「ひとの問題」にフォーカスした企業法務が強み。法学・心理学などを駆使して、広い視野で問題を解決/島田直行弁護士(島田法律事務所)
人を慈しむ会社が増えるほど、従業員の生活が安定し、社会が安定するという想いから、組織における「ひとの問題」にフォーカスしているという島田先生。全国各地の上場企業から中小企業まで、クレーマー対応を含めた企業法務などに注力されています。
弁護士を目指した理由とこれまでについて
これまでの経歴について教えてください。
出身は山口県下関市で、京都大学法学部を卒業しました。2007年に弁護士になったのを機に山口県に戻り、下関市内の法律事務所に就職しました。その後、2010年に当事務所を開設して現在にいたります。
弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
大学は法学部を選びましたが、その時点では弁護士は選択肢の一つという感じでした。そして実際に法律を学んでみて、言葉、音楽、絵画、技術など色んな表現方法がある中で、自分は法律を使って思い描く世界を表現したいと思ったんです。ただやみくもに「自分の表現」にこだわっても誰からも相手にされないでしょう。そこで自分の求めるものを現実と結びつけるために弁護士になることを目指しました。
これまでの弁護士経験も踏まえ、先生が表現したい世界というのは、どういったものでしょうか?
シンプルに言うと、調和やバランスです。調和やバランスが崩れているから問題になっているので、それをどうやって元に戻していくかを考えています。そのために、依頼者はもちろんトラブルの相手も含めて、誰か一人が勝って大喜びする解決ではなく、全員が受け入れられる解決を目指しています。それができれば、過去に引っ張られて立ち止まっている状況を断ち切って、全員が一歩前に進めると思います。
ただ依頼者の中には、全員が受け入れられる解決ではなく、「絶対勝ちたい」「相手を叩きのめしたい」と求める方もいらっしゃいませんか?
もちろんいらっしゃいます。これまで様々な流れがあって、今トラブルの渦中にいれば、そういう気持ちになることも当然です。ですからそういった気持ちは尊重しなければなりませんが、一方で、勝つことによってなにを得て、なにを手放してしまうのかを考える必要もあります。勝ち負けは目の前のトラブルの結論にすぎません。今ここで徹底的に争って勝ったとしても、もっと広い視点で見れば、余計に問題が広がることだってあります。
結局人が悩んでいるのは、「悩みから解放されたい」ということなんです。その方法が本当に平穏に至る道なのか、よく考える必要があるんです。結局、こだわることがすべての不幸の始まりです。穏やかな暮らしを取り戻すために、どうやって過去の縛りを断ち切り、こだわりを捨てられるかが大事です。そのために裁判は有効な方法のひとつではありますがすべてではないです。狭い視点で考えてしまうと、また別のこだわりを生みかねません。ときには争うことをやめ、矛を収めることも大事なんです。
先生のお話を聞いていると、弁護士だからといって法律のことだけ考えるのではなく、より広い視野で物事を捉えているような印象を受けます。
そうですね。私の仕事は、問題解決だと思っています。その解決の一つの道具が法律で、ほかにも心理学や哲学といった道具もあります。絵を描く時に様々な色や筆を使うように、色んな道具を選択しながら解決していくイメージです。
法律ありきで考えると、あまりにも視野が狭くなってしまいます。もちろん法律家である以上法律は忘れないけれど、他にも選択肢はあるという広い視点を持っておきたいと思っています。
現在の業務について
現在注力している分野を教えてください。
企業法務、クレーマー対応、事業承継も含めた相続に力を入れています。
労働問題にしてもクレーマー問題にしても、会社側は受けて立つ側が大半なので、なにをしてよいかわからず、なかなか相談先もないという場合が多いんです。とくにクレーマー問題は、今では社会問題としてある程度認識されていますが、以前は担当者がひたすら耐えるみたいな状況で、なかなか法律の手が届かなかったんです。それなら自分がその分野をやってみようと思ったんです。
どういった想いから、会社をサポートする業務に注力されていますか?
