離婚調停を有利に進めるコツとは?流れや弁護士に依頼するメリットも解説
離婚したいのに配偶者がなかなか同意してくれない。あるいは、離婚条件で揉めている。
離婚調停を検討したいけど、調停で有利な立場に立つにはどのような準備をしたらよいのか、そもそも離婚調停とはどのような手続きなのか?疑問に思う方も多いことでしょう。
この記事では、離婚調停の大まかな流れを解説し、調停を有利に進めるための方法をわかりやすく解説します。

離婚調停の大まかな流れ
離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員を介して行われる当事者間の話し合いです。離婚の話以外にも、養育費の問題や親権についても話し合うことができます。夫婦間で離婚について話し合いがまとまらずに離婚成立が難しい場合、離婚裁判をする前に調停を行わなければなりません。
では、離婚調停は具体的にどのような手続きなのか、見ていきましょう。
離婚調停を申し立てる
離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行うことにより手続が始まります。
離婚調停には、収入印紙代(1200円)、切手代(1000円以下)、戸籍謄本(450円)、住民票(300円)などの費用が必要です。
また、離婚調停には以下のような書面が必要になります。
- 夫婦関係調整調停申立書
- 夫婦の戸籍謄本
- 年金分割のための情報通知書(年金分割する場合)
調停期日通知書が届く
離婚調停の申し立てをすると、申立書に沿って裁判所で書面のチェックが行われます。何も問題がなければ、通常は2週間程度で、第1回調停期日が家庭裁判所で決められ、その連絡が書面で通知されます。
同時期に相手方に対しても、離婚調停申立書の写しと、第1回調停期日の呼出状が家庭裁判所から送られてきます。
1回目の調停が開催される
第1回調停期日はあくまでも目安ですが、申立後1か月半〜2か月後くらいに召集されることが多くあります。
調停期日では、2名(通常は男女1名ずつ)の中立な立場の調停委員が、まず申立人と話し合います。調停委員は、弁護士、元公務員、婦人会などの役員の方など様々な職種の人がいます。
申立人は会議室のような部屋に呼び出され、30分程度、状況確認のための話し合いが持たれます。その後、申立人は待合室に戻り、相手方が呼び出されて同様に状況確認のための話し合いが行われます。
申立人と相手方は、待合室が別々なので基本的に顔を合わせることはありません。一般的には、申立人、相手方の順番で30分づつ話し合いが繰り返されます。
その後、第2回調停期日、第3回目、第4回目と調停期日が繰り返されます。調停は、1回目とほぼ同じ流れで、1〜2か月に一度の割合で調停期日が設定されます。
成立不成立が決定し終了
調停期日が繰り返された後、最終的に、調停成立・調停不成立・取下げのいずれかにより離婚調停は終了になります。
- 調停成立:申立人と相手方が合意した場合
- 調停の不成立:調停員が合意することが難しいと判断したとき
- 取下げ:申立人が合意は難しいと判断したとき
離婚調停は、調停が成立しないで終了しても、再度調停を申し立てることができます。
また、調停が合意に至らず離婚する場合には、改めて離婚裁判を提起することになります。
ただし、裁判所が相当と認めたときには調停に代わる審判をすることができます。審判に異議がなければ審判確定、異議があれば審判失効となります。
離婚調停にかかる平均期間は3~6ヶ月
離婚調停は、1回の調停期日で申立人と相手方が合意に達する場合もあれば、10回以上の期日を経ても合意に達しないケースなど、事案により調停にかかる期間も異なります。
離婚調停にかかる平均的な期間は3〜6か月、2〜4回の期日で終了するケースが多く見られます。
基本的に、調停は平日の日中に行われます。したがって、事前に離婚調停前に仕事のスケジュールとの調整が必要になるでしょう。
離婚調停を有利に進める7つのコツ
離婚調停は、配偶者に直接話をするのではなく、調停委員に話をすることになります。
ここでは、調停委員を介して、できるだけ自分に有利な結果が得られるように、調停を有利に進めていくためのポイントを解説します。
事実や主張したい内容を書面にして事前に提出する
まず、調停を有利に進めるためには、離婚に至った経緯や請求の内容やその理由など、自分の主張したい事項を整理して書面を作成することが重要です。
書面は、「陳述書」や「主張書面」などとも呼ばれ、裁判所のほうから提出を指示されることもあれば、自主的に作成して提出することもできます。
口頭で説明するだけでは伝わりにくいことが多いので、調停委員がきちんと理解できるようにポイントを整理して書面にしておくだけでも、調停を有利に進める準備となるでしょう。
不貞行為などの証拠を準備しておく
離婚調停を行う原因が相手方の不倫行為である場合は、不貞行為が推測される証拠をできるだけ多く集めることが重要になります。
相手方が自分の不貞行為を素直に認めることはあまりないので、調停委員に不貞行為の事実を推測させるような具体的な証拠が必要です。
離婚調停の申立により、相手方に通知が行くことになるので、申立後には相手方が警戒して証拠の収集が困難になることが多くあります。
