急増中のコロナ離婚とは?その原因6選と対処法6選を弁護士が解説
コロナ離婚を知っていますか?コロナによる心的ストレスや外出自粛などにより、離婚を考えたり、実際にしたりする夫婦のことです。コロナ離婚を避けるためには、そもそもどんな対処法を取るべきなのでしょうか?コロナ離婚が発生する原因とその対処法を弁護士が解説します。

今回解説いただく弁護士のご紹介です。
遠藤 千尋(えんどう ちひろ)弁護士
法律事務所Neon
男女・離婚問題や労働問題、企業法務、インターネット問題など、様々な分野で幅広い対応が可能です。紛争が起きる前に問題に対処し、未然に防ぐことを心がけています。また、教育やITに関する知識が豊富にあります。
コロナ離婚とは
コロナ離婚とは、新型コロナウイルス蔓延の影響により、夫婦が離婚を考えたり、実際に離婚してしまったりすることを言います。
主な原因としては、夫婦や家族で家に居る時間が増えたり、経済面に影響が出ることで、喧嘩や家庭内暴力等が発生しやすくなるといったことがあげられます。
経済面・生活面で様々な影響が出ている中で、家庭内不仲が起きることは仕方がないとも言えますが、できることなら離婚せず、仲良く暮らしていきたいですよね。
コロナ離婚を防ぐべく、まずはコロナ離婚が起きる原因を理解しましょう。
コロナ離婚が起きる原因6選
コロナ離婚が起きる原因は、下記の6つのようなものが考えられます。ご自身の家庭の状況に当てはまっているものがあるか、確認しましょう。
夫婦の働き方に対する意識の違い
コロナ離婚が起きる原因の1つ目は、夫婦の働き方に対する意識の違いです。
働き方の意識に対する違いとは、例えば、妻は感染の可能性を危惧して可能な限り家で仕事をしているのに、夫は会社からの出社要請があれば、特段疑問を持たず出勤している状況などです。
このような場合、妻側からすれば、「こんな時くらい休めばいいのに」「有給使えばいいのに」と思い、夫とすれ違いが起こることが考えられます。
特に妻が妊婦である場合、お腹が大きくなるにつれて呼吸器が圧迫されて重症化の危険性が高かったり、インフルエンザの特効薬の一種であり、コロナの重症化を防ぐこともある「アビガン」という薬を飲むことができなかったりします。
妊婦はより一層危機感を持っているため、できれば家族には満員電車に乗ってほしくないものです。
これは、現在妊娠中である私自身も感じることであり、周りのママさんもSNSなどでこのような気持ちをつぶやいていることが多いと感じます。
コロナに対する衛生観や倫理観の違い
コロナ離婚が起きる原因2つ目は、コロナに対する夫婦の衛生観や倫理観の違いです。
例えば、妻はコロナに対して最大限に警戒し、手洗いや除菌を徹底するなどしているのに、夫は手洗いやマスクなどの対策をさほど真剣に行わず、外出自粛もせず飲み歩いているなどの場合です。
特に子供のいる家庭でそのような衛生観の違いが発生すると、コロナ対策を行っている側は、「子供にコロナが移ったらどうするの」とイライラしてしまうことも考えられます。
また、コロナ詐欺に妻が引っかかり、それを見た夫が呆れて「離婚したい」と思うケースも考えられます。
コロナ詐欺とは、マスクや除菌スプレーなど、コロナ対策として有効で、品薄になっている商品をネット上で高値で買ったものの、商品が届かないといった、コロナに対する不安を利用した詐欺のことです。
さらに、コロナ感染者の増大により不安が大きくなり、夫婦のどちらかが心の拠り所を見つけるため宗教に入信し、信仰をめぐって衝突するといったケースも考えられます。
このような夫婦の衛生観や倫理観の違いは、話し合わずに放置してしまうと離婚に発展してしまう可能性があります。
ネガティブな思考が強くなってしまった
コロナ離婚が起きる原因の3つ目は、外出自粛によりネガティブな思考が強くなってしまうことです。
長い時間家の中にいると、ただでさえ気が滅入ってしまうものです。
このような精神的負荷がある中で、特定の人と長い時間を共にし、少しでも相手の嫌な部分が見えてしまうと、「本当にこの人と一緒にいていいのだろうか」「このままでいいのだろうか」とネガティブな思考が強くなり、離婚の2文字がが頭をよぎることもあるでしょう。
比較すべくもないのかもしれませんが、経済的にも日常生活にも大きな影響のあった東日本大震災の際は、「絆婚」という言葉が生まれるなど、むしろ結婚生活にはプラスに働くこともありました。
しかし、今回は、大震災の際にはなかった「人と人との接触自体を避ける」という要素があり、誰かと一緒に困難を乗り越えるという発想になりにくいのではないかと感じています。
一人の時間が取りづらくなった
コロナ離婚が起きる原因4つ目は、一人の時間が取りづらくなったことです。
というのも、一人の時間が取りづらくなるとリフレッシュする時間が減り、日頃のストレスが増えることが考えられるからです。
