債務整理は悪いこと?種類とメリット・デメリットを解説します

借金が払えない時、わが国では債務整理という選択肢が認められています。よく借金を減額するとか借金救済制度という広告がされているものも多くは債務整理のことです。
法律で認められた権利とは言え、悪く表現すれば借金を踏み倒すような制度に感じる方も少なくないでしょう。
この記事では債務整理は悪いことではないのか?債務整理が認められた場合はどんなメリットとデメリットがあるのかを分かりやすく解説します。
・債務整理は決して悪いことではありません
・債務整理は困窮度や要望に応じて主に4つの手続きから選べます
・どの債務整理をしても借金地獄以上のデメリットはありません
債務整理を悪いことだと思ってしまうあなたへ
借りたものは返さなければいけない。それは世の中にとっての当たり前であり、債務整理を選択した方も最初は頑張って返済しようと試みます。それでも借金を返せる見通しがないから仕方なく債務整理をするのです。
世間では債務整理、特に破産のニュースが流れると「ずるい」「許せない」「情けない」という反応が見られます。その裏返しとして債務整理を「後ろめたいこと」と思っている方が少なくありません。
しかし債務整理は法律で認められた権利であり、借金を返済できない状況が必ずしも債務者のせいとは限らないものです。
予定通りに返せるなら誰も苦労しない
ご利用は計画的に、と言われても多くの人は返せる前提で借金をしています。しかしその後に経済状況の変化やリストラ、依存症や心身の問題といった予期せぬトラブルに襲われるから返済計画が狂うのです。つまり債務整理の中には「借主を責められない事情があるケース」が少なくありません。
そもそも、無制限に認められる制度ではない
債務整理には「借金を無責任に踏み倒す制度」というイメージがあるようです。しかしこの記事をご覧になれば分かるように債務整理は誰でも無制限に使える制度ではありません。例えば任意整理は相手の合意が必要です。個人再生は安定した収入が条件です。自己破産だって財産を弁済に充てることや免責不許可事由がないことが条件です。それに債務整理をしても税金から逃れることはできません。
つまり、「本当に悪いことは裁判所が許可しない」のです。「自分のケースは債務整理を認めてもらえるだろうか?」と気になった時はぜひ弁護士に相談してみましょう。まだ検討段階であればカケコム無料Q&Aで尋ねてみるのも良いでしょう。
一人で解決しようとするほど事態は悪化する
借金問題を一人で抱え込んでしまうと、結果として借金が増えて余計に債権者や周りにデメリットを及ぼしてしまいます。債務整理に後ろめたさや罪悪感がある方ほど、早い段階での相談でダメージを軽減することができます。
4種類の債務整理とメリット・デメリットを解説
債務整理とは債務を減額あるいは免除することで借金問題を解決するための方法です。
債務整理には任意整理、特定調停、自己破産、個人再生の4種類あり、生活の困窮度や債務者の要望に応じて最適な制度を選ぶことが求められます。
ただし、債務整理には債務が軽減される反面ブラックリスト掲載や財産弁済といったデメリットもあります。しっかりと比較検討し判断に迷う時は弁護士に相談しましょう。
任意整理:返済額を下げれば3〜5年以内に完済できるとき
任意整理は将来の利息をカットすることや返済期間を調整する手続きで、当事者間の話し合いによって行われます。弁護士が債務者に代わって金融機関と交渉します。
任意整理の成果は和解契約であり内容は自由と言いたいところですが、原則として以下の内容が認められるかどうかの交渉になります。
- 将来の利息はゼロ
- 3〜5年をかけて完済する
任意整理に必要なものは債権者からの合意です。逆に言えば貸主が利息をカットしても3〜5年かけての返済は無理だと判断すれば任意整理はできません。また、債務者個人が任意整理を持ちかけたとしても貸金業者や銀行がそれを受けてくれるケースは少なく、弁護士や司法書士が代理人として交渉するのがセオリーです。
任意整理のメリット
- 将来の利息がゼロになる
- 月々の返済額が減額される
- 過払金が発覚すれば返還請求できる
任意整理のデメリット
- 元本の支払いが大きいときは有効でない
- 3〜5年以内の返済ができなければ選択できない
- 信用情報機関に5年間記録される
関連記事はこちら任意整理とは?どんなメリット・デメリットがある?弁護士が解説
話し合いが難しい時は特定調停も選べる
弁護士に依頼しても任意整理の話し合いができない時は特定調停を用いることが考えられます。特定調停とは裁判所に申し立て、債権者と調停する手続きです。調停委員は債権者が出頭しない状況でも手続きを進められますが、調停が成立するためには双方の合意が必要です。
特定調停のメリット
- 任意整理と同様の成果を得られる
- 債権者が話し合いに応じなくても進められる
特定調停のデメリット
- 双方が合意しなければ調停不調となる
- 調停委員が債務整理の専門家とは限らない
任意整理・特定調停が終わるまでの期間はケースバイケースですが長くて半年が一般的です。
自己破産:債務の免責以外に解決手段がないとき
自己破産は裁判所に申し立て、債務の免責許可を得るための手続きです。免責許可を得ることができれば借金を支払う義務がなくなります。借金以外の債務についても原則としてゼロとなりますがそもそも免責されない債務と免責を許可されなかった債務は自己破産後も支払い続けることになります。
