離婚調停は申し立てた側が有利なの?調停の進め方や疑問点を解説
離婚調停を申立てられた人のほうが有利で、申立てた側のほうが不利になる、という話は、実は弁護士も相談の中でよく質問されます。では、実際はどうなのか、解説していきます。

離婚調停、申立ての順番で有利不利が決まる?
離婚調停は申立てた側が有利になり、申立てられた側が不利になるの?という疑問は、実は弁護士も相談の中でよく聞かれます。では、実際はどうなのか、解説していきます。
申し立ての順番によって有利不利は変わらない
実は、離婚調停の申立の順番によって有利不利は変わりません。
あるとすれば、申立てる場合は、第1回目の期日の希望を裁判所から聞かれて、自分の希望した日時になりますが、申立てられた側は既に決まっている第1回期日に出頭しなければならないということくらいです。
この場合でも、申立てられた側が裁判所に連絡することで、第2回目の期日は出頭できる期日に調整してもらうことができますので、大きなデメリットではないです。
申し立てられるよりは準備しやすい?
有利なことがあるとすれば、申立てる側はしっかりと、内容も気持ちも準備していますが、申立てられた側は気持ちの準備ができていないということがあるかもしれません。
しかし、気持ちの準備ができていないならば、その旨を直接、調停委員に言えばいいのです。
調停委員は、その気持ちを尊重して審理を進めます。急かす人はほぼいないという印象です。
意見する順番や裁判所の距離で有利不利は変わるのか?
次に、意見する順番や裁判所の距離で有利不利は変わるのでしょうか?
意見する順番や裁判所の距離で、調停の有利不利にはつながりません。
調停委員は相互に当事者の話を聞いて進めます。
当事者から色々な話が出るのは当然ですし、次の期日に当事者の話が変わっていることだってよくあります。
ですので、意見の順番などは、ほぼ気にしないで大丈夫です。
なお、場所についていえば、裁判所から遠い場合には、電話での調停が認められることが多いですが、それが有利になる場合とならない場合があると思います。また、出頭する場合には、遠くの人だからと時間について融通してもらえることが場合によってはあります。
そもそも離婚調停とは?手続き方法もおさらい
必要な書類
離婚調停の申立に必要な書類は、家庭裁判所のサイトから見られますし、各家庭裁判所ごとに定型の書式もありますので、そちらを参考にしてください。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html
基本的には
- 調停申立書
- 戸籍謄本
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 連絡先の届出書
などになります。
陳述書を求める裁判所もあります。
申し立ての流れ
調停申立書とその他の必要な書類、そして、必要な金額分の印紙と切手を準備して、家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所は相手方の居住地を管轄する裁判所になります。
例えば、夫は東京に住んでいて、妻がさいたま市にある実家に戻った場合、夫が調停を申立てる先は、妻が住んでいるさいたま市を管轄するさいたま家庭裁判所になります。
家庭裁判所への提出は、持参する方法と郵送する方法があります。
持参するとその場でチェックしてくれます。
書類が問題ない場合は、その後、家庭裁判所から第1回目の期日の案内があり、
それから、相手方に通知されます。
おおよそ、申立から1か月~1か月半後に、第1回期日が指定されます。
結局、離婚調停を有利に進めるなら準備と振る舞いが大切
離婚調停までに準備すべきこと
離婚調停までに準備することの大きなことは、気持ちです。
離婚をする、ということを固めておくのがいいと思います。
離婚したくない場合は絶対に離婚しないなのか、場合によっては離婚することもあるのかを決めておいたほうがいいと思います。
次に、自分が求めている事項に関する資料を準備します。
養育費であれば、自分の収入を示す書類
財産分与であれば、自分と配偶者の預貯金通帳や保険についての書類を取り寄せておきます。
また、年金分割も合わせて請求する場合には、年金事務所に、年金情報通知書を請求しておきます。これは数週間時間がかかりますので、早めに手続きをしておく必要がありますが、遅くなっても後から提出できますので、心配しないでください。
離婚調停を有利に進めるための主張
何が有利か、というのが、実は、その人ごとに違うので難しいところです。
