラ問題について積極的に対処しようというふうな動きも見られます。例えば東京大学ではハラスメント相談室を設け、学内でのハラスメントを積極的に解消しようと努力しています。
そういった情勢もあるので、先生や教授の言動が「アカハラかな」と悩んでいる生徒さんや学生さんは、勇気を持って学校に相談してみてください。
学校側での対応が難しい、動いてくれない、といったことがあれば、弁護士に相談されることも手段としてあります。ぜひお気軽にご相談ください。