パワハラを訴える!そのために必要な準備と相談先を知りましょう

パワハラ(パワーハラスメント)は自らの地位を利用し、相手の心身を傷つけ尊厳まで踏みにじる行為です。道徳的には決して許されないものの簡単に訴えることができないのも法律の難しさです。
こちらではあなたを傷つけた相手をパワハラで訴えるとき、どこに相談すれば良いのか?どうすればパワハラした相手に勝つことができるのかを紹介します。
・パワハラの全てが慰謝料請求の対象になるわけではない。
・パワハラを認めさせるには証拠が必要。
あなたが受けたパワハラ、慰謝料を得られますか?
人から嫌がらせをされた、会社から不利益な扱いを受けた。人生の中で誰もが多少の摩擦を経験していくのは当たり前のことです。そうである以上、パワハラを訴えたいという背景には毎日をやり過ごすには到底耐え難い苦痛があったものと思われます。どんな常識や価値観があなたの周りにあっても、慰謝料請求の可否は法的な正しさで決まります。
そのため、あなたがパワハラを訴える基準の一つが
パワハラする上司や会社を訴えたら慰謝料を勝ち取れるだろうか?
という点です。
パワハラとの向き合い方や対策はいろいろありますが、パワハラが法的紛争に発展した場合は慰謝料をめぐる争いになることがほとんどです。
法律と照らし合わせてどうか?似たような判例や和解事例はあるか?パワハラをめぐる争いの経験が豊富な弁護士ほど様々な事案を知っています。きっとあなたの力になってくれるでしょう。
パワハラの定義は?
職場で問題となるパワハラの定義は次の3つで、この全てを満たすことがパワハラを訴える前提です。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害される
パワーハラスメントというからには、抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を経背景にするということが要件になります。同じ立場や逆の立場であれば抵抗や拒絶ができるにもかかわらず立場の差を利用して相手を痛めつける行為がこれにあたります。もちろん、上司は上司で労働法に守られているわけですから部下の上司に対するパワハラも成立する場合があります。
しかし立場を利用した言動とはいえ叱責や指導が業務上必要かつ相当な場合もあります。その範囲を超えた場合がパワハラと認められやすいです。
そして労働者の就業環境が害されていること(当該言動によって、労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、労働者が就業する上で見過ごすことのできない程度の支障が生じること)。上2つの基準を満たしていても就業環境が一切害されていないのであればパワハラと認められません。ただしこの基準は平均的な社会一般の労働者です。
これらの基準をみて、ご自身の職場のことで納得いかないと思うなら法的手続きを検討すべきです。
パワハラを訴える!誰を?どこに?何のために?
パワハラを訴えるなら自分を直接傷つけた人間だと思う気持ちはわかります。しかし、場合によってはそれが最適な解決とは限りません。誰を、どこに、何のために訴えるかよく考えましょう。
個人のほかに、会社を訴えることもできる
パワハラをした個人は当然、あなたにとっての加害者になります。しかし、会社には職場環境を守る義務があるわけですから加害者だけでなく、安全配慮義務を怠ったとして会社を訴えることも可能です。個人と会社両方を訴えてどちらからも慰謝料を勝ち取ったケースもあります。(誠昇会北本共済病院事件)
本気で訴えるなら弁護士に相談
パワハラを相談する先としては以下のものが考えられます
- 社内の相談窓口
- 無料の電話相談
- 労働局
- 弁護士
社内にハラスメントの相談窓口が設置されている場合はそこに相談して解決することもあるでしょう。しかしそれでは解決しないからこそ訴えるという結論になったのだと思われます。また、電話相談でも気持ちを聞いてもらう以外のことはできず労働局は会社への指導勧告にとどまります。
つまり会社と直接戦うためには自分で行動するしかありません。その代理人となれるのが弁護士なのです。パワハラによって失われた権利を回復したいなら弁護士へ相談しましょう。
パワハラで争いとなるのは慰謝料です
パワハラは民法第709条における不法行為と労働契約法第5条における安全配慮義務が争点になります。簡単に説明すると不法行為とは契約関係にない相手から損害を被ることであり、安全配慮義務とは生命身体などの安全性を会社が守る義務です。
パワハラした相手は不法行為で、会社は安全を配慮する義務が契約で発生しているから安全配慮義務違反で対処します。
どちらも請求するものは損害賠償ですがパワハラにおける損害は精神的苦痛であることが多いです。
この精神的苦痛を贖うためのお金こそが「慰謝料」なのです。時には数10万円、時には1000万円を超えることもある。パワハラを訴える難しさは損害額の曖昧さにもあります。
その他身体的な損害や、客観的に証明できる精神的損害が見られる場合はそれらも賠償請求の可能性があります。
法的紛争は復讐の道具ではない
辛い出来事があった時、復習したい、相手にダメージを与えたいと考える気持ちはよくわかります。その良し悪しは別として法的紛争は相手を打ち負かす道具ではなくあなたの権利を勝ち取る場です。
法的に許された戦い方をする限り弁護士はあなたの力になります。
パワハラを訴えるために必要なのは事実と証拠
パワハラを訴えるために必要なものは事実と証拠です。あなたが屈辱的な扱いにどれだけ苦痛を感じたとしてもその事実を証明できなければ一銭の慰謝料も得ることができません。こちらでは上司や社長を訴えるための準備について紹介します。
パワハラの事実はあるか?
