法テラスの利用条件は?無料相談や費用の立て替えができるか確認しよう
法テラスとは、国が設立した総合案内所で、法的なトラブルがあった方の紛争解決を支援する機関です。法テラスを利用するためには、法テラスが定める利用条件を満たす必要があります。今回の記事では、法テラスの詳しい利用条件や、本当に無料で法律相談ができるのか等について、弁護士が解説いたします。

「法的なトラブルを抱えていて、弁護士に相談すべきか迷っている」
「弁護士に依頼したいけれど、料金を支払えるか心配」
という方も、弁護士へ相談いただくことで、下記のようなメリット、解決法を得られる可能性があります。
・あなたが抱えているトラブルの解決策を、弁護士が分かりやすく提案してくれる。
・相手方との交渉が必要な場合、弁護士があなたに代わって交渉してくれる。
・弁護士に直接相談することで、分割払いや後払い等のご希望のお支払い方法を選べる可能性がある。
カケコムでは、あなたにあった弁護士を見つけるサービスを提供しています。
法テラスとは?
法テラスとは、国が設立した総合案内所で、法的なトラブルがあった際に解決を支援する機関です。「日本司法支援センター」の通称でもあります。
法テラスは司法制度改革の1つとして、国民向けの法的支援サービスの提供をしています。
「全国どこにいても法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現(法テラスHPより)」という理念をもとに設立されました。
法的トラブルを解決に導けるよう、国・自治体・弁護士会・司法書士会などの専門機関と連携して、サービスを提供しています。
法テラスでは何ができる?
法テラスを利用すると、下記のようなメリットがあります。本当に法テラスを利用すれば相談が無料になるのかについても、ご説明します。
情報提供を受けることができる
法テラスには、情報提供業務というものがあります。
利用者が法的トラブルを解決できるよう、解決に役立つ法制度に関する情報や各相談機関・団体(弁護士会や司法書士会など)を利用者に無料で提供します。
そのため、何かトラブルがあった際にまず法テラスに相談することで、解決の足掛かりとなる必要な様々な情報を、お金をかけず効率的に得ることができます。
民事法律扶助を受けることができる
法テラスには、民事法律扶助業務というものもあります。
これを利用すると、弁護士・司法書士への相談料や、依頼後にかかる着手金・報酬金等の費用の支払いが経済的に難しい場合に、無料で法律相談を受けることができたり、弁護士・司法書士に依頼した際にかかる相談料以外の費用についても立て替えてもらえる場合があります。
しかし、これは法テラスが定めた利用条件をクリアする必要がありますので、利用条件について詳しく知りたい方は本記事の「法テラスの利用条件について」をご参照ください。
身近に弁護士等がいない地域でも法テラスで相談できる
法テラスには、司法過疎対策業務というものもあります。
これは、身近に法律家がいない地域に「地域事務所」を設置するというもので、弁護士等がもともと不在であった地域でも、法テラスの地域事務所に勤務している弁護士へ法的トラブルに関する相談が可能になります。
犯罪被害者支援を受けられる
法テラスには、犯罪被害者支援業務というものもあります。これは、犯罪被害者に適切な支援が行われるよう刑事手続きへの関与や情報提供をするというものです。
あなたが犯罪被害者になった際に法テラスを利用することで、支援を受けることができます。
国選弁護士の選任や契約等のサポートを行ってくれる
法テラスには、国選弁護等関連業務というものもあります。
これは、刑事事件及び少年事件において、国選弁護士の選任や契約、報酬金等の支払い業務等、国選弁護人に関する業務を法テラスが行ってくれるというものです。
ただし、これは刑事事件及び少年事件に限定されていますので、注意しましょう。
本当に相談は無料で受け付けてくれるのか?
法テラスでは、経済的余裕がない方を対象として、無料で法律相談を受け付けています。
つまり、収入条件等が法テラスに規定されている利用条件に合えば、本当に無料で法律相談ができます。(ただし、1つの問題につき、3回までの回数制限があります。)
弁護士や司法書士への依頼には費用が掛かりますが、法テラスによって全体の費用(報酬、実費)の立替が可能です。
さらに、犯罪被害者となった時には、法テラスから情報提供などが行われます。
民事法律扶助制度の利用条件について
法テラスの利用を考えているのなら、まずはご自身が利用条件を満たしているかをチェックしましょう。
法テラスが提供している業務のなかで、特に利用されると考えられるのが、情報提供業務と民事法律扶助業務です。情報提供業務は、問い合わせに対して無料で情報提供を行うもので、特に利用条件はありません。
ただし、民事法律扶助業務による無料法律相談や立替制度については、前述した通り、利用条件が定められています。利用条件は以下の通りです。
- 収入が一定額以下であること(収入の要件・資産の要件)※「法テラスに定められている収入要件・資産要件について」で詳しく解説します。
- 勝訴の見込みがないとは言えないこと(和解、調停、示談等により紛争解決の見込みがあるもの・自己破産の免責見込みのあるものも含む)
- 民事法律扶助の趣旨に適していること
※参考:法テラス「無料の法律相談を受けたい」より
無料法律相談は経済的な余裕がない方を対象にしているため、収入や資産に要件が求められます。また、民事法律扶助の趣旨として、「仕返ししたい・宣伝に使いたい」といった趣旨による訴訟については援助していません。
つまり、無料法律相談を利用するには、上記の1と3の条件を満たしている必要があります。
