親子でも贈与税!?課税される場合とされない場合を解説
親子間ではお金のやり取りが当たり前のように行われます。しかし、贈与に税金がかかる以上親子間のやり取りも贈与税の対象になるのでは?と気になるもの。
親子間の贈与はいつ発生するのか?結局払わなくて良い場合はどんなときなのか?弁護士の伊奈さやか先生に解説いただきます。

たとえ親子でも贈与税はかかります!
親から子どもへ財産を渡すことは、とても自然なことですが、個人から財産をもらったときにかかるのが贈与税です。よって、たとえ親子であっても、財産の受け渡しがあったときは、贈与税がかかります。
「子育て」は例外的に贈与税を課されていないだけ
一方、親が子どもを育てるのは、法律上の義務です。また、親族間には扶養義務もあります。
ですので、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものについては、贈与税の対象外となっています。
つまり、例外的に贈与税が課されないようになっています。
このような場合は、しっかり贈与税の計算を
お小遣い・仕送りの金額が高額である
前に述べた通り、生活費や養育費については贈与税がかかりません。しかし、渡される金額が高額の場合、生活費や養育費の範囲を超えたものとして、贈与税の対象となる可能性があります。
いくらからなら高額という基準があるものではないですが、注意しておいたほうがいいでしょう。
保険金の受取人に子が設定されている
親が保険料を負担していた保険の、満期金や解約金を子どもが受け取った場合、贈与税の対象となります。
なお、親の死亡保険金の受取人に子どもがなっている場合で、亡くなった親が、保険料も支払っていた場合、つまり被保険者と保険料の支払者が同一の場合には、贈与税ではなく相続税の対象になります。
不動産を譲り渡した
不動産を親から譲渡された場合も贈与税の対象となります。
ただ、下記に述べるように、一定の控除制度があります。
借金の肩代わりや免除をしてもらった
親に借金を肩代わりしてもらったり、親からの借金について免除してもらったときは、贈与税の対象となります。
親子間で贈与するときのポイント
必ず書面に残しておく
贈与の事実を残すために、贈与契約書を残しておくのは必須です。
これにより、贈与の事実が明確になります。
とくに、預金を贈与したような場合は、単に子ども名義の預金に貯金しただけといういわゆる「名義預金」ではないかと疑われる可能性もあるので、贈与契約書を残しておくと、このように疑われる可能性は低くなります。
非課税で利用できる制度を使う
①贈与税の基礎控除である110万を利用する。
贈与税は1年間に贈与された金額が110万円以下の場合は非課税です。
ですので、贈与税の対象となるような譲渡行為をする場合、金額を110万円以下にすることは一つの方法です。
②相続時精算課税制度を利用する。
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に、2500万円までは贈与税がかからないという制度です。
ただし、実際に相続の際には、相続財産として付加されるので、相続財産の金額や相続人の人数等によっては、相続時に相続税が発生する可能性はあります。
ですので、これを利用する場合は、相続の対象となる財産、その財産が今後値上がりまたは値下がりする可能性等を考慮して、慎重に検討したほうがよいでしょう。
③住宅資金贈与の制度を利用する。
住宅資金贈与の制度は、父母や祖父母などから、自分の居住用の住宅購入や新築等の費用に充てるための金銭を譲渡してもらった場合に、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となる制度です。
この制度は、住宅の床面積等の制限もありますので、実際に当てはまるかは税理士や税務署に相談するなどして確認したほうがよいでしょう。
④「教育資金の一括贈与」と「結婚・子育て資金の一括贈与」の特例制度を利用する。
これは、直系尊属(親や祖父母)から、一括して教育資金の贈与を受けた場合は1500万円まで、結婚や子育て資金の贈与を受けた場合に使える特例制度です。
方法としては、金融機関と資金管理契約を締結する等の条件が多くありますので、使う際には事前に利用できる金融機関に問い合わせるほうがいいかと思います。
相続税と贈与税を両方計算する
相続税においても基礎控除があります。
生前贈与を検討する場合は、贈与税の金額と、相続税の金額、ともに計算してみることもいいでしょう。
難しい場合は弁護士や税理士に依頼したほうがいいかと思います。
伊奈先生からのメッセージ
親子間の贈与については、死後、他の相続人との間で特別受益として、遺産分割協議のときに紛争となることもあります。
税金について知識をもっておくことも大切ですが、遺産分割や、死後の遺留分侵害額請求に備えて、弁護士に一度相談してみるのもいいかと思います。