DV・ハラスメントが原因で離婚を考えており、まだ決意していない方によくある悩み5選【前編】

DV・ハラスメントが原因で「離婚」という2文字が頭に浮かんだものの、実際に「よし、離婚しよう」と決意するまでには、様々な葛藤を抱える人も少なくありません。
DV・ハラスメントが原因で離婚するかどうか考え中の方が抱えるお悩みをご紹介し、それぞれのお悩みについてカケコムなりに解説していきます。
お悩み① どこからがDV・ハラスメントかの定義がわからない
一言でDVといっても、DVにはいくつかの種類があります。それぞれの種類について、具体的に解説していきます。
◆精神的暴力
精神的暴力とは、モラハラや言葉の暴力等を指します。
相手の人格や能力を否定するような言葉を使ったり、相手を無視をするといった行動が当てはまります。
DVは実際に目に見える身体的暴力だけでなく、夫婦の言葉の暴力のように心に傷を負う精神的暴力も含まれます。
そのため、モラハラや夫婦の言葉の暴力はDVとして認められる可能性は大いにあります。
◆身体的暴力
身体的暴力とは、体に直接危害を加えるような暴力等を指します。
一般的にDVというと身体的暴力を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
身体的暴力は特に怪我をする等の危険な状況に繋がりやすいため、身体的暴力がある場合は迷わず第三者に相談をするか、可能であればシェルター等に避難するようにした方が良いです。
◆性的暴力
性的暴力もDVの一種です。相手が嫌がっているのに相手に性行為を強要するなどの行為が性的暴力にあたります。
結婚しているからといって、相手に性行為を強要しても良いわけではありません。
同意のない性行為がある場合には、第三者へ相談されることをおすすめします。
◆経済的暴力
経済的暴力とは、必要となる生活費を渡さなかったり、相手に働きたいという意思があっても働くことを禁じることなどを指します。
【どの程度のDVなら離婚できるのか】
痣など軽い怪我でも離婚が認められる可能性があります。
さらに、1回の暴力行為で離婚が認められることも十分にあり得ます。
また、直接殴られたわけではなくて、当たりこそしなくても物をこっちに向けて投げてきたという「間接的暴力」のケースでも離婚が認められる可能性があります。
その場合、証拠の存在が重要です。「投げられて壊れた」「壁が凹んだ」「コップが割れた」など、写真に撮って証拠化しておきましょう。
【相手がDVを認めた場合は必ず離婚できるのか】
そもそも相手がDVを認めるとも限りませんし、相手がDVを認めているというだけで安心するのは良くありません。
相手が調停や裁判で、「思い切り殴りました」と発言することはあまり考えられないからです。
本当はグーで殴っていても、「軽く平手で叩いただけ」と過少に言うこともあります。
だからこそ、怪我の写真を撮ったり、病院で診断書をもらうなど証拠を残しておくことが大切です。
【DVとモラハラ、どちらが離婚が認められやすいのか】
DVとモラハラの区別は、離婚においてはあまり重要な点ではありません。
離婚するにあたって、法律で「こういう場合に離婚を成立させる判決を出しますよ」という要件が決まっています。
DVやモラハラで離婚できるかどうかは、「婚姻を継続し難い重大な理由」にあたるかどうかにかかってきます。
暴力がDVにあたるかモラハラにあたるかは重要ではなくて、それがあると婚姻を継続し難いかが重要なのです。
民法770条
①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
②裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
お悩み②今後どんな選択肢があるのか知りたい
◆身を隠す
(1)実家へ逃げる・不安な場合は裁判所の保護命令
もっとも避難しやすいのは実家かと思います。ただ、実家だと夫に場所がバレているので家に来てしまう可能性があります。
そのときは裁判所に保護命令を出してもらいましょう。
裁判所から「配偶者に近づくな」という旨の命令が出されます。この保護命令を申し立てるための用紙は裁判所に置いてありますが、裁判所によって申立書の書式は違います。
