労働 労働問題

セクハラを職場で受けたらどうする?被害者の声をもとに弁護士が解説

セクハラを職場で受けたら、声を挙げるべきでしょうか?日々上司から繰り返されるセクハラに、どうしていいかわからず耐えるのみ…。「やめてください」と言いたいけど、逆ギレや不利益な処分をされることが怖くて、なかなか言えない。職場でのセクハラは、被害者の精神を追い込む深刻な問題です。今回は、実際にセクハラを受けた男女75名に、当社独自のアンケートを実施しました。その結果をもとに、セクハラにどう対処していけばいいのかを弁護士が解説します。職場でのセクハラで悩まれているという方は、是非お読みください。

今回ご解説いただく弁護士のご紹介です。

村上 兄(むらかみ きょう) 弁護士

ATOZ法律事務所 
第二東京弁護士会 所属

難解な法律問題への対応方法をわかりやすく説明。依頼時のみならず、その後も継続して相談できるようなリーガルサービスを目指す。

得意分野は男女問題や労働問題を始め多岐にわたる。

 

セクハラが職場で発生しても我慢?

セクハラを職場に相談しない割合

今回は職場でセクハラ被害にあった男女75名に対し、セクハラにどのような対処をして、どのような結果になったのか、アンケートを取りました。

全体の結果は以下の通りです。


実に4割を超える方がセクハラに対して相談などの対応を一切行わずに泣き寝入りを余儀なくされたり、自らが転職や異動を行うなどしています。セクハラ被害を受けた3人に1人以上、という計算になります。

世間ではかなりセクハラについて厳しい目が向けられているにもかかわらず、なぜ被害者の方がこれほど声を上げづらいのか、アンケートの結果を見ていきましょう。

 

セクハラを職場に相談できない最大の理由(女性編)

自分が不利益を受けかねないから

セクハラの被害者であり、何も悪いことをしていないにもかかわらず、セクハラを相談することによって自分に悪い結果がもたらされると予想し、相談を踏みとどまるケースが最も多かったです。

下記はこの理由で相談を踏みとどまられた方のご回答内容をふたつご紹介いたします。

概要

相談をしても、社内がほとんど女社会であるため、噂が立てば嫉妬やいじめ、のけ者にされるなどのことが起こり、私の居場所がなくなるので相談はやめました。異動も考えましたが、異動をしても上司はその社内にいるため、辞めることにしました。現在はその職場を辞めてのびのびと違う所で仕事しています。

 

概要

社内に相談できる場所がどこにもなかったので、理由も言わずに異動願を出しました。

有名なセクハラ上司だったのですが、社長の親戚だったこともあり何かアクションを起こすと被害が拡大する恐れがあるので、私以外にも泣き寝入りしている被害者はたくさんいたと思います。


ひとり目の方の状況のように、職場に女性が多い場合には、余計に「このくらいのセクハラ、女性社員はみんな我慢しているし」という気持ちが抑止力になってしまいますよね。あまつさえ抵抗しようものなら、まるで自分が異常者として扱われるのでは、という恐怖も相談しようという気持ちを引き止めてしまいます。

セクハラ加害者は被害者よりも強い立場である場合が多いので、被害者の方はセクハラに抵抗することで自分の居場所がなくなったり、「むしろ自分が異動させられるのではないか」という恐れが相談を踏みとどまらせる原因の一つなのかもしれません。

 

セクハラを職場に相談できない最大の理由(男性編)

恥ずかしい

「セクハラを受けている」こと自体が恥ずかしく感じられるということもあるようです。下記は今回のアンケートにお答えいただいた男性の回答です。

概要

やはり恥ずかしいです。相談することがというか、それの被害にあったこと自体が恥ずかしくて誰にも言えず、会社から逃げました。

 

概要

デリケートな問題だったので、他人に相談することには抵抗がありました。


具体的にどんな被害を受けたのかは推測できかねますが、セクハラを受けたという感覚が、他人に相談することをはばからせるほど恥ずかしい内容であることもあるようです。

加えて男性がセクハラを受けることについての理解が進んでいない職場の場合、「セクハラは女性が男性にするものであり、男がセクハラを受けることなんてありえない」、「男がセクハラ受けたぐらいでいちいち騒ぐな」「自意識過剰なのではないか」などと言われたり思われるのではないか、という恐怖も男性がセクハラを相談できない原因になり得るかと思います。

 

一方で女性がセクハラに対して相談できない理由を考えたとき、女性の地位向上が叫ばれて久しいにもかかわらず、いまだ「女性はセクハラに耐えるべき」という考えの根っこが深く残ったままになっていたり、そもそも「この程度ことをセクハラと言ってもいいのだろうか」と悩んでしまっていることがある印象を受けます。

