離婚してくれない配偶者と離婚するには?合意なしでの離婚は可能?
何度も離婚話をしているのに、一向に離婚してくれない配偶者。あなたがどれだけ離婚をしたいと伝えても、相手が同意しないことには離婚は成立しません。
離婚してくれない配偶者と離婚するにはどうすれば良いのでしょうか?
この記事では、離婚してくれない配偶者はなぜ離婚してくれないのか、その心理を理解した上で、離婚を納得させる方法、それでも離婚してくれない場合の対処方法について解説します。

離婚してくれない相手は何を考えている?よくある心理について
夫婦関係はもう破綻しているのに、離婚してくれない。離婚に同意しない配偶者は、なぜ離婚しないのでしょうか?
ここでは、配偶者がなぜ離婚したくないのか、その理由について考えてみたいと思います。
あなたへの愛情をまだ持っているから
あなたの気持ちがどんなに離れてしまっても、相手があなたへの愛情をまだ持ち続けているのであれば、離婚したくないと思うでしょう。
結婚生活を送るうえでは、日々様々な問題が起こります。あなたにとって、そうした問題は重大問題と捉えても、必ずしも相手は同様に捉えているとは限りません。反対も然りです。
配偶者にとっては、あなたが離婚を考えているなど思ってもみなかったことなので、なんとかして夫婦関係を良い方向へ持っていこうと考えていることも多くあります。
離婚して別の相手と交際再婚するのが許せないから
配偶者が浮気不倫などの有責原因を作っておきながら、自ら離婚したいと切り出してきたような場合には、離婚を拒否するケースが多く見られます。
離婚して別の相手と交際、はたまた再婚なんて許せない。あまりにも虫が良すぎる、ということでしょう。
別の相手と再婚するということは、婚姻期間中の不貞行為が疑われます。離婚を切り出された側は、当然受け入れられないでしょう。
意地やプライドがあるから
自分に非があるわけではないのに、離婚を切り出すなんてありえない!これだけのことをしてきてやったのに、離婚したいなど、恩を仇で返す行為だ!など、意地やプライドのために離婚を拒否するケースも多く見られます。
愛情よりも夫婦の力関係に執着するのは、女性よりも男性のほうが多い傾向にあります。
プライドの高い男性にとって、妻から離婚を切り出すことは、自尊心を傷つけられたことになり意地でも離婚しない!と、なってしまうのでしょう。
離婚したい理由が理解できていないから
あなたが何度も離婚したいと伝えていても、なぜ離婚したいのか、その理由が全くわかっていない、というケースもあります。
この場合は、あなたが感情的になりすぎているため、時間をおけば状況が変わる、離婚意思がなくなる、と考えている可能性があります。
なぜ離婚をしたいのか、冷静に具体的な理由をきちんと相手に伝える必要があります。
子供のことを考えているから
夫婦にまだ未成年の子どもがいる場合には、子どもへの影響、心理的な面、金銭問題などの理由から離婚を拒否するケースが多くなります。これは、特に、女性に多い理由です。
離婚することで、苗字や学校が変わったり、片親になることで子どもの就職や結婚にまで影響が及ぶこともあるため、子どもが独立するまでは離婚に応じない、と考えている人も多くいます。
周囲からの目や世間体が気になるから
離婚がめずらしいことではないと思われるようになった昨今でも、離婚に対するマイナスイメージを抱く人は、まだ多くいるのが現実です。
特に、社会的な地位がある人、地方に住む人の中には、離婚に対する世間体を気にする人もいます。
また、女性の場合は離婚後に姓が変わる場合があるため、子どもや仕事への影響などを気にして離婚を躊躇することもあります。
離婚した後の生活が心配だから
離婚後の生活が心配であるために、離婚を拒むケースもあります。特に、結婚後に仕事をしたことのない専業主婦にとって、離婚後に一人で生活していくことは死活問題となります。
しかし、慰謝料や財産分与、また年金の分割も可能であるため、経済的な問題さえクリアすれば、離婚に応じる可能性も高くなるでしょう。
離婚してくれない相手を納得させるためにできること
離婚してくれないのは、それなりの理由があるからなのですが、その理由ごとに解決する方法も当然にあるはずです。
ここでは、離婚してくれない理由をもとにしながら、離婚してくれない相手を説得させるための対応策について紹介します。
愛情がないことや修復の可能性がないことを伝える
相手に愛情が残っているために離婚を拒んでいるケースでは、まずは、あなたに愛情が全く残っていないこと、修復の可能性がないことを、はっきりと伝えることが重要です。
具体的には、離婚の意思が固いこと、離婚後のプランがすでに決まっていること、復縁の可能性がないことを明確に伝えましょう。
また、別居をして、婚姻生活を続けるつもりがないという意思表示をすることも大切です。
離婚の原因となった証拠などを用意する
相手方が頑固で、絶対に離婚に応じないという意見を持っている場合、そもそも話し合いにすら応じてくれないこともあります。
