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セクハラで解雇はありえる?できる場合と無効になる場合を判例を通じて弁護士が解説します。

セクハラで解雇したい場合の手順や、注意点を弁護士が解説します。セクハラは会社の生産性を著しく低下させますし、放置すると、社員が「この会社はセクハラに対処してくれない」と感じて退職を決意するかもしれません。優秀な人材がいなくなる前に、どうしたら加害者を解雇できるのか、問題にならない方法を知って対処しましょう。

今回ご解説いただく弁護士のご紹介です。

 
勝田亮 弁護士
 
アネスティ法律事務所 代表弁護士
平成18年10月 仙台弁護士会登録(59期)
 
バランスを大切にした誠実な対応が得意。
金融機関での数年のサラリーマン経験もあり、得意分野は多岐にわたる。
 
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セクハラでの解雇はありえるか

 

セクハラを理由とした、懲戒解雇、普通解雇、いずれもありえます

但し、就業規則の解雇事由としてセクハラが含まれることを定めておくことが重要です。なぜなら、懲戒解雇については就業規則に懲戒事由として定められていなければ懲戒処分はできませんし、また、労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められており、普通解雇においても解雇権の濫用に該当する可能性があるからです。

 

また、就業規則が社内周知されていることも重要です。労働基準法第106条でも就業規則を労働者に周知することは義務付けられています。就業規則の勉強会を開催するなど、会社側で社員に周知させるための工夫も必要です。

 

セクハラでの解雇の難しさ

セクハラ行為者のセクハラ行為が初めてであった場合や、程度の軽いセクハラ行為であった場合、セクハラを理由として懲戒解雇することは処分としては重すぎると裁判所で判断される可能性が高いです。

普通解雇であったとしても、解雇権の濫用に当たらないかが問題とされ、裁判所で解雇権の濫用と判断された場合は普通解雇も無効となります。

 

会社側として大切なことは、セクハラが発生しないような職場環境を整える、社員に対して啓蒙活動をするということですが、仮にセクハラ行為が発生した場合は早期に発見し、早期に指導、改善させること、被害者救済を図ることです。

 

セクハラで解雇が認められた事例

セクハラで懲戒解雇が認められた事例

懲戒解雇された管理職から十分な弁明の機会が与えられず為された懲戒解雇は無効であるとして地位確認及び賃金の支払いを求められ提訴されましたが、一応の弁明の機会も付与されており懲戒解雇手続きは有効であるとして管理職からの訴えが棄却された事例があります(東京地裁平成17年1月31日判決)。

 

上記事例のセクハラ行為は、無理矢理キスしたり、深夜自宅付近まで押しかけて自動車に乗せて手を握ったり、残業中に胸を触るなどといった悪質行為であることも影響していると思われます。弁明の機会に具体的なセクハラ行為の事実の指摘がなされなかったとしても一応の弁明の機会は与えられており、かつ事案の性質から考えても、裁判所の判断は妥当であったと思われます。

 

セクハラで普通解雇が認められた事例

常日頃から部下に対して、セクハラ発言を繰り返している社員(管理職)を普通解雇したことに対し、解雇は無効であるとして地位確認、並びに賃金及び慰謝料請求訴訟が提起されましたが、解雇手続きは有効であると判断され社員からの請求は棄却された事例があります(東京地裁平成12年8月29日判決)。

 

普通解雇処分を行う前に、解雇ではなく指導などの処分を行っていなかったことが問題とされましたが、これまでの経緯など具体的事情を考慮すると、ギリギリ解雇権の濫用にはならないという判断が為されたものと思われます。懲戒解雇であれば、懲戒解雇は無効であるという判断も十分ありえたと思います。解雇手続きをする場合は、慎重にしなければならないということを示している裁判例です。

 

セクハラで解雇が認められなかった事例

セクハラで加害者を解雇した際、場合によっては加害者によって不当解雇として訴えられる可能性があります。もし不当解雇として認められた場合、会社側に損害賠償の支払い命令が通達されることもあるため、解雇処分が相当と第三者から見ても認められる状況で解雇処分を行う必要があります。

 