所属しているコミュニティの常識や自分の中での判断基準はかならずしも世間のものと一致するとは限りません。もし、不運にも職場でセクハラ被害に遭われた場合、職場の他の人のためにも、会社がセクハラ問題で取り上げられないためにも、勇気を持ってご相談していただきたいと思います。

 

セクハラを相談しても解決できない割合

残念ながら、セクハラ被害の相談を踏みとどまられた方の危惧していたとおり、セクハラが解決できなかったケースについての声も多く寄せられました。

セクハラを何らかの形で相談したと回答した人の中で、解決できなかったと答えた方は61.3%でした。

 

どのようにして解決に至らなかったのかは次のグラフの示すとおりです。


残念なことですが、相談を踏みとどまられた方の理由にも挙がっていた、「不利益を受けた」が30%弱に登り、「相談したが取り合ってもらえなかった」と同率で一位を取っています。

これらの、職場のセクハラを相談しても解決できなかったケースについて、どういった経緯があるのか回答例をご紹介いたします。

 

セクハラを職場に相談したら、自分が不利益を受けた

下記が実際のご回答頂いた内容です。

性別

男性

概要

入社当時に女上司(40代後半)に酒の席で何度もキスをされ、それを嫌がると何故か私からキスをしてきたと回りに嘘を言いふらされました。

社内で相談しましたが、すでに根回しされており熟女好きのセクハラ野郎だと言われました。

まだ若かったので法的手段は取らずにその会社はすぐに退職しました。

 

性別

女性

概要

セクハラしてくる上司よりもさらに上の立場の方に相談しました。一応その方からセクハラ上司に指導がありましたが、そのせいで今度はセクハラ上司から目の敵にされるようになりました。

周りの人が守ってはくれましたが、本当に最悪でした。

 

性別

男性

概要

セクハラを受けたのでコンプライアンス担当に相談したが、自分が閑職に追いやられて異動となり、不利益的な対応をされました。

 

性別

女性

概要

取引先の担当者と、会議室に二人きりになった時に手を握られ強引な誘いを受けた。

上司に相談したが、得意先だったために騒ぐわけにはいかず、自分が担当から外され実績も奪われた。


セクハラを受けた本来は守られるべき被害者が、何故か不利益を被ってしまうといったことは少なくないようです。

 

このような事態が発生する理由は大きく2つあり、その会社の体質と、証拠の有無かと思います。

前者の場合、仮にセクハラを相談してもまともに取り合ってもらえない、相談をして解決したとしても会社の体質改善がないため別のセクハラがすぐに発生することも考えられます。そのような場合には、弁護士等の専門家に依頼して徹底的に対抗する必要があるかもしれません。あるいは、そのようなストレスから解放され、正しく力を発揮できる職場を見つけるというのも1つの方法かもしれません。

後者の証拠に関してですが、セクハラは加害者と被害者のみの現場で行われることが多く、それ故に証明が困難なことが多いです。そのため、実際にセクハラが行われていたとしても、証拠が乏しくセクハラを立証することは厳しい状況も少なくありません。逆に十分な証拠があれば、「法的対応も含めた毅然とした対応をするぞ」という強気の姿勢をとることもできることが多いでしょう。今回のアンケートにあるような被害者に不利益が生じることを予防できる切り札にもなりますので、証拠を収集することは非常に重要といえるでしょう。

何が証拠になるのかという詳細については、以下の別記事でも詳しく解説しておりますので、気になる方はこちらもご確認ください。

セクハラの相談先とは?準備すべき証拠の種類も併せて弁護士が解説します。

 

セクハラを相談して解決できた割合

逆にセクハラを職場で相談したら解決できた、という回答も一定数寄せられました。

割合としては、何らかの形で相談された方のうち、38.6%です。どういう結末になったのか、回答をご紹介いたします。

性別

男性

概要

アルバイト先で、1人の女性社員から過度な言葉を浴びせられました。そのことを店長に相談したら主犯?の女性が異動となり、解決しました。そのバイト先では安心して過ごせるようになりました。

 

性別

女性

概要

当時、上司にセクハラ行為を受け同僚に相談した所、本社に連絡をしてくれた。セクハラ行為は日に何度もあり毎日続き私も体調不良になった。

同僚も現場を見ていたこともあり、直ぐに上司は自宅謹慎になり、その後は関東から九州へ転勤になった。会社の対応は迅速だった。


このように、きちんと対処してくれる会社も存在している、というのは救いですね。

先程述べた証拠の話に通ずることですが、第三者が証人になってくれたり、他にも被害を受けている人がいる場合には、セクハラの存在を証明しやすくなり、かつ、周囲にも悪影響が出ていると判断され、加害者やセクハラに対する適切な対応を会社が行う要因になるのかもしれません。