パワハラの事実がないことには慰謝料請求が困難です。もう一度パワハラの定義をおさらいしましょう。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
- 労働者の就業環境が害される
この3つが全て揃っているときにパワハラと認められます。
慰謝料請求できるレベルのパワハラなのか?
パワハラは範囲が広く、例えば以下のような行為がパワハラに該当する可能性があります。
- 殴る蹴るといった身体的暴力
- ものを投げられた
- 大勢の前で馬鹿にされた
- 執拗に悪口を言われた
- 仲間はずれにされ続けている
- 職種からは考えられない仕事を押し付けられる
このような行為の存在や態様によって「慰謝料が認められるほどのパワハラである」と証明しなくてはいけません。
その証拠でパワハラの事実を立証できるか?
パワハラの事実を証明するためには、証拠が必要です。どれだけ強く訴えても証拠がなければ誰もそれが本当だと判断することができません。
パワハラは言動によって行われます。したがって、まず証拠として役立つのが音声記録です。いつ、どこで何を言ったのか?それを客観的に証明できるのは事実認定に有力です。ボイスレコーダーを使って録音しましょう。ボイスレコーダーを持っていない人もスマホでの録音が可能です。映像記録を得ることは難易度が高いです。
ただしボイスレコーダーを用いた録音は対面かつ自分に対する言動であることが求められます。加害者と第三者の会話を盗み聞きすることはプライバシーの侵害になる可能性があるので慎重に行いましょう。
一つテクニックとして挙げるなら、具体的な単語を引き出すことです。
その他、仲間はずれにされたときはそれが社内の記録や領収証などで残っていないか探しましょう。具体的な身体的損害や精神的損害がある場合は診断書が何より有力な証拠になるでしょう。
いずれも時間と場所と人間が特定できることが求められます。
証拠が足りない時はどうするか?
証拠が足りないときも、粘り強い収拾が求められます。パワハラは一過性のあるものより断続的であるものの方が重大性が高いと判断されやすいです。独力ではどうしても難しいというときはハラスメント問題に詳しい弁護士への相談がおすすめです。
パワハラをどんな手段で訴えるか紹介
パワハラの証拠が揃ったらどんな手段で訴えるか考えましょう。ここでは示談・労働審判・訴訟について紹介します
示談
会社と直接話し合って慰謝料の支払いを決めることを示談交渉と言います。交渉がまとまらなければ裁判所へ訴えることとなりますが勝ち目のない事件ほど裁判が相手の不利益になり得ます。したがって、裁判へ持ち込むより和解で片付けた方が早いという判断になる場合があります。
このとき有利な条件で迅速に決着できるかどうかは交渉力次第です。労働者と使用者の場合は対等な交渉すら難しい場合も珍しくありません。できれば毅然と会社を相手に話し合える弁護士に委任することが望ましいです。
パワハラが軽度であれば職場環境を改める方向で解決する場合もあり得ます。
労働審判
裁判所に申し立てる手続きとして、まず労働審判があります。労働審判は労働審判委員会が間に立って行われる調停ですが訴訟に比べて短い期間で決着することがメリットです。オンラインでの参加も可能です。
ただし調停である以上、お互いの合意がなければ不調となり訴訟へ移ります。
訴訟
訴訟を申し立てる場合は可能な限り弁護士へ依頼しましょう。示談や労働審判以上に事実認定が厳格に行われるからです。長期的な審理が行われる点も負担となるでしょう。
本当にプラスの結果を得られるかどうか、その見極めも問われます。
まとめ
パワハラを相談できる機関はいくつかあります。しかしパワハラで受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求するとなればあなた自身が主体的に行動するほかありません。その時間的、精神的負担は大きなものになるでしょう。弁護士は法律事件の受任及び代行ができる法律資格です。
対等に向き合うことが難しい会社や上司が相手の時こそ力強い味方になってくれるはずです。