こうした場合には、共通の知人友人を介して、離婚の原因となった証拠などを用意して、離婚の手助けをしてもらうことも可能でしょう。
相手方としても、第三者からの話であれば冷静になって話を聞くこともできます。離婚の原因となった証拠を見ることで、離婚の決意をしてくれる可能性は高まることでしょう。
相手の心配を配慮した条件を提示する
経済問題などが離婚を拒む理由である場合は、相手の心配を配慮した条件を提示することで離婚に応じてくれる可能性も高まります。
離婚をする際には、財産分与をしなければならないため、相手方は一定の財産を得ることができるようになります。
また、あなたが離婚の原因を作った有責配偶者である場合には、相手方が求めれば慰謝料を支払う必要があります。
さらに、相手方が親権を取る場合には養育費の支払義務も生じます。母子家庭、父子家庭に対する公的な扶助や控除の制度もあります。
経済的な問題については、こうした援助があることを丁寧に説明することで、相手方の経済的な不安を取り除くことで離婚に同意してくれるようになるでしょう。
子供のための対策を提示する
離婚しない原因が子どものためである場合には、離婚後も子どもの生活に変化が生じない、また、変化があっても最小限にとどめることを相手方に説明して理解してもらうことが必要です。
離婚しても、必ずしも苗字を変える必要はありませんし、引っ越ししたり転校することも避けようと思えば避けられるでしょう。
子どもの経済的な問題に関しても、先述したように養育費の支払い義務、母子家庭・父子家庭への公的扶助を利用することで、生活に支障をきたすことを極力控えることができます。
相手方が子どもと面会できなくなるのではないかと心配する場合には、できるだけ会わせてあげることを約束して安心させてあげることも必要になります。
夫婦間での話し合いが困難なら弁護士へ相談を
夫婦間の話し合いだけでは到底離婚が成立しそうにないような場合には、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
離婚してくれない相手方とやり直すことが不可能である場合には、こうした状況を一日も早く改善することが、あなたや子どもたちの将来のためにも重要です。
法的に離婚するための条件を知る
離婚してくれない相手を説得することは重要ですが、そもそも相手方に法定離婚事由がある場合には、相手方がいくら離婚を拒んだとしても、最終的には裁判で離婚をすることが可能です。
法定離婚事由は、以下の5つです。
不貞行為
不貞行為とは、配偶者があるものが、自由意思で配偶者以外の異性と性的関係を持つことをいいます。
したがって、配偶者が他の異性と食事をしたり、映画に行くだけでは不貞行為にはあたりません。
不貞行為が原因で離婚できる場合とは、不貞行為によって婚姻関係が破壊されたといえる場合、つまり、不貞関係が原因で婚姻関係が破壊された場合をさします。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、配偶者が正当な理由なく、相手方との同居を拒否する、協力しない、あるいは同一程度の生活を保証しないような場合をいいます。
婚姻により、夫婦には同居協力扶助義務が課せられます。正当な理由なく、この義務を果たさないことが悪意の遺棄になります。
具体的には、理由なく同居を拒む、生活費を渡さない、相手方を虐待したり家から追い出す、などの行為が悪意の遺棄に該当します。
いずれも、「正当な理由なく」ということが重要になり、仕事の関係で単身赴任をしたり、病気やリストラによって生活費を渡せないような場合には悪意の遺棄には該当しません。
3年以上の生死不明
相手方が、最後の消息があったときから3年以上の生死不明であった場合には離婚することができます。
生死不明の場合には、失踪宣告をすることもできます。失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
失踪宣告を利用することで、配偶者の財産一切を相続することが可能になります。子どもがいるような場合には、失踪宣告の制度を利用することで配偶者の財産を得ることができるようになります。
回復し難い強度の精神病
相手方が回復の見込みのない強度の精神病を患っている場合は、離婚することができます。
もっとも相手方が、強度の精神病を患い、回復の見込みがなければすぐに離婚ができるというわけではありません。強度の精神病を患っているような場合にこそ、夫婦の同居協力扶助義務を果たすべきとされているからです。
そのため、精神病になってしまった配偶者の生活に目途を立てなければ、離婚できないというのが判例の見解です。
その他婚姻を継続し難い重大な理由
婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合には、離婚が認められます。
