離婚の原因ランキングと、どのような原因なら離婚が認められるのかを弁護士が解説
離婚の原因は何が多いのでしょうか?今回は男女別に1〜5位までランキングをご紹介します。また、裁判ではどのような原因でも離婚が認められるわけではありません。ランクインした離婚原因のうち、離婚が認められやすいもの・認められにくいものについて現役弁護士が解説します!離婚を少しでも考えられている方は、是非お読みください。

今回ご解説いただく弁護士のご紹介です。
安藤 秀樹(あんどう ひでき) 弁護士
安藤法律事務所 代表弁護士
仙台弁護士会 所属農学部出身。理系出身であることもあり、わかりやすく・納得のいく説明が得意。物腰柔らかく、気軽に相談できることを大事に弁護活動を行う。
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離婚の原因ランキング
家庭裁判所における、離婚の申し立て原因ランキングをもとに解説していきます。
(平成29年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所 参照)
1位:性格の不一致(男女とも)
離婚の原因として、男女ともにダントツで多いのが性格の不一致です。
きっかけとしては、お金の使い方や、夫婦の一方が仕事ばかりで家事育児に協力してくれないということから、価値観が違うことが明らかになっていく、という状況が良く挙げられます。
最初は小さなきっかけでも、夫婦間のすれ違いが増え、喧嘩ばかりするようになると、相手の何もかもが気に食わなくなってしまいかねません。その結果、相手と一緒に生活することが我慢できなくなり、離婚に至ってしまうのです。
2位:精神的に虐待する(男)/生活費を渡さない(女)
男性から離婚を申し立てる原因2位の「精神的に虐待する」は、モラルハラスメントとも言われています「精神的(倫理的)な攻撃・暴力などによる嫌がらせ」のことを指し、内閣府男女共同参画局では、精神的なDVの一種とも定義しています。妻からの精神的な虐待としては、夫の家事負担について妻が厳しく言いすぎることなどが挙げられるでしょう。
また、女性から離婚を申し立てる原因2位となっている「生活費を渡さない」には、昔に比べ共働きが増えてきて、女性の社会進出が進んできたといわれる今でも、実際は夫の収入に頼らざるをえない家庭がまだまだ多いという社会の実情が反映されていると言えます。
3位:異性関係(男)/精神的に虐待する(女)
男性から離婚を申し立てる原因3位の「異性関係」には、妻の浮気や不倫が含まれます。
女性からの離婚を申し立てる原因3位は、男性からの原因2位と同じ「精神的に虐待する」です。モラハラの相談は、弁護士としての実務においては男女ともに多いです。
4位:家族親族と折り合いが悪い(男)/暴力を振るう(女)
男性から離婚を申し立てる原因4位は、「家族親族と折り合いが悪い」です。「家族親族と折り合いが悪い」は男性側のみでランクインしていますが、実際の相談の中ではそれ自体が理由で離婚したいという方は少ない印象です。このランキングが原因のうち主なものを3個まで挙げる方法のためランクインしているのでしょう。「家族親族と折り合いが悪い」にチェックをしている方は、他にも離婚の理由がある場合が多く、それに加えて奥さんの実家とも関係がこじれているので離婚したい、ということが多いです。
女性も姑とこじれるという方は少なくないですが、我慢していて離婚までは至らないか、離婚の理由としては挙げていないことが考えられます。むしろ姑と関係が悪いにも関わらず、旦那が全くかばってくれないために離婚を希望する、といった方向になることが多いのではないでしょうか。
また、女性から離婚を申し立てる原因4位にランクインした「暴力を振るう」は、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)になります。いちおうランキングに入っていますが、実際はDVにあっていても「自分が悪いから」と自分を不必要に責めてしまったり、夫からの報復を恐れて離婚に踏み切れない、という方も多くいます。DVには最悪の場合、命の危険があるようなケースもありますので、家を出てシェルターなどに身を隠す、警察に相談するなど、身の安全を最優先することが大切になります。
5位:性的不調和(男)/異性関係(女)
男性側のアンケートで5位にあげられた「性的不調和」は、セックスレスともいわれます。性生活は夫婦の大切なコミュニケーションのひとつですので、妻から拒否され、ショックを受けたり不満に感じたりすることで離婚につながるケースも少なくないようです。
また、女性から離婚を申し立てる原因5位は、男性からの離婚原因3位と同じ「異性関係」です。この原因の順位が女性側において低い理由は、まだまだ女性側が経済的に自立できないケースが多いため、たとえ浮気をされたとしても離婚はせず、慰謝料をもらうことで渋々結婚生活を続ける、という背景があるのではないかと思います。
どのような原因なら離婚が認められるのか
協議離婚・調停離婚はどのような原因でも離婚できる
協議や調停の場合、お互いが条件に合意しさえすれば、理由がなんであれ離婚できます。
実際、離婚する夫婦のうち、ほとんどの場合は協議離婚か調停離婚です。2017年の離婚総数のうち、協議離婚は87.2%、調停離婚は10%で、協議離婚と調停離婚の合計で97.2%となっています。(政府統計人口動態調査 参照)
裁判離婚には法定離婚事由が必要
仮に協議でも調停でも離婚に至らなかった場合は、裁判所に訴訟を提起し、裁判を行うことになります。ただし、裁判で離婚が認められるためには、以下の法定離婚事由が必要になります。
民法770条
①夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 、配偶者に不貞な行為があったとき。
二 、配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 、配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
四 、配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。②裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
裁判の場合、この法定離婚事由があるかどうかを裁判官が判断し、離婚すべきかどうかを決めます。つまり、裁判になった場合、法律で定められた原因がないと離婚できない、ということです。解釈が難しい状況もありますので、もしご自身が裁判まで行った場合に離婚できそうか詳しく知りたい方は、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
不貞行為
民法では不貞行為がどこからどこまでという厳密な決まりはありません。しかし、判例によって、不貞行為は性交渉等とされています。
すなわち、性交渉等がある場合には、浮気心がなかったとしても不貞行為になります。また、風俗などで性交渉をした場合も不貞行為に当たるとされる場合が多いので注意が必要です。
悪意の遺棄
「悪意」とは、夫婦の婚姻が破たんすることを分かっていながらという意味であり、「遺棄」は夫婦で同居をしない、生活費を家計に入れないことなどで、配偶者との生活を見捨てる行為のことです。
夫婦は一緒に暮らし、互いに助け合って生活することが、法律で義務付けられています。
悪意の遺棄は、こうした夫婦間の義務に違反する行為のことです。
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
「配偶者の生死が3年以上明らかでない」とは、最後の音信、消息があった時から起算して3年経過していることと、生死不明であるという客観的な証拠があることです。
「生死不明であるという客観的な証拠」とは、警察への捜索願いの提出や、配偶者の知人や勤務先から生死不明であることの陳述書を提供してもらうなど、配偶者を発見できなかったことを証明できるものを指します。
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
配偶者が精神病にかかり、回復の見込みがない場合や夫婦の義務を果たせない状態のことです。
これにあたるか争われた場合には、回復の見込みの有無や、夫婦間の扶助協力義務の観点から離婚が許されるかという点について慎重に判断されます。
婚姻を継続し難い重大な事由
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破たんして、回復の見込みがないことをいいます。
具体的には、DVや暴力、モラハラ、セックスレス、相手の両親や親族との問題、過度な宗教活動、犯罪行為などがあった場合です。
離婚原因ランキング順に、離婚が成立する可能性
それぞれの離婚原因について、裁判で離婚が認められる可能性がどれくらいあるか、解説していきます。
1位:性格の不一致(男女とも)
性格の不一致だけでは裁判離婚は認められない
離婚原因で最も多い「性格の不一致」ですが、裁判まで行った場合には、この理由だけでの離婚は難しく、他に理由がない場合は離婚が認められないと考えた方がいいです。
性格の不一致だけではまだ婚姻関係は破綻しておらず、お互いの努力で何とか修復できるだろうと判断されることが多いです。そもそも夫婦で性格が完全に一致する人の方が少ないですし、お互いに歩み寄って努力できると考えられているのです。
また、そもそもこの理由で裁判になるのは意見が対立しているからこそです。どういうことかというと、性格の不一致を理由とした離婚裁判は、相手はまだ修復可能と思って離婚を拒否しているという事例がほとんどです。その意味でも裁判官に「まだ歩み寄ることはできる」と判断されてしまいます。
しかし、別居期間が長い場合など、状況によっては離婚が認めてもらえることもあります。離婚したい場合、暴言が増えたなど、婚姻関係が破綻した、といえることを主張していきましょう。
性格の不一致でも裁判で離婚が成立する可能性のある状況として、別居期間が3年以上経っている場合などが挙げられます。これはもう夫婦関係の修復が難しいだろうということで、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
2位:精神的に虐待する(男)/生活費を渡さない(女)
「精神的な虐待」と「生活費を渡さない」どちらも裁判離婚が認められる可能性はありますが、特にモラハラについては、証拠の存在が重要です。また、このどちらも慰謝料を請求できる可能性があり、相場は100~150万円となっています。
下記でそれぞれ解説します。
精神的に虐待する
モラハラは直接的な暴力とは違うので、なにが証拠になるのかがわかりにくいと思いますが、日記や録音などで記録することでモラハラの事実を認めてもらいやすくなります。怒鳴り声の録音などがあるとわかりやすいです。
日記は決定的な証拠にはなりませんが、ないよりはあった方がいいです。
その日に何があったか書いておくと、後から書くのは難しいという判断になることもあるので、「何日の何時何分頃何を言われた」など細かく書いておきましょう。
また、録音がいくつかあれば、それを日記と照らし合わせることで日常的に発生していた、ということが主張しやすくなります。
生活費を渡さない
