振替休日と代休の違いを知らずに労働法違反していませんか?
就業規則で休日を決めていても、いざという時に休日出勤させざるを得ないことがあります。そのような場合に振替休日や代休を設定することで無用な出勤を防ぎ、労働者の健康を守れます。
しかし、振替休日と代休の扱いを間違えると給与計算にずれが出ます。
この記事では間違えやすい振替休日と代休の違いと休日労働をめぐるトラブルの対策について紹介します。

・振替休日と代休の違いで割増賃金が変わる
・振替休日には一定の制限がある
・振替労働中に発生する割増賃金はしっかり払おう
振替休日と代休の違いは?どのように賃金計算される?
振替休日と代休については、明確に定めた法律はなく、行政通達などで一般的な考え方が示されています。振替休日と代休はどのような違いがあるのでしょうか?
振替休日
振替休日は、 あらかじめ「休日と定められていた日」を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることをいいます。これにより、休日と定められていた日が「労働日」となり、その代わりとして振り替えられた日が「休日」となります。
そのため、本来休日であった日に労働させた場合も「休日労働」とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。
代休
代休とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みにすることをいいます。つまり、前もって休日を振り替えたことにはなりません。そのため、休日労働をしたことは変わりなく、企業は休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。
振替休日と代休の違いは?
「休日に働いた分を、代わりに休めるようにする」という点で、振替休日と代休が持つ意味は共通しています。両者の違いを説明するうえでは、「あらかじめ休日を定めているかどうか」が重要なポイントになります。
事前に従業員が休日に出勤しなければならない状況を見越して、「今度の休日に出勤してもらうけど、その代わりこの労働日は休みにしてください」という場合は振替休日です。つまり、休日と労働日の交換に過ぎませんから、本来の休日に出勤しても休日労働にはならないのです。
一方、あらかじめ休日を定めていない場合は代休になります。「休日労働をした代わりに、どこかの日で休みを取ってください」というように、休日労働が前提になっています。
こんな場合は振替休日にできる?よくある注意点を紹介
割増賃金の支払いをする必要がないという点で、企業にとっては代休よりも振替休日を使ってもらった方が有利です。振替休日を設定するうえではどのような点に注意するべきでしょうか?
振替休日と振替労働の日にちに開きがある
労働基準法には、振替休日の取得期限についての規程はありません。
しかし、振替休日は「休みを取る権利」であることから、同法115条で定められている「賃金その他の請求権の時効」の条項が適用されます。ここでは、「賃金の請求権を除く請求権については、2年間行わなければ時効によって消滅する」と記載されています。
つまり、振替をした日から2年間以内であれば、どこに休みを設定しても法律上は問題がないということです。ただし、賃金計算の関係上、多くの企業では1ヶ月以内に振替休日を取得する場合が多いようです。
休日出勤してほしいけどいつ振休にするか決めなかった
休日出勤をしたあとに振替休日を設定することはできません。このような場合は代休として扱われます。
代休の場合、休日出勤は「休日に出勤した(=法定休日出勤に対する割増賃金が発生する)」ものとして取り扱われ、代わりとなる休日は「勤務日に休んだ(=勤務が免除される)」ものとみなされます。
振替休日の代わりにに有給を取りたいと言われた
従業員によっては振替休日ではなく、有給休暇の取得を希望する人もいます。従業員にとっては、休日労働もして有給も取得すれば、もらえる賃金が多くなるという点がメリットです。
ただし、有給休暇は「労働日における労働の義務が免除される」意味を持ちます。あらかじめ定めた振替休日には労働義務がありませんから、有給休暇の取得は理論上不可能です。もちろん、振替休日を定める前に有給休暇の申請があった場合、企業にはこれを妨げる理由はありません。
振替休日なら割増賃金が発生しない?それは誤解です
上述の通り、振替休日は「労働日と休日を交換する」ということ。振替休日を設定すれば休日労働として扱われないため勘違いされがちですが、振替休日であっても割増賃金が発生する場合があります。
例えば、法定労働時間(1日8時間、週40時間以内)を超えてしまった場合です。この場合、休日労働に対する割増賃金は支払う必要が無くても、時間外労働に対する割増賃金は支払わなくてはなりません。同様に深夜割増賃金も支払う必要があるため、注意しましょう。
社員の休日出勤で余計な人件費を払わないために
振替休日を設定するためには、あらかじめ事業の繁閑や、従業員の勤務状況を把握している必要があります。休日出勤が多くなるとそれだけ企業の賃金負担も大きくなりますから、先を見据えた労務管理が重要になります。
管理システムの導入
従業員数が多い場合や、繁閑の差が激しい場合には、人間の手作業で勤怠を管理するのは限界があります。適切な管理システムを導入し、法律を遵守した正しい勤怠管理を行いましょう。
最近では多種多様な勤怠管理システムが登場しており、手作業でミスが発生しやすい労働時間の集計や有給休暇日数の管理のほか、法定労働時間超過した場合のアラートなどの機能が搭載されています。
残業時間の予定と実績の差異を分析することで、残業を未然に防ぐことができるサービスもあるので、自社の働き方に合ったシステムを導入すると良いでしょう。
マネジメント体制の刷新
全ての従業員が現場にかかりっきりになっている状況では、職場の全体像や働き方の全容を把握することはできません。休日出勤など不測の状況が発生しやすい職場では、勤怠管理のルールを徹底し、権限を持ったマネージャ―を配置しましょう。
システムの管理・運用を含め、マネジメント業務を労務管理業務に精通した社会保険労務士に外注するというのも選択肢のひとつです。
法律トラブルを予防するなら弁護士に相談
振替休日や代休は、混同して認識している労働者も多く、企業担当者でもとっさの判断ができない状況も少なくありません。そのため、割増賃金の有無や勤怠の不公平性など、労使間のトラブルが発生しやすい項目でもあります。
こういったトラブルを防止するためには、就業規則で諸々のルールを定め、現場レベルでしっかりと把握することが大切です。ただし、職場によってさまざまな状況が想定されるため、あらかじめ弁護士などの専門家に相談しておくと対策が講じやすいでしょう。
まとめ
振替休日と代休の違いを曖昧にしておくと、同じ働かせ方をしているのに却って割増賃金が増えてしまう可能性があります。
企業の労働法違反の中で得に気をつけるべきは、知らなかった、大丈夫だと思っていたという事例ですから、理解が不十分な制度については弁護士に判断を仰ぐことが望ましいです。