会社がヒアリング等の事実調査をして、きちんとセクハラに対する措置を判断するべきであることは言うまでもありませんが、自身でもセクハラの状況を認識して協力してくれるように周囲を味方につけることは大事なようです。

 

 

職場のセクハラ発言例

ここまで、割合などの全体像を見てまいりました。ここからは個別にどういったことが実際にセクハラだったのかを見てきます。

まずはアンケートでご回答いただいたセクハラ発言の内容をご紹介いたします。

性別

女性

概要

上司に仕事中に普段から「彼氏いるの?」や「あなたは私のものです」等言われていてエスカレートしてきていたので日付、内容、他に聞いていた人をメモしていました。

 

性別

女性

概要

男女の社員が大勢いる前で、具合いが悪い私に「何だ今日生理なのか…」と上司に言われ、公開セクハラをされました。一番偉い職の人だったので誰にも取り合ってもらえずモヤモヤです。

 

性別

女性

概要

女性の上司でこれまで男に負けず、バリバリやってきたキャリアウーマン(独身)で、若い新入社員に対して高圧的な態度を取ったり、口癖として「男のくせに、男らしくない、男ならできるだろ、あれは付いてんのか」などの暴言を吐いて、支店の雰囲気を悪くする上司でした。

社内通報をする部署があり、コンプライアンス部が多方にヒアリングをして、最終的に降格の人事異動になりました。

過去からそういう噂などはあったようで、通報をきっかけに本格的に調査が入るということもあります。負けずに勇気を出して、正しいことを発信する方が自分にとってきっとプラスに働くと思います。

 

性別

女性

概要

ボディタッチなどはなく、また、何も証拠がなかったのでただ笑って過ごしていました。「ホテル行ってみようか」「社内恋愛って燃えない?」など、言葉のセクハラが多かったです。

 

性別

女性

概要

私は研修のときから「浮気しない?」など上の立場の人間に言われ始め、体とかを触られはじめました。発言がどんどん気持ち悪くなってきて、「俺のために髪型やメイク変えてくれて嬉しい」「抱きしめたい」など、どんどん発言と行動の度が酷くなり無料の人権相談にメール相談しました。時系列で詳しく提示すると、労基などに取り合って監査や指導等してくれるからとりあうと言われ、その事も含めて本人に伝えたら、クビになりました。


実際に見てみると世間で想像されているよりも直接的な言葉が多いですね。客観的に文面にしてみるとこのように明確になるのかもしれませんが、セクハラ発言をしている当人は無意識に行っている場合や、被害者もその場では気づきにくいことも多い思います。

 

もしこういったセクハラ発言をされた場合、録音やセクハラ文言の記載されたメールやLINEメッセージなどのコピーが証拠になってきます。

逆に、録音やメッセージなどのコピーがあればかなり強力な証拠になりますので、セクハラを受け始めたら、ICレコーダーを持ち歩かれることをおすすめいたします。


また、セクハラが行われた場合、その日付、時間、場所、セクハラが行われるに至った状況、実際に行われたセクハラの内容を記しておくためにメモや日記を作成するのもよいでしょう。事実を細かく、きちんと記録するということは、“後付けではなさそう”という信憑性も増しますし、後で事実関係を確認する際に加害者と被害者のスケジュール等と照らし合わせてセクハラ行為が行われていたことを証明する補強材料にもなりやすい、などのメリットがあります。

 

 

職場のセクハラ行為例

発言だけでなく、職場で発生するセクハラ行為もご紹介させていただきます。ご自身が日頃悩んでいる上司の行動がセクハラに当たるのか、他の人がどう思っているのかなどの参考にしていただければと思います。

性別

女性

概要

当時の職場の上司にセクハラをされていて、具体的には後ろを通るときに肩や腰を触られる、会社の飲み会ではなく個人的に飲みに誘われる、俺の女になれと言われる。どれも、誰にも相談出来ず、その職場をやめました。

 

性別

女性

概要

すごく目をかけてくれていた(と思っていた)上司に、下心があったことがわかり鳥肌がたちました。

仕事の件で、社外で話すことになり、連れていかれた先が高級な寿司料理店で、カウンターでひたすら膝を触られました。やんわりやめてくださいと伝え一旦おさまったので、もう一件誘われた時に断れず付き合い、その後お店では何もなかったものの、帰り道に無理やりキスされて、逃げ帰りました。

 