セクハラで懲戒解雇が認められなかった事例

普段からセクハラ言動はあったものの特段の指導や注意をしてこなかった社員に対して、社員旅行の宴会席上でのセクハラ行為を理由として行った懲戒解雇が権利濫用として無効とされた裁判例があります(平成21年4月24日判決)。

 

日頃からセクハラ研修を行うなどして、社員にセクハラについての知識を持ってもらうこと、セクハラが発生した場合、早期に報告してもらい、早期に適切な指導を行えるような体制作りが大切です。

 

セクハラで懲戒解雇する場合の注意点

セクハラでの懲戒解雇は厳格に

セクハラを理由に解雇する場合は、きちんと事実調査をすること、弁明の機会を与えるという手続きを踏むことが大切です。

 

また、会社側としてセクハラ行為を長期間放置しておきながら、突然、懲戒解雇・普通解雇をした場合、仮に、弁明の機会を与えたとしても、処分が重すぎるとして解雇が無効となる可能性もあります。解雇が無効となった場合、その社員の地位が確認され、会社に戻ってくるという事態になります。懲戒解雇・普通解雇が無効となった場合の問題を意識して対処しなければなりません。

 

会社側としてはまずすべきことは、もしまだセクハラの相談窓口を設置していないのであれば、相談窓口を設置してください。セクハラ相談窓口はできるだけ被害者が相談しやすく、かつ秘密が守られるように、中立的な窓口、たとえば外部の法律事務所などにしておくのもよいでしょう。

被害を受けた社員の皆さんは、勇気をもって、早めにセクハラ相談窓口や弁護士に相談してください。早めの相談が大きな問題・被害に発展する前に適切な対処につながります。

 

セクハラを理由に解雇する場合は、1.十分調査をして証拠を整えておくこと、2.これまでも指導をしている、3.解雇にあたっては弁明の機会を与えた、ということが重要です。

 

十分な証拠が揃っているか

会社が証拠不十分なまま解雇処分を行ってしまうと不当解雇と判断されてしまう場合があります。前述したように不当解雇と判決された場合、会社側には損害賠償金の支払い命令が下る可能性があるため、念入りな証拠集めを行っておくことが重要です。

録音記録、メールやLINEの文面等は有力な証拠となります。解雇処分を行う前に被害者に証拠がないかヒアリングし、証拠がある場合は手元に保管しておきましょう。

 

懲戒解雇処分は適切な手順でなされているか

セクハラを理由に懲戒解雇する場合、就業規則の懲戒解雇事由にセクハラが定められていることが大切です。セクハラが懲戒解雇事由として定められていない場合は、そもそもセクハラを理由とする懲戒処分を会社が行う根拠がなくなるからです。

また、就業規則に懲戒解雇手続きとして弁明の機会を与えることが書かれている場合はもちろんですが、書かれていない場合でも、弁明の機会を与えるべきです。懲戒解雇処分は、労働者に取ってはとても厳しい処分であり、別の会社に就職することの障害にもなるから、厳格に行う必要があるからです。

 

セクハラでの解雇に迷った場合

セクハラでの解雇に迷った場合、弁護士に相談するのがおすすめです。セクハラでの解雇は、セクハラの程度等も解雇処分が正当であったかの判断材料とされるため、専門家の意見を聞いた上で解雇処分が相当と判断された上で処分に踏み切るのが最も安全です。

不当解雇と判断されるリスクを回避し、会社としての信頼を社外からも社内からも損なわないよう、専門家に相談しながら進めていくと良いでしょう。

 

先生からのメッセージ

セクハラは人権侵害にあたる行為であり、会社側、それから被害者側にも早期の対応が求められます。

もし、会社側がセクハラの相談を受けた場合には、その事実関係の調査を迅速かつ秘密裏に行い、被害者の救済、会社として適正な処分を行う必要があります。適切な処分を怠ると被害が拡大してマスコミ等にも取り上げられる可能性があります。

 

また、被害者側としては一日でも早く人権侵害行為であるセクハラ被害からの救済を受けるために、勇気をもって会社のセクハラ相談窓口に連絡する、あるいは弁護士等の専門家へ相談するようにしてください。決して一人で悩んでいても解決しません。勇気をもって相談をすればきっと解決へ導いてくれます。

 

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