また、申立書以外にも収入印紙、戸籍謄本、住民票、暴力を受けたことを証明する資料等が必要になります。裁判所のホームページに必要書類の説明がありますので、確認してから行きましょう。
(2)シェルター
シェルターは居所がわからないという点では非常に安全です。シェルターの場所は基本的に誰にも知らされないからです。
実際に依頼者の方がシェルターに避難された案件を担当した際、代理人である弁護士にさえシェルターの場所は教えてもらえなかったりします。
シェルターに避難する場合、まずは各都道府県の女性センターや配偶者暴力支援センターに相談しましょう。
これらに相談するとシェルターを紹介してもらえます。
ただ、入所の審査や、定員数もあるので、満員で入所が難しい場合もあります。
(3)DVから避難するときの注意点
【持っていくべきもの】
今後の離婚を考えるにあたっては、離婚の交渉に有利な証拠は持って出たいです。
たとえば、財産分与の交渉の際に必要な証拠です。
相手方の通帳自体を持ち出すのは難しいと思うので、通帳の口座番号や残金のわかるページを写真に撮っておくといいと思います。どこに口座があるかわからないと、財産分与の交渉のしようがなくなってしまうので相手方の口座がわかる状態を作っておきましょう。
また、生命保険の解約返戻金なども財産分与の対象となります。加入している保険に関する資料についてもコピーを取るなどしておくと良いでしょう。相手が隠すことも考えられます。
また、当然ですが自分の実印や財布、本人証明書類なども持って行きましょう。
子どもと一緒に避難する場合、子供の健康保険証・母子手帳も持って行きましょう。意外とこの2つは見落としがちなので注意しましょう。
【子どもは連れて行くべきか】
子どもを置いていくと親権を取るのが難しくなる場合もあります。
「いま一緒に生活しているのは父親で、ちゃんと面倒を見れているのに、いまさら環境を変えるのは子どもに悪影響だ」と判断される可能性があるからです。
もちろんDVをしたという事実は親権を決める際に考慮はされるのですが、DVをした側が親権を取れないとは一概には言えません。
子どもは先述のシェルターにも連れて行けます。
◆第三者機関へ相談する
(1)警察
直接的な暴力を受けた場合、まずは警察に相談するのが良いと思います。
「夫も交えて話を聞こう」ということになれば、警察と夫が会うことになり、DVを止めるきっかけになるかもしれません。
また、警察に相談したという記録が残りますので、後の離婚協議を有利に進めることができるようになる場合もあります。
(2)女性センター・配偶者暴力支援センター
先述しましたが女性センター等に相談すると、先述のシェルターを紹介してもらえます。
また「この日にセンターへこの内容を相談した」という相談票のようなものが作成され、書面でもらうことができます。
この書面が裁判所に保護命令を申し立てる際に使えますので、もらっておくといいでしょう。
(3)弁護士
弁護士に相談するのは、早ければ早いほど良いいです。
DVを受けて、離婚や別居を考え始めたらすぐに相談した方が良いでしょう。
別居を考えた際、一番の心配事は別居後の生活基盤ではないでしょうか。別居前から弁護士に相談しておくことで、別居後すぐに生活費(婚姻費用)を夫から支払ってもらうために動けます。
DVから逃げるだけでなく、その後の生活全般のためにも弁護士へ相談するのは非常に有効な手段です。なので弁護士への相談は早めにすることが大切です。
さらに上記に加え弁護士に相談するメリットとして、慰謝料、親権や財産分与など有利に交渉できる、配偶者に会わないで離婚交渉を進められるなどがあります。
◆離婚・制裁を加える
【まずは別居・証拠収集から】
DVを理由に離婚を考えているなら、いくつかの準備をしておく必要があります。
DVで離婚するための準備(1):DVの証拠を収集する
DVが事実としてあったということを証明するためには、DVの証拠集めをしましょう。
- DVをされた時に書いた日記(1度ではなく、何度もあった場合は、すべてのDVに対する記述が望ましいです)