生活費を渡さないことの証拠は、通帳や家計簿などで残しておきましょう。
3位:異性関係(男)/精神的に虐待する(女)
異性関係
異性関係については、不貞行為(性交渉)に発展していれば離婚が認められる可能性が高いです。
こちらについても証拠の存在が重要で、写真やメール、ライン等が証拠となります。
証拠や状況で次第では、慰謝料を請求できる可能性もあり、相場は100~300万円となっています。
また、子どもがいるかどうかも考慮され、小さな子どもがいる場合には子どもの養育環境まで侵害したとされ、慰謝料が高額になる傾向があります。
精神的虐待
こちらについてはひとつ前の段落の解説のとおりですので、当段落では割愛させていただきます。
4位:家族親族と折り合いが悪い(男)/暴力を振るう(女)
家族親族と折り合いが悪い
家族親族と折り合いが悪いというだけでは通常は裁判での離婚は難しく、他に理由があれば離婚が認められる可能性はあります。
暴力を振るう
DVについては、離婚が認められる可能性が高いです。こちらも離婚のためには証拠の存在が重要です。証拠としては写真、診断書、警察への相談記録が挙げられます。
写真だけでは、いつ撮ったのか、本当にDVによる怪我なのかがわからないので、他の証拠と組み合わせて保存しておきましょう。
DVを受けた場合、慰謝料を請求できる可能性もあります。暴力が継続しているかや、回数、程度にもよりますが、相場は50〜150万円が多いようです。傷害罪といった刑事事件になるようなケースでは、慰謝料は相場よりも高くなります。
5位:性的不調和(男)/異性関係(女)
性的不調和
性的不調和による離婚は、最近は比較的認められるようになりました。ただし、そもそも争いになりにくく、慰謝料について揉めることで裁判にまでなることはありますが、離婚だけの場合は合意に至りやすいです。
セックスレスの証拠は、日記などの形でとっていくしかないでしょう。裁判の場合、尋問をしていく中で判断されます。
慰謝料については、夫婦の一方が理由なく性交渉を断っていたという状況が認められれば発生することもあります。慰謝料の相場はそこまで高くなく、50~100万円になっています。
自分に離婚の原因がある場合
裁判では、浮気をした妻が夫に離婚の請求をする場合など、夫婦関係の破綻原因をつくった者が離婚を請求する場合、原則として離婚は認められません。
ただし、次の3つの条件が揃う場合は、夫婦関係破綻の原因を持つ配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。
①別居期間が、それぞれの年齢や同居期間を比較して、かなり長期になる場合
②当事者の間に未成熟の子供がいない場合
③有責ではない配偶者が離婚によって過酷な状況に置かれない場合
(最高裁判所昭和62年9月2日の判決)
抽象的な部分もあるので、「自分の状況が該当するのか」、そして「離婚請求が認められる可能性があるのか」知りたい方は、専門知識をもつ弁護士に相談して確認なさると良いでしょう。
どんな離婚原因なら慰謝料の請求ができるか
不貞行為や暴力など、相手がしたことで精神的苦痛を被った場合、慰謝料を請求することができます。
しかし、性格の不一致など、どちらが悪いとは言い切れないような場合は、慰謝料を請求することは難しくなりますので注意してください。
弁護士に相談する
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談することで、それぞれのケースでご自身が離婚を希望する原因が、裁判でも離婚が認められるほどのものなのか、慰謝料を請求できるのか、具体的にわかりやすく説明してもらうことができます。
また、慰謝料をとりたい場合など、離婚に条件をつけたい場合は特に弁護士に相談した方がいいでしょう。弁護士は本人に代わって交渉を行うことができますので、法律的な説得力に自信がない場合や、裁判官に伝わるか不安な場合は弁護士への交渉代理の依頼を検討すべきかと思います。
弁護士に離婚の相談をした際の費用
相談自体は高額ではなく、30分5000円が相場かと思います。中には初回相談無料の先生もいらっしゃるなど、弁護士費用の体系は、事務所によってかなり異なりますので、ご自身の住所に近い事務所の費用体系をチェックされることをおすすめします。
話し合いの段階から弁護士をつけるのであれば、交渉費用として着手金10〜20万円、交渉でまとまれば成功報酬として相手からもらえた額の10%程度かかります。話し合いでスムーズに解決できた場合でも、合計で30万円程度は弁護士費用としてかかると思います。
話し合いでまとまらず調停を起こす場合、裁判所での手続きなので当事者間の協議よりも弁護士費用は高くなり、着手金20〜30万円、成功報酬は25〜50万円程度になるかと思います。また、もし裁判まで発展すれば、調停と同じくらいの金額がプラスでかかることになります。
費用はケースに応じて変わる部分も少なくないので、まずは自分のケースでは弁護士費用はどれくらいかかるのかを相談を通じて確認してみましょう。
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離婚を検討している方へ先生から一言
自分が離婚したい原因で慰謝料がとれるかどうか、あるいは払わなければいけないのかどうか、疑問や不安に思われた方は、一度弁護士に相談されると疑問な点が明らかになるかと思います。
先ほども説明したとおり、裁判では離婚事由にならないことであっても、調停や協議では離婚が出来るところです。あまり長引かせずに解決したいという場合にも、弁護士にご相談いただくと、スムーズに進む場合もあるかと思います。
ぜひお気軽に、お近くの弁護士にご相談にいらしてください。