政府からの外出自粛要請に伴い、仕事がテレワークに移行した方も多いでしょう。
夫の職場がコロナによりリモートワークになった場合、妻は今まで日中一人で過ごせていたところを夫と過ごさなければなりません。
また、子供がいる場合は学校の休校に伴い、子供が家にいる時間も長くなります。
一人の時間が取りづらくなるだけでなく、今まで給食でまかなえていたお昼ごはんまで自宅で作らなければいけなくなったり、子供の相手をする時間が増えます。
その際に夫が育児や家事を手伝ってくれないと、夫の家事能力の無さが露呈し、不満に思ってしまうこともあるでしょう。
その結果、離婚に発展してしまう可能性があります。
ストレスによる暴力や不仲
コロナ離婚が起きる原因5つ目は、ストレスによる暴力や不仲です。
家に居なければならない時間が長いと、お互いのストレスが蓄積されていきますし、そのストレスを発散することも中々難しい状況になります。
その結果、暴力や家庭内不仲となり、お互いが離婚を考えるようになる可能性があります。
暴力に関しては、コロナが流行してからニュースやTwitterなどで「DV急増」という言葉が頻繁に使われるなど、社会問題にもなっています。
実際、日本ではコロナで収入が減った夫のことを妻が指摘し、夫が妻を殴り殺す事件がありましたし、海外のニュースによると、フランスでは家庭内暴力の通報が2〜3割増えており、アメリカ、中国でもDVや離婚の申請が増えている状況です。
会社の経営不振による経済的困窮
コロナ離婚が起きる原因6つ目は、会社の経営不振による経済的困窮です。
コロナの流行に伴い、外出自粛をする人が増え、飲食店や商業施設を利用しなくなったり、都道府県からの休業要請を受けて休業せざるを得なくなるケースが増えています。
その結果、資金繰りが難しくなり、従業員を解雇したり、破産申請をせざるを得なくなり、経済的困窮に陥っている企業や個人事業主が増えています。
実際、東京商工リサーチによると、4月10日時点で50件以上の会社がコロナ関連で倒産しているようです。
4月10日12:00現在、全国で「新型コロナ」関連の経営破たんが51件に達した。(倒産が26件、準備中は25件)
出典:東京商工リサーチ「「新型コロナウイルス」関連倒産状況【4月10日12:00 現在】」
家族を養うためには当然お金がかかってくるため、場合によってはその経済的困窮により家庭内で言い争いが起き、離婚を考えてしまうこともあるでしょう。
このような状況は、今後緊急事態宣言が全国に広がることにより、東京や大阪などの大都市圏だけでなく、地方の企業にもより重大な影響を与えると考えられます。
コロナ離婚を防ぐための対処法6選
コロナ離婚の原因としては様々あることがわかりましたが、コロナ離婚を防ぐためにはどんな対処法が有効なのでしょうか?
夫婦や家族のコミュニケーションを増やす
コロナ離婚を防ぐための対処法として、夫婦や家族のコミュニケーションを増やすことも有効です。
というのも、これまで以上に一緒に増やす時間が増え、忙しくてすれ違いが多かったときにはあまり意識されていなかったコミュニケーションを増やすことで、家庭内の雰囲気を和やかにすることができるからです。
行うこととしては、特別なことでなくとも当然良く、例えば、普段一緒にやらない料理や、気晴らしになるトランプなどの簡単なゲーム、ルールが簡単なテレビゲームなどが良いでしょう。
また、最近ではおうち時間を楽しめるよう、芸能人やインフルエンサーが様々なコンテンツを出していたり、ライブ配信を行っていたりします。
そのようなコンテンツを家族みんなで見て楽しむというのも、一つの手段でしょう。
夫婦で家事の分担を決める
コロナ離婚を防ぐための対処法として、夫婦で家事の分担を決めることが有効です。
というのも、夫婦で一緒にいる時間が長くなったことでストレスが増大していた場合、少しでもお互いが協力し合っている状況があれば、「相手も協力してくれているし、多少のことは我慢しよう」と思える可能性があるからです。
特に子供がいて、妻側が家事を多くやっている場合は、育児と家事の両方が大変になるので、育児を妻に任せるなら夫は家事全般をやるなどが良いでしょう。
もし料理が不得意なのであれば、洗濯機を回すなど簡単な家事から始めるのがおすすめです。
また、育児を手伝う場合は、状況が許すのであれば子供を連れて少し外に出るなどして、妻が一人でいられる時間を作ると良いかもしれません。
そもそも何をどう分担すれば良いのか戸惑う場合は、一度夫婦で話し合う時間を設け、相手が負担に思っていることを聞き出し、それを手伝うようにしましょう。
ネットの情報を鵜呑みにしないようにする
コロナ離婚を防ぐための対処法として、ネットの情報を鵜呑みにしないようにするというのもひとつの手段です。
というのも、ネット上には当然、