自己破産は債務整理の中でも最終手段と言える手続きで、債権者の負担が少しでも減るように必要最低限以上の財産は債権者への弁済(支払い)に充てられます。
自己破産のメリット
- 原則として債務がゼロになる
- お金が全くない人でも利用できる
- 自己破産後は一切の請求をされない
自己破産のデメリット
- 必要最低限の生活費や家財道具を除き債権者への支払いに充てられる
- 最長10年間、信用情報機関に記録される
- 免責後、7年間は再度の自己破産ができない
- 官報に住所・名前が載る
裁判所への申し立てから免責許可決定の確定まで3ヶ月から1年かかります。
個人再生:債務の返済は難しいが家や車は残したいとき
個人再生は個人が民事再生手続をすること。わかりやすく説明すると裁判所に申し立て、債務の減額を認めてもらう手続きです。こちらは任意整理と異なり、債務の元本を大幅に減額できます。個人再生を行うためには再生計画が必要で、安定した収入が求められます。
自己破産より個人再生を選ぶのは「自宅自家用車を手放したくない」場合や「免責不許可事由が懸念される」場合が考えられます。
一例として、夫婦で多額の借金を抱えた場合主たる生計者が個人再生、その配偶者が自己破産を選択します。
個人再生のメリット
- 債務を最大90%減額できる
- 持ち家を守れる
- 免責不許可事由があっても可能
個人再生のデメリット
- 手続きが難しく、費用が高くなりやすい
- 最長10年間、信用情報機関に記録される
- 官報に載る
個人再生は申し立てから手続の終了まで6ヶ月〜1年かかります。
債務整理によくある勘違いはここで解消
債務整理をためらう理由として大きいのが、債務整理に後ろめたさを感じることと「過大なデメリットがあると誤解していること」が有ります。こちらでは安心して債務整理を検討できるよう、よくある勘違いについて解説していきます。
債務整理をすると一文なしになる
債務整理をすると財産を没収されると言われることもありますが、債務整理のせいで一文なしになることはありません。むしろ債務整理は借金地獄で苦しむ方が一文なしにならないよう守るための制度です。
まず任意整理では財産を没収されることがありません。特定調停も同様です。
次に個人再生や自己破産では可能な限りの財産を売り払い債権者への支払いを求められることもあります。ただし生活に必要な家財道具や99万円以下の現金を奪われることはありません。もちろん、個人再生や自己破産はお金に余裕がほとんどない状況での弁護士利用となりますから弁護士費用も分割となることが一般的です。
ブラックリストに載ると二度とクレジットカードを使えない
債務整理をするとブラックリスト入りしてクレジットカードを作れなくなりますが、永続的なものではありません。
信用情報機関は3つあり、組織によって任意整理なら5年、個人再生と自己破産ならその事実が5〜10年間掲載されます。
逆に言えば最長で10年間過ぎれば債務整理の情報は消えます。それが終わりの見えない借金に苦しむデメリットと比べてどうか?という部分を考えましょう。
債務整理の事実が家族や会社にバレてしまう
債務整理の事実が直接家族や会社に通知されることはありません。そのため債務整理の事実が容易にバレるというのは嘘です。ただ任意整理の事実が公開されることはない一方で個人再生と自己破産をした場合は官報にて公告されます。官報は誰でも閲覧できる一方で、積極的に閲覧する理由が少ない刊行物でもあります。官報をご覧になったことがある方はほとんどいないのではないでしょうか。
そのため官報に載ったからといって、家族や会社にバレる可能性は少ないと考えて良いでしょう。
会社をクビになったり結婚できなくなったりする
債務整理で会社を解雇されることはありません。そもそも会社での行いと自己破産は関係が薄いため解雇の理由として不適当と考えられます。
債務整理をしたからと結婚できなくなることもありませんし、職業制限や年金・生活保護での制限もありません。
ネットにはいろいろな情報があるものの、必ずしも正しいと言えません。どうしても気になる疑問があるときはカケコム 無料Q&Aよりお問い合わせください。
債務整理を弁護士に相談すべき理由
債務整理を弁護士に相談すべき理由は、手続の難しさと迅速な解決が期待できることです。
弁護士が受任通知すると取り立てが止まる
弁護士に債務整理をお願いした場合、弁護士はあなたの代理人になります。つまり債権者はあなたの代わりに弁護士へ取り立てなければいけません。その証明として債権者に送られるのが受任通知です。
受任通知を受け取った債権者は債務者に対する支払督促や、差押の手続ができなくなります。これだけでも、債務者の心理的負担は大きく軽減します。
複雑な手続きでも迅速に解決できる
債務整理は借金の記録を集め、利息を計算し、債権者と交渉するのが基本です。さらに個人再生であれば再生計画の作成が求められ、自己破産も書類作成が面倒です。
そのため債務整理は基本的に弁護士が書類作成や裁判所での手続きを代理します。やはり知識と経験を備えた人間に任せると手早く効率的な解決が期待できます。
まとめ
債務整理には任意整理・特定調停・自己破産・個人再生という4つの手続があります。どれも債務の負担を減らすために有効な手続で、債権者や裁判所の許可が条件となります。
まずは、あなたの債務整理が認められるかどうか?弁護士に相談してみましょう。