不貞行為を理由に離婚調停をする場合には、事前にできる限りの証拠を準備してから、調停の申立てをすることをおすすめします。
親権を争う場合は早めに調査官をつける
離婚調停で親権を争う場合は、合意を得ることが困難になります。どちらも譲らずに合意が得られない場合には、調査官の選任を希望することを家庭裁判所に早めに伝えましょう。
調査官が選任されると、子供の意見を聞いたり、監護状況の調査が行われ、これらの調査に基づいた調査報告書が作成されます。この報告書は裁判官に与える影響が大きいので注意が必要です。
調停委員に共感してもらう
離婚調停では、調停委員に自分の主張をわかりやすく、きちんと伝えることが何よりも重要なポイントになってきます。
そのため、調停期日前には弁護士や親族、知人などと調停のリハーサルを行い、わかりやすく伝えているのか、話し方に問題はないか、チェックしてもらうとよいでしょう。
誰もいない場合には、自分で録画して、セルフチェックするだけでも色々な改善点が見つかるでしょう。望む結果を得るためにも、できるだけ事前の準備が必要になります。
養育費、財産分与、年金分割などの条件について見通しを立てる
離婚調停が成立した場合には、調停調書が作成されます。この調停調書は、裁判の判決と同じ効力を有します。したがって、養育費、財産分与、年金分割などの条件がある場合には、きちんと決めておくことが重要になります。
将来、養育費や財産分与割などが取り決め通りに支払われない場合には、調停調書があることで、強制執行することができるようになります。
養育費については、家庭裁判所は、原則として「養育費算定表」を用いて養育費を決定します。
財産分与とは、夫婦の共有財産を離婚時に原則として2分の1ずつに分け合う制度です。夫婦の共有財産と自分自身の財産とを区別して答弁書にまとめておくことが必要です。相手方にも、同様に財産の詳細を開示するように請求しましょう。
年金分割は、夫婦が婚姻中に加入していた厚生年金や共済年金を離婚後に自分の年金として受給できる制度をいいます。年金分割についても、年金手帳などを準備して詳細な資料を手元に準備しておきましょう。
ただし、婚姻期間中に夫婦共に厚生年金や共済年金に加入していた場合は、加入期間や標準報酬額の差により年金分割が却って不利になる場合もあるので注意が必要です。
譲れないラインを決めておく
離婚調停を起こす前に、調停をするにあたって予め自分では譲れない事項は何かを決めておくことが重要になります。
例えば、どうしても親権だけは欲しい、あるいは親権を譲ってもいいので養育費の支払だけは確実にして欲しい、など離婚調停を起こす目的を明確にしておきましょう。
離婚調停の当事者は、困難な状況に同情してほしい気持ちから、愚痴とも取れる苦労話や不幸話を調停委員に延々と語る人もいます。
調停の目的を説明するためのものであれば問題はありませんが、譲れない条件を得るためなどの目的をもって話すことが調停を有利に進める上でも重要になります。
弁護士に相談する
離婚調停は、書類の作成、冷静かつ論理的に調停委員に自己の主張を伝えられるのか、調停に関する情報収集などが不可欠になります。
離婚調停の経験豊富な弁護士に相談することで、事案にそった離婚調停の進め方をアドバイスしてもらうことが可能になります。
弁護士の中には、最初の相談を無料で行っている法律事務所も多くあるので、まずはどのような方法があるのかなど法律相談だけしてみるだけでも有益でしょう。
調停委員を味方につけるポイント
調停委員は中立的な立場で夫婦の話し合いを仲介しますが、やはり、より納得のできる理由を主張する方に傾聴する傾向があるのは事実です。
したがって、いかに調停委員の心証をよくして共感を得られるかが重要なポイントになります。そのためのいくつかのポイントを、以下に解説します。
自分の意見が正当であることを示す
離婚調停では、限られた時間の中で調停委員に離婚に至るまでの経緯や具体的な事実を冷静かつ簡潔に説明することが何よりも重要になります。
そのためには、先述したように事前に陳述書を提出して話し合いの要点をまとめ、それに基づいて聞かれたことだけに誠実かつ冷静に返答するだけでも充分に説得力があります。
調停委員が正当な解決案だと理解すれば、相手に正当性を示して説得してくれるようになります。離婚調停手続きは、事実に基づいた話し合いであることを意識しましょう。
感情的になりすぎないようにする
上記に関連して、調停委員が聞きたがっているのは、あくまでも離婚の原因となった具体的な事実であり相手の愚痴や悪口ではありません。
日頃の恨みつらみを発散するために感情的になりすぎてしまうと、具体的な解決策も見つけられなくなり、結果的には自分に不利になることも否めません。
調停委員には、離婚したい(あるいはしたくない)理由、親権者となるべき理由、慰謝料が必要である理由など、話す目的を意識することが不可欠です。
証拠を揃えておく
調停委員を味方につけるためには、自分の主張を裏づけるための証拠の提出が何よりも重要になります。
証拠がなければ相手が言い逃れをする可能性もありますし、調停委員も証拠がなければ話し合いの前提を欠くために話し合いを継続することが難しくなるからです。
調停を有利に進めるためにも、相手が言い逃れができないほどの決定的な証拠を確保しておくことが理想です。