とかく会社は批判の対象にされてしまいがちです。ただ会社のことを批判して責めることは簡単ですが、多くの人は会社という組織があってこそ生活の糧を得られ、社会の中で生きていけるわけです。そうであれば、人を慈しむ会社が増えるほど、従業員の生活が安定し、社会が安定します。つまり会社を改善していくことが、最終的に個人の幸せにもなると思っているんです。
もちろん不当解雇やブラック企業といった個別の問題について、労働者側に立って解決する弁護士も必要です。ただ、単に会社を叩くのではなく、どうすれば会社がよくなり、社会がよくなるかという大きな視点も必要だと思います。
近年弁護士の数自体が増え、中小企業法務に対して興味を示される弁護士の方も増えてきた印象を受けます。ただ「みんなが集まるコミュニティとしての会社」という捉え方をする人は少ないとも感じます。だったら自分がそこをやろうと思ったんです。
弁護士として、どういったことを大切にされていますか?
「その人・会社それぞれに合った解決策」というところは、事務所を開設した当初からこだわっています。予定調和的な解決策を提供するのではなく、「この人・会社にはどういう解決がベストだろうか」と考え抜いて、法律、心理学、哲学など様々な方法を使って解決していきます。
先生の強みや事務所の特徴を教えてください。
私はオーナー企業における法務に関して長年力を入れてきました。書籍を複数出版したり、セミナーも多数開催してきました。今では山口県外からも声をかけていただくことが増えました。
私に対する評価として、「結論が出るところがよい」と言っていただくことが多いですね。弁護士は、複数の選択肢を示してあとは会社の判断に任せがちです。ただ会社としては、「どれか一つに絞って欲しい」というニーズも強いんです。そこで私は、もちろん押し付けることはありませんが、会社の理念や置かれた状況などを踏まえ、「これは悪手じゃないか」「この方法がよいんじゃないか」と自分なりの方向性を示すことを心がけています。
また、「よいことも悪いこともハッキリ言うところがよい」と言っていただくことも多いです。私は、会社に問題があると思えばハッキリ言います。その結果離れていく会社もありますが、それはそれでよいと思っています。私としては、従業員や社会のせいにする他責思考の経営者ではなく、覚悟をもった経営者のお役に立ちたいと思っています。それは同時に事務所のサービスも磨き続けなければならないという自分への戒めでもあります。
やりがいを感じる瞬間を教えてください。
問題が解決して、社長から「明日からまた頑張ります」という風に言われたときは嬉しいですね。やはり社長が一歩踏み出すと、会社も従業員も前向きになりますからね。人や会社が動き出す姿を見られるというのは、何物にも代えがたい価値かなと思います。
先生が取り組んでいるIT化について教えてください。
メッセージのやりとりは、メール、Chatworkなど、クライアントが使いやすいツールに合わせて使っています。クラウドサービスやAIを使った契約書レビューツールなども使っていて、トライ&エラーで色んなITツールを試しています。
今後について
今後の展望をお聞かせください。
事務所を大きくするというよりは、この一つの事務所をどこまで磨けるかということにチャレンジしたいですね。質を求めて、今あるつながりを大事にして、深めていくような業務にこだわっていきたいです。
また、まだまだ気軽に法律事務所に相談にいくという社会になっていないと思います。ちょっと聞いてみようくらいの軽い気持ちで相談して、コーヒーでも飲みながらああだこうだ話して、「また頑張ってみる」みたいな感じで帰っていただけるような、地域のコミュニティになれればよいなと思っています。
相談を考えている方へ一言お願いします。
弁護士に相談することで問題が解決すれば一番よいですが、その前提として自分がなにに悩んでいるかクリアになるという意味でも、弁護士にまず相談してみるとよいです。
世の中には解決できる問題もあれば、解決できない問題もあります。その仕分けを弁護士がやってくれるだけでも違いますよ。解決できない問題は悩まないということで解決できますからね。そして解決できる問題にフォーカスして対処していくという割り切りが自分の人生を豊かにするうえで大事じゃないかなと思います。
弁護士情報
弁護士名:島田 直行
所属弁護士会:山口県弁護士会
事務所名:島田法律事務所
事務所HP:https://www.shimada-law.com/
事務所住所:山口県下関市観音崎町12番10号 太陽生命下関ビル5階
経歴:
京都大学法学部卒業
2007年 弁護士登録
2010年 島田法律事務所開設
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