また、立替制度を利用する場合には、上記の3つすべてを満たしている必要があります。立替制度を利用する場合は、まったく勝訴の見込みがなければ対象外となるのです。
以上の要件を満たしているのか、予めチェックしておきましょう。
法テラスに定められている収入要件・資産要件について
それでは、法テラスに定められている収入要件・資産要件について、具体的にご紹介します。
収入要件
まずは、収入要件です。収入要件は、下記の表の通りに条件が定められており、同居家族人数によって変動します。
手取月収額の基準は、申込者及び配偶者の賞与を含んだ手取月収額になります。
ただし、離婚の案件等で配偶者を相手取って争うような場合には、その配偶者の収入を合算せず、計算するようにしてください。
さらに具体的な注釈は、表の下に記載がありますので、ご参照ください。
人数 |
手取月収額の基準 注1 |
家賃又は住宅ローンを負担している場合に 加算できる限度額 注2 |
1人 |
18万2,000円以下 (20万200円以下) |
4万1,000円以下 (5万3,000円以下) |
2人 |
25万1,000円以下 (27万6,100円以下) |
5万3,000円以下 (6万8,000円以下) |
3人 |
27万2,000円以下 (29万9,200円以下) |
6万6,000円以下 (8万5,000円以下) |
4人 |
29万9,000円以下 (32万8,900円以下) |
7万1,000円以下 (9万2,000円以下) |
注1:東京、大阪など生活保護一級地の場合、()内の基準を適用します。以下、同居家族が1名増加する毎に基準額に30,000円(33,000円)を加算します。
注2:申込者等が、家賃又は住宅ローンを負担している場合、基準表の額を限度に、負担額を基準に加算できます。居住地が東京都特別区の場合、()内の基準を適用します。
※上記の表と注:法テラス「無料の法律相談を受けたい」より引用
資産要件
次に、資産要件についてご説明します。法テラスで定められている資産要件は、下記の表のとおりです。
申込者及び配偶者が、「不動産(自宅や係争物件を除く)、有価証券などの資産を有する場合は、その時価と現金、預貯金との合計額が下表の基準を満たしていることが要件(法テラス「無料の法律相談を受けたい」より)」となります。
ただし、無料相談においては申込者及び配偶者の現金や貯金額の合計額のみで判断されるようです。
収入要件と同様、離婚の案件等で配偶者を相手取って争うような場合には、その配偶者の収入は合算されません。
人数 |
資産合計額の基準 注1 |
1人 |
180万円以下 |
2人 |
250万円以下 |
3人 |
270万円以下 |
4人以上 |
300万円以下 |
注1:将来負担すべき医療費、教育費などの出費がある場合は相当額が控除されます。(無料法律相談の場合は、3ヵ月以内に出費予定があることが条件です。)
※上記の表と注:法テラス「無料の法律相談を受けたい」より引用
「政令で指定された大規模災害により被災された方」は例外的に資力基準が設けられていないことに注意
日本は災害が多く、いつ誰が災害による被災者になるかが特に分からない国です。
政令で指定された大規模災害で被災すると、例外として法テラスの利用条件である「資力基準」の対象外になります。対象外として認められるのは、「災害発生日において、災害救助法が適用された市町村に自宅や営業所などがあった方(法テラス「「政令で指定された大規模災害により被災された方」を対象とした無料法律相談」より)」です。
尚、2021年10月の段階では、対象となる災害はありません。
災害がないに越したことはありませんが、知識として覚えておきましょう。
生活保護を受けていても法テラス制度は利用できる?
法テラスの制度は、経済的に余裕がない方を対象としているものです。そのため、無料の法律相談は、生活保護を受けているときであっても利用できます。
地域によって、生活保護受給中は収入要件が引き上げられるため、確認してみてください。
また生活保護受給中については、立替金返済の猶予や免除などの申請が可能です。
猶予・免除にあたって詳細な手続きや必要書類については、利用する法テラスまで問い合わせをしてみましょう。
法テラスの無料相談制度を利用することが可能か簡単に確認したいなら
法テラスの公式HPにある「要件確認体験ページ」の項目を埋め、「判定」ボタンを押すことで、無料相談制度を利用できる見込みがあるかどうかを簡単に知ることができます。
しかし、この要件確認体験ページはあくまでも「無料相談できる可能性が高いかどうか」を判定する趣旨ですので、正確に要件を満たしているかどうか判断したい場合は、直接お近くの法テラスへ電話で確認が必要となります。
法テラスはどこにある?
法テラスは、全国にあります。例えば東京の場合、下記の地域に事務所を構えています。
- 法テラス東京
- 法テラス上野
- 法テラス多摩
- 法テラス八王子
- 法テラス東京法律事務所
- 法テラス多摩法律事務所
- 弁護士会四谷法律相談センター(指定相談場所)
- 弁護士会渋谷法律相談センター (指定相談場所)
- 弁護士会池袋法律相談センター(指定相談場所)
- 弁護士会北千住法律相談センター(指定相談場所)・・・など
東京以外の法テラスの所在地については、法テラスの公式サイトから確認することができます。お住まいの地域を確認してみてください。
天野弁護士からのメッセージ
事件を受任してから終了するまで、生活保護を受給し続けている場合、弁護士費用等の返還は免除される可能性が高いです(なお、相手方から金銭を取得した事案では、取得した金銭から弁護士費用等が回収されます)。
ですので、生活保護を受給中の方は、法テラスを利用してのご相談をお勧めいたします。
法テラスでの無料相談をご希望の方は、お気軽に最寄りの法テラスに相談申込みをされてください。