ただし、証拠がないからといって離婚調停の申立ができないというわけではありませんが、できる限りの証拠を集めておくことが、調停を有利に進めるポイントになります。
離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停を弁護士に依頼することになると、費用が必要になります。この費用を支払うだけの利益とは、どのようなものなのかについて見ていきましょう。
書面作成にかかる時間を短縮できる
離婚調停の申し立てには、上述したように離婚調停の申立書、照会回答書、陳述書など書面の提出が必要です。弁護士に依頼することで、こうした書面の受取、作成、提出などの事務手続きを一任できます。
また、調停期日にいけない場合にも弁護士が代わりに出頭することも可能です。
妥協せずに話し合いを進められる
離婚調停を有利に進めるには、主張を裏づける証拠を準備し、たとえ自分に不利な状況になっても妥協せずに継続して話し合いを進めなければなりません。
実際にこれを1人で何ヶ月も継続していかなければならないとなると、時間的にも精神的にも相当な負担が圧し掛かります。
弁護士に依頼することで、こうした負担を大幅に軽減することが可能になり、調停で有利な結果を獲得することが可能になります。
感情的にならず冷静な話し合いができる
弁護士に依頼することで、感情的にならずに冷静な話し合いができるようになります。
特にあなたの主張を法的に有効な形で組み立てて調停に提出してくれることが、弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
法的観点から論理的な主張をすることで、調停委員の理解も得られやすくなります。
精神的な安定感が得られる
離婚調停には、弁護士も同席で調停を行うことができるので、常に精神的な安定感を得ることが可能です。
代理人として弁護士に話を進めてもらうこともできますし、また同席してもらってサポートしてもらうこともよいでしょう。
信頼できる弁護士に依頼することだけでも精神的な支えになり、困難な状況を自信をもって乗り越えることができるでしょう。
成立しなかった場合はスムーズに裁判に移行できる
離婚調停が成立しなかった場合には、離婚裁判に移行します。また、婚姻費用や面会交流などの取り決めについては、家庭裁判所の審判に移行します。
弁護士に依頼することで、調停での経緯や提出した資料に基づいて継続的に裁判のサポートをしてもらえます。また、離婚裁判を見込んでの証拠の収集や主張なども可能になります。
費用はかかりますが、相手方が弁護士をつけてくる場合もあります。そのような場合には、特に離婚調停を得意とする弁護士に一任することをおすすめします。
離婚調停中に相手が有利だと感じた時にできること
離婚調停はあくまでも話し合いの手続きです。裁判とは異なり、勝つとか負けるというものではありません。また、調停委員は離婚当事者双方の話をまとめるのが仕事です。
しかし、離婚調停中に明らかに相手方が有利だと感じるときには、まずは冷静になって、
あなたの気持ちや感情を話すのではなく、あくまでも事実関係を説明することが重要です。
ここでは、相手方が有利だと感じた時に一般的にできる対応策について解説します。
調停委員と対立しないようにする
調停委員は、様々な職種の人がいます。中には、どうしても価値観のあわない調停委員もいることでしょう。
しかし、離婚調停はあくまでも離婚に向けた事実の話し合いの場であり、それぞれの価値観を主張して意見を戦わせる場ではありません。
自分の主張を押し通しすぎたがために、不利な結果を招いてしまうこともあるため、調停委員と対立することは極力さけることが大切です。
納得できない条件では合意しない
調停委員は争いの判決を下す裁判官とは異なり、話し合いをまとめることが仕事です。また、法律の専門家ではない場合もあるので、調停委員の意見が常に正しいとは限りません。
したがって、調停委員の意見に納得できないような場合には合意をせずに、疑問があれば次回の調停の際に再度話し合う、あるいは、弁護士に相談して意見を聞くことが重要です。
弁護士に対応してもらう
離婚調停は、離婚に向けてお互いが合意をして、裁判官がその意思を確認するという手続が成立するまでは法的な拘束力を持ちません。しかし、一度手続きが成立すると、撤回や変更が原則的には認められません。
養育費や慰謝料の金額を決めるにあたって、双方が譲らない場面では、調停委員が相場よりも低い金額を提示して話をまとめようとする場面も多く見られます。
離婚の条件に関しては、一度調停で取り決めが行われると、その後の撤回や変更が非常に困難です。少しでも疑問に思う場合は、すぐに合意をせずにまずは弁護士に相談して対応してもらうことをおすすめします。
まとめ
離婚調停は、解決までの相当の労力と長い月日を要することになります。また、適切な対応策をたてておかなければ、大きな損失を被ることにもなるでしょう。
離婚調停を有利に進めるためには、何よりも調停委員の理解が得られるかどうかが重要になります。お1人で悩まずにあなたにとっての最善策を見つけるためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。