【岡本順一弁護士解説】誹謗中傷からあなたを守る発信者情報開示請求・削除請求とは?
誹謗中傷は、その被害者や被害者の周りの人を傷つけ、最悪の場合、被害者を死に追いやることがあります。実際、芸能界でも指殺人ではないかと言われるものが発生しています。「今誹謗中傷にあっていて、誰にも相談できない」「誹謗中傷にあったときの対処法が分からない」という方はぜひご一読ください。あなたやあなたの大切な人を守る重要な助けとなるはずです。

発信者情報開示請求とは?
発信者情報開示請求とは、犯人を特定するための手続きになります。犯罪として取り締まるにしても、民事事件として損害賠償を勝ち取るにしても加害者がどこの誰であるか知らなくてはいけません。
逆に言えばオンラインの匿名環境でも適切な手続きによって加害者が特定できる場合があることを意味します。
プロバイダ責任制限法とは?
発信者情報開示請求については特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆる「プロバイダ責任制限法」と言われる法律です。以下「プロバイダ責任制限法」と表記します。)第4条にて定められています。
プロバイダ責任制限法第4条
(発信者情報の開示請求等)
第四条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
2 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
3 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
4 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。
出典:e-Gov法令検索「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)第4条」
加害者が誰か特定できていない場合には、この発信者情報開示請求をインターネットプロバイダとコンテンツプロバイダに対して行い、加害者の使命と住所など「開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報」を得ることで、加害者に損害賠償請求を行うことが可能になります。
新たな被害者を出さないために、また、何より被害者の方ご自身の心の傷を少しでも癒せるように、この手続きをご活用ください。ただし、開示請求は相手のプライバシーに関わるため正当な理由が求められます。
開示請求は裁判手続きで行いましょう
この発信者情報開示請求は、被害者が直接プロバイダに対して行うことができるのですが、裁判外で行う場合は「任意開示」となってしまい、その請求にプロバイダが応じるとは限りません。より実効性のある形で開示請求を行うためには裁判手続きを行うことが重要です。
この手続きは弁護士に任せることができますし、損害賠償請求をする際も弁護士にサポートしてもらうこともできるので、一度弁護士に相談してみましょう。
警察にも被害届を出しておこう
誹謗中傷が発生した際には、警察に被害届を出しましょう。
警察は民事不介入であるため、私人間の揉め事には介入することができませんが、その誹謗中傷の内容が何らかの犯罪に該当するのであれば、刑事事件として介入することができるのです。
例えば、「○月✕日にお前を殺してやる」などの犯行予告の書き込みがあった場合は、脅迫罪や威力業務妨害罪などに問われる可能性があります。また、虚偽情報により業務を妨害したのであれば、偽計業務妨害罪に問われる可能性もあります。
このように、内容によっては警察が介入し捜査することが可能なので、迷ったら警察に被害届を出したり、相談するようにしましょう。
SNSや掲示板に削除請求をすることも可能
誹謗中傷が発生した際には、その投稿をインターネット上から削除してもらうよう、「削除請求」を行うことが可能です。
削除請求をすることで、少しでもその情報が拡散されることを防ぎ、被害を最小限に留めることができる可能性があります。
情報の伝播性から、一度投稿された情報については、すぐに拡散してしまう性質があり、また一度削除されても再度同様の投稿がなされる可能性もあるため、実効性に欠ける側面もありますが、一度検討されてみても良いと思います。
削除請求には2つのやり方があり、投稿をした当事者へ直接請求するか、その投稿を管理しているサイトの管理者へ請求するかを選ぶことができます。
投稿をした当事者へ削除請求することは勇気がいると思いますし、その請求により逆恨みされ、新たな被害を生む可能性も否めません。
そのため、可能であればサイトの管理者へ削除請求を行うようにした方が良いでしょう。
ただし、実際はサイト管理者へ削除請求をしても、その投稿を削除してもらえないことがあります。より実効性のある形で削除請求を行うために、弁護士に代理交渉やサポートをお願いするのが得策です。
実際に、弁護士に相談したことで、削除請求に応じてくれなかったサイトに投稿を削除してもらえたというケースも存在します。
誹謗中傷で悩んだり困ったら専門家である弁護士へ
誹謗中傷で悩んだり困ったら、迷わず弁護士へご相談ください。
警察に被害届を出し、対応してもらうことも勿論重要ですが、そもそもその誹謗中傷内容が犯罪として立件できないものである可能性や、被害届を出してもすぐに警察が動くことができない可能性もあります。
極力早期に事態を収束させ、被害を最小限に抑えるには、弁護士へ相談し、サポートしてもらいながら様々な対処をしていく方がより確実です。
発信者情報開示請求や削除請求、損害賠償請求など、弁護士があなたの代理人としてできることは多数あります。
特にインターネット問題の解決実績が多くある弁護士であれば、「どうすれば早く事態を収束できるか」「事件収束後も、復讐などさせないためには加害者とどのようにコミュニケーションを取っていけば良いか」などを予測した上で最善策を検討することができます。
誹謗中傷されても、「自分が悪いから」などとは思わないでください。あなたは何も悪くありません。
泣き寝入りせず、何かが起こってしまう前に、ぜひ弁護士にお頼りください。
あなたの命やあなたの大切な人たちの命を、お守りするべくサポートしてくれるはずです。