性別

女性

概要

上司(45歳既婚男)から、仕事中に手を繋いできたり髪を触られたり、出張中の車の中で手の甲にキスをされたり、食事の誘いを断ると仕事を取り上げられたりもしました。セクハラはもちろん給与にも不満があり退職を考えていましたので、退職届けを出す際にセクハラの事を伝えました。

私が退職した後に、社内でセクハラに関する話し合い(会議)を開いて頂き、その上司は来年度係長に昇格する予定でしたが、取消になりさらに降格させられました。うやむやにせず、きちんと取り合ってくれたことに感謝しています。

 

性別

女性

概要

・わたしだけ下の名前で呼ばれ続けた
・みんなで食事に行った際、わたしだけ奢られそうになった
・わたしが出勤してる日に毎度来てはしょうもない話ばかりされた
・断っても何度もデートに誘われた
・周りの上司にわたしのことがタイプだと言いふらしていて嫌な気持ちになった

 

性別

女性

概要

前の会社の経験ですが、外回りの営業をしておりました。営業から戻ると、上司が「外回り疲れたでしょ」と言い、肩を揉みだすのです。他にも飲み会とかで手を握られたりしました。

仕方なく総務に相談しましたが、状況のヒアリングなども無く、取り合ってもらえませんでした。


発言や文言の場合は音声録音やメール等のコピーをとれば証拠として提出できたりしますし、他の人が聞いていることもあるかと思います。
ですが、身体への直接的接触の場合、
密室で行われたり、目撃者が居なかったりすることが多く、証拠も収集しにくいため、セクハラの存在を認識してもらうことができず、対処してもらえるハードルが高いようです。

実際、頭を撫でるなどボディタッチやセクハラ発言が繰り返し行われている場合、それを目撃した周囲の人から証言が得られて証明できることもあります。

それ以外のお尻をさわるなどの露骨なセクハラを証明するためには、日記やメモを付けると同時に、抵抗している様子や僅かな会話でも良いので、録音をとる等して、少しでも多くの証拠を集めていろいろな証拠からセクハラを立証できるようにしておくことが重要です。

 

 

セクハラを職場で受けたら

被害者ができること

ここまでアンケートの結果を見てきたとおり、もちろん解決できなかったというケースもいくつかありましたが、中にはしっかり相手が処分を受けたりしているものもありました。

この明暗を分けるものとしては、大きいのはその人がセクハラをしていたかどうかを証明できるか」という部分かと思います。

なので、実際にセクハラを受けた場合には“必ず”証拠を集めるとともに、可能であれば複数集めることが重要になります。

単一の証拠よりも、録音、メール、周囲の証言などの様々な証拠があれば、言い逃れができない程に立証することも可能となってきますので、「セクハラされたら証拠を集める」と考えていただきたいです。

 

加えて、気持ちの問題にはなってしましますが、やはり、「勇気を持って毅然と対応をする」ということも被害者の方がセクハラに対抗するためには非常に重要です。
そもそもセクハラが社内で行われているということを会社に理解させる必要がありますし、セクハラ加害者には「嫌がってるふりだ」「本当は喜んでいる」「自分に好意を持っているから嫌がらない」等と自分に都合よく考える人もいるので、「本当に嫌なのだ」「セクハラと感じている」ということをきちんと理解させる必要があります。

また、被害者が雰囲気を悪くしないために笑いながら拒否していたりすると、会社側も、セクハラと認識せず「あの二人は仲が良いから問題ない」と捉えてしまうこともあります。

しっかりと拒否をする、不快にしか思っていないということを明確に示すというのはそういった意味で有効なセクハラ対処方法になってきます。

 

職場でのセクハラにお悩みの方には、以下の記事もおすすめです

 

セクハラを職場で解決できるのかのまとめ

セクハラの問題はデリケートな問題なので、相談できる人も少ないと思います。まずは、証拠をできる限り収集し、会社の相談窓口やごく親しい社内の知人等に相談をして解決の糸口を探るのも1つの手だと思います。

ただ、それだけでは解決しない場合も実際にはあり、被害者である自分が精神的にも孤立してしまうことはあります。
そのようになってしまってからでは十分な対応を取っていくことも難しくなってしまうので、セクハラについて不安に感じたり、会社が十分な対応を取ってくれないと感じたら、事実上のアドバイス、法的なアドバイスを求めて弁護士に相談するのもよいと思います。

Q&Aで弁護士に相談する
よく検索されるカテゴリー
検索
インタビュー クーリングオフ トラブル ニュース モラルハラスメント 不倫 交通事故 個人情報流出 借金 債務整理 加害者 労働 労働問題 婚約破棄 時事ニュース 架空請求 浮気 消費者トラブル 男女問題 相続 自己破産 近隣トラブル 過払い金 離婚