- DVによって怪我をしたときの写真
- DVが行われている時の様子の録音データ
- DVによって外傷を負った際の医師の診断書
これらが証拠としては有力ですが、ほかにも証拠と呼べるのかどうかわからないようなものもあるでしょう。
他に必要な証拠があるのかどうかの確認も含めて、弁護士に相談するとよいでしょう。
DVで離婚するための準備(2):別居する
一刻も早くDV配偶者の手から逃れるために、1日も早く別居しましょう。
身を隠す際の注意事項は先述した通りです。
また、別居中の生活費は婚姻費用として請求する事が可能です。
DVで離婚するための準備(3):裁判所に保護命令を申し立てる
こちらも先述しましたが、DVが理由で離婚する準備を進めていると、離婚の危機を感じ取った配偶者から更なる暴力を受ける可能性が高いでしょう。
もしさらにDVがひどくなりそう、さらには身体や生命にまで危険が及ぶ場合には、保護裁判所に保護命令の申立てすることをおすすめします。
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)10条では、以下のように定められています。
- 接近禁止命令
- 電話等禁止命令
- 子への接近禁止命令
- 親族等への接近禁止命令
- 退去命令
これに違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(29条)が課されます。
【DVを理由に離婚するには】
いつ暴力を振るわれるか分からない恐怖を終わらせるために、離婚をするというのも一つの解決策です。
ここに関しては、次回の配信『④離婚までの道のりや、離婚後の未来を知りたい』で詳しく説明します。
お悩み③DV・ハラスメントをやめさせて夫婦中を改善したい
まだ、配偶者からのDV・ハラスメントが軽度であれば、モラハラを自覚して改善してくれる可能性もあります。
まず自分の気持ちを伝えることも大切です。
自分が嫌だと言えば、それに気づいて夫婦間の暴力がなくなるかもしれません。
しかし、既に関係が話し合いできる状況ではない場合、意見を伝える事で身に危険が及ぶ場合も考えられる為、慎重に判断して下さい。
◆行政機関や専門家に相談する
行政機関や専門家に相談をするのもおすすめです。
例えば、下記のような場所に相談すると良いでしょう。
DV相談ナビ
DV相談ナビは内閣府が運営しているサービスで、こちらの電話番号(0570-0-55210)に連絡すれば、発信地から最寄りの相談所に自動で転送されるようになっています。
匿名でも相談できるため、プレイベートな話を知られることに抵抗がある方でも相談しやすい仕組みになっています。
DV相談+(プラス)
DV相談+は2020年の4月から開始したサービスで、電話やメール、SNSのチャット等で相談することができます。
電話とメールは24時間対応しており、SNSのチャットは12:00~22:00の間に相談を受け付けています。
電話番号はこちら(0120-279-889)です。
配偶者暴力相談支援センター
配偶者暴力相談支援センターは、平成31年4月1日時点で全国287か所に設置されています。
相談だけでも受け付けていますし、相談機関を紹介したり、カウンセリングを行ったり、場合や場所によっては一時保護も行っていることがあります。
お近くの配偶者暴力相談支援センターについては、こちらの「配偶者暴力相談支援センターの機能を果たす施設一覧」をご参照ください。
◆合意・誓約書を結ぶ
いくら話し合いで約束をとりつけたとしても、夫婦という閉じた関係性の中では、いずれ約束が曖昧になり再びDV・ハラスメントを受ける状態に逆戻りしてしまうことも少なくありません。
夫婦の間で合意・誓約書を交わしておくことも重要です。
その場合は一度弁護士に相談してみましょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
次回の後編で残り2つのお悩みを解説します。
早くつづきが知りたい方や、別の原因・状況での解説も知りたい方は、LINE下部のメニューにある「原因×状況別 疑問にお答え」ボタンから見ることもできます。
参考にしてみて下さい。