また、調停は、話し合いであり、調停委員が決めるものではありません。
離婚自体は合意できなければ調停が不成立になりますし、慰謝料についても、相手が認めなければ請求しても支払ってはもらえません。証拠があっても、その証拠をもとに慰謝料が調停で認められる、ということはなく、せいぜい調停委員が「このような証拠があるけどどうですか?」と相手に質問してくれる程度です。
ですので、何が有利か、というのが難しい問題ではあります。
例えば、面会交流について決めなければならない場合に、調停委員が無茶を言う相手を説得してくれる、ということはありえるでしょう。そのためには、自分の主張は法的に間違っていないことを述べるとともに、実際の困っていることをしっかり伝えることは大切です。
また、今生活費をもらっていなくて、生活費も払ってほしい、というような場合は、その事実を伝えるとともに、具体的に困っていることを主張したほうがいいでしょう。
なお。生活費については、離婚調停と一緒に、婚姻費用分担請求調停を申立てる例が多いです。
感情的な言動は控えましょう
感情的な言動をすると、冷静な話し合いは難しいということで調停が早期に不成立になる可能性もありますし、調停委員が自分の言い分をしっかり聞いてくれないことにも繋がります。
ですので、感情的な言動は控えたほうがいいですが、実は控え過ぎるのも良くないです。
調停委員は説得しやすいほうを説得するので、物わかりがいい人と思われると、自分ばかりが説得されます。
時には感情的になるほうが、調停委員から説得されずに自分の希望がとおることもあります。あまり我慢はしすぎないということがポイントです。
離婚調停を有利に申し立てるなら弁護士に依頼するほうが良い?
基本的には依頼した方が良い
調停の申立書類を作成するのがめんどくさい、ということもありますし、調停なので緊張して話せない、という可能性もあります。
また、調停委員との相性が悪く、自分の意見をしっかりきいてもらえないと感じるときもあるので、調停委員に文書や口頭で主張をしっかりと伝えてくれる弁護士がいるほうがベターだと思います。
また、離婚だけではなくて、婚姻費用、親権、財産分与、養育費、面会交流などが問題になりそうな場合には、別の調停や審判の申立を検討したり、調査官に対応する場合もでてきます。
調査官とは、親権・子の監護・面会交流が問題になっているときに、当事者や子どもから話をきいたり、幼稚園や小学校宛に調査をしたりして、事実を調査する人です。
調査官の調査結果は、非常に重視されるので、その前の調査においてしっかり対応することや間違いがあった場合には適切に修正してもらうことが必要です。
ですので、そのような可能性がある場合は、特に弁護士がいたほうが、スムーズに調査官への対応ができると思われます。
弁護士に依頼するメリット
自分で調停する場合でも法律相談を有効活用
自分で調停する場合でも、法律相談、つまり弁護士のアドバイスを有効活用する方法もあります。
ただ、実際に相談に応じる弁護士としては、弁護士のいったこと全てを相談者が覚えていることはないうえ、実際に相談者が調停内で実践できるかは分からないので、話しながらも不安です。
また、何回も調停のことを相談するとなると、数回後には断ってくる弁護士もいるかもしれません。
調停を申し立てられた場合はすぐに弁護士相談
調停を申立てられた場合は、第1回の調停前に弁護士に相談することをお勧めします。
調停とはどういう手続きか、調停で決められることと、調停で決まらない場合の次の手続き(審判や訴訟)は何か、等知識として知っておいたほうがいいこともあります。
また、そもそも、自分としては、離婚したいのかやり直したいのか、という気持ちを確認するためにも、弁護士に相談して、相談しながら気持ちを整理していくことが可能です。
伊奈先生からのメッセージ
離婚調停は、話し合いの場ですが、なかなか離婚について一人で冷静に話すのは難しいです。
調停になった場合は、弁護士に依頼することをお勧めします。
毎回弁護士に相談して、自分で遂行するという方法もありますが、私自身はお勧めしません。というのも、しっかりアドバイスしていたつもりでしたが、調停委員の指摘や相手の主張や本気度を相談者本人が捉え切れておらず、残念な結果になったことがあるからです。
毎回相談するくらい心配なのであれば、費用はかかりますが、弁護士を依頼したほうがいいとアドバイスしています。
離婚は楽しいことではありません。どちらかといえば、辛いことです。それに伴走してくれる人という意味でも、弁護士を依頼することをお勧めしています。