婚姻を継続しがたい重大な事由とは、夫婦関係を修復不能はほどに破綻させ、円満な夫婦生活の継続が困難とされるような事由をいいます。
例えば、DVやモラハラ、薬物中毒やアルコール中毒、性の不一致、過度な宗教活動、過度な浪費、犯罪行為による服役、などがあげられます。
ただし、これらの事由がひとつでもあれば離婚が認められるわけではないので注意が必要です。こうした事由と夫婦の全ての生活を総合的に勘案して判断されます。
法定離婚事由がないときは別居から始めよう
離婚してくれない配偶者に上記の法定離婚事由がない場合は、まずは別居することから始めることをおすすめします。そこから離婚に向けて話し合いや手続きを進めるのです。
別居期間が長ければ長いほど、離婚裁判になった際に夫婦関係が破綻していると判断され、離婚請求が認められやすくなります。
別居することで、夫婦ともに離婚後の生活を意識しながら新生活を始めることもできます。
別居は、離婚に向けての必要な過程でもあります。
離婚してくれない相手と離婚するまでの手順
ここでは、離婚してくれない相手と離婚するまでの手順について解説します。
離婚は、以下の順番で手続きを進めます。
離婚協議
協議離婚とは、夫婦間の話し合いにより同意を得て離婚する手続きです。
日本では、多くの夫婦が協議離婚により別れています。夫婦間の同意があれば、特に問題なく即日に離婚できる手続きです。
市町村役場にある離婚届に必要事項を記入し、夫婦の署名、捺印、成人の証人2名の署名、捺印をしたのち、未成年の子どもがいる場合には親権者の選択をして提出することにより、離婚が成立します。
離婚調停
離婚調停とは、家庭裁判所の調停室で調停委員を介して離婚についての話し合いを進める手続きです。
あくまでも夫婦間の意思を尊重して進められるため、最終的に夫婦双方の合意を得られなければ調停は不成立に終わります。
調停が不成立に終わり、それでも離婚したいという場合には、さらに離婚裁判に移行することになります。
離婚訴訟
協議離婚では離婚の合意が得られず、調停離婚でもまとまらなかった場合の最後の手段が離婚訴訟です。
離婚訴訟では、法律で定められた離婚理由がないと、離婚判決が下されません。裁判所にて離婚を認める旨の判決がでれば、相手方がいくら反対しても離婚が成立します。
離婚訴訟に必要な離婚事由は、先述したように、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死の不明、強度の精神病、その他の婚姻を継続し難い重大な事由がある場合です。
離婚してくれない相手から早急な避難が必要なら
離婚してくれない相手がDVやモラハラをしているような場合には、身体的・精神的なダメージから身を守るためにも早急な避難が必要になります。
今すぐにでも、配偶者から距離を置きたいという時の対処方法を紹介します。
実家や別の住まいに移住する
まずは、実家や友人宅など別の住まいに移住しましょう。
実家であれば親の援助を受けながら自立に向けて準備ができるでしょう。また、小さな子供がいる場合にも、祖父母に面倒を見てもらい仕事を探すこともできます。
ただし、実家の場合は相手方に居場所がすぐにわかってしまうので、DVなどの場合には身体に危険が及ぶ可能性もあるので注意が必要です。
警察や専門機関に相談する
相手方からDVを受けていたり脅迫されているような場合には、身の安全を守るためにも、最寄りも警察署、福祉事務所、女性相談窓口、配偶者暴力支援センターなどのしかるべき専門機関のシェルターに避難しましょう。
子どもがいる場合にも、通常は2週間ほど同じ施設で同居することが可能です。その間に新たな住まいを探し、生活の基盤を作ることが必要です。シェルターには、今後の生活に向けた相談ができる専門の相談員がいます。こうした施設の相談員に相談して、就職先や新しい住居を探すとよいでしょう。
保護命令を受けることも視野に入れる
保護命令とは、配偶者や交際相手から暴力や脅迫を受けた場合、被害者の申立により裁判所が加害者に発する命令のことで、接近禁止命令、退去命令、電話等禁止命令があります。
保護命令に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
保護命令を申し立てるためには、警察または配偶者暴力相談支援センターにおいて、事前にDVについて相談しておく必要があります。
まとめ
配偶者が離婚してくれない場合、その背後には様々な理由があります。そうした理由をひとつずつ理解しようとするだけでも、解決の糸口が見えてくることがあります。
相手が離婚を拒めば拒むほど、離婚するまでに時間がかかってしまいます。話し合いを重ねても、なかなか離婚できないケースも多いのが現状です。
一人で解決することが難しい場合は、できるだけ早い時期に弁護士に相談することをおすすめします。離婚を得意分野とする弁護士に相談すれば、それぞれの状況に応じた対応策を提案してくれます。