婚約破棄の慰謝料を請求された!必ず支払わなければいけないの?
婚約破棄で慰謝料は発生するの?と思われるかもしれませんが、時には慰謝料を支払うべき場合もあります。その一方で、慰謝料を支払わなくて良い場合もありますので婚約破棄の際には慰謝料に係る「なぜ」を知っておきましょう。この記事では婚約破棄の慰謝料請求についての基礎知識を紹介します。

そもそも、婚約とはどういう状態なのか?
そもそも婚姻とは、結婚することを当事者両名が予約した状態をいいます。
婚約については、民法に定めはありません。
当事者の誠意ある約束で成立するとした判例もありますが、妊娠していた事例でしたので、様々な事情から主観を推測したものといえます。
「そもそも婚約していない」で決着がつく場合もある
上記のように、そもそも婚約が成立していたかどうかが争点になります。
主観の立証は難しいので、結納をしたり、婚約指輪を買ったり、双方の両親の顔合わせをしたなどの、客観的な事実がある場合のほうが、婚約は認められやすいといえます。
単に性的な関係があるだけでは認められないと考えます。
ですので、そもそも婚約自体がみとめられないこともあります。
婚約破棄が無効になることはない
当然ですが、婚約破棄にあい、慰謝料をもらうからといって、婚約破棄が無効(なくなること)になり、再び婚約状態に戻るわけではありません。
慰謝料は、婚約を破棄されたことによる精神的な苦痛に対して支払われるものでしかなく、当初から破棄されなかったというような効果は生じません。
婚約破棄の慰謝料を払わなくて良い場合
婚約破棄(婚約解消)したことについて、自分に帰責性がないか、相手の帰責性のほうが大きい場合は、慰謝料を支払う必要はありません。
また、破棄ではなくて、双方で話して合意し婚約を解消する場合にも慰謝料を支払う必要はありません。
法定離婚事由に準ずるもの
法定の離婚事由としては、不貞行為、悪意の遺棄、強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき、等があります。
相手が浮気したため、こちらから婚約を破棄した場合や、回復しがたい精神病に相手がかかったので破棄した場合には、慰謝料を支払う必要はないでしょう。
重大な事実についての虚偽
重大な事実を隠されたまま婚約し、その後事実が発覚した場合、隠されていた側から婚約を破棄しても、慰謝料は支払う必要がない例も多いでしょう。
ただ、この場合は、何が重大な事実に該当するかが争点になると思います。
また、それが婚約を解消、つまり婚姻をしないほうがいいほど重大である必要もあります。
経済状況の悪化
経済事情の悪化により、婚姻しても生活が難しい、というような場合には、婚約を破棄しても慰謝料を支払わなくてもよい、となる可能性があります。
しかし、昨今においては、夫婦共働きも増えており、単に経済状況の悪化でも、もう片方の収入で家庭生活が維持できるような場合も想定できます。このようなときでも、経済状態の悪化を理由とする婚約破棄について、正当な事由が認められ、慰謝料が発生しないことになるのかは、わからないというのが正直なところです。
著しく社会常識を欠いている
著しく社会常識を欠いているような場合に、婚約破棄に正当な事由があると認めた判例もあります。
この判例の事案を見ると、単に社会常識がないのみではなく、婚約者への誠実な態度がなく、他の事情を総合考慮したうえでの結論と思われます。
ですので、実際には、社会常識がない、というのみでの婚約破棄が、正当な事由になる可能性は高くないといえます。
性交不能
性交不能の場合は、婚約破棄が認められます。
離婚原因としても、性交不能が認められているからです。
結婚すると貞操義務が生じ、配偶者以外との性交渉が違法と判断されるため、その配偶者と性交ができないのに離婚もできないとなると、かなりの悪影響が生じるからです。
逆に、婚約破棄の正当な理由として認められづらいもの
婚約破棄の正当な理由として認められづらいものとしては、単なる性格の不一致、趣味の違いがあげられます。
一方、婚約破棄の正当理由は一つではなく、複数の事情を総合判断している判例が多いので、単なる性格の不一致とあるが、その原因はどこにあるのか、ほかにも婚約を継続するのが難しいという事情があったのであれば、それを総合考慮して破棄に正当な理由があると認められることもありえると思います。
婚約破棄の慰謝料相場と請求された場合の対処法
婚約破棄の慰謝料相場
婚約破棄の慰謝料相場については、おそらく50万円から300万円だと思います。
交際期間、関係性、妊娠や中絶の有無、精神疾患への罹患などの事情により決まります。
判例では、妊娠や中絶、出産、これに伴って原告が精神疾患に罹患した、という事情がある例が多くみられます。
なお、離婚の場合でも、慰謝料は300万円前後と思われ、しかも、婚約期間は結婚している期間よりも短いのですから、婚約破棄の慰謝料は離婚よりも低額になる例がほとんどだと思います。
慰謝料請求された場合の対処法
慰謝料を請求された場合には、まず話し合いが可能であれば話し合ってください。
話し合いが難しい、話し合っても平行線、というような場合には、弁護士に依頼して交渉や今後の法的手続きへの対応を任せる方法があります。
弁護士はどのように対応してくれるのか?
依頼者に代わって話し合ってくれる
弁護士は依頼者の代理人となって、紛争の相手と交渉します。
弁護士も、話し合いで解決できるのが一番よいと考えていますので、交渉が成立するように工夫します。
ただ、交渉段階で無理な要求がされた場合には、交渉を打ち切ったほうがいいと、依頼者に提案することもあります。
正当性が弱い婚約破棄については減額交渉
請求されている慰謝料の金額が、実際の事情を考慮してみると高いというような場合、つまり正当性が弱いような場合には、慰謝料の減額交渉をします。
また、支払う余裕がないような場合も、減額交渉をします。支払えない金額で約束するのは、どちらにとっても不幸な結果になるからです。
訴訟手続きの代理人としてサポート
交渉しても合意に至らないような場合には、訴訟等の法的手続きに移行する可能性があります。
その場合は、弁護士は訴訟等の代理人として活動します。
- 実際の事情を、証拠や依頼者の話から救い上げる
- 事情を法的な要件に組み込んだ書面を作成する
- 裁判所に出頭する
- 訴訟等の進行により、裁判所から和解案が提示された場合は、和解案について調整する
というようなことを弁護士は行います。
まとめ
婚約破棄は、もしかすると、離婚するよりも精神的なショックが大きいかもしれません。
明るい将来がなくなり、人生の大きな挫折のようにとらえがちです。
ですから、婚約破棄直後は気が動転していることも多く、すぐには動けないこともあるでしょう。
落ち着いてからでもいいですし、または、そのような中で自分の今後の行く道を検討するために、相手に請求できることを弁護士に相談しておくという方法もあります。
一方、婚約破棄をしてしまった場合には、すぐに弁護士に相談だけはしておいたほうがいいと思います。
後先考えずにしてしまった場合には、破棄直後であれば、謝罪や話し合いによって、再度婚約状態に戻る可能性もあります。
また、よく考えて婚約破棄した場合でも、相手がその理由に納得するには時間がかかることもあります。その間、弁護士に依頼して対応をお願いするという方法もあります。
弁護士が対応できる方法はいくつもありますし、また、慰謝料額については、個別のケースにより判断が異なりますので個別に相談したほうが具体的な解決策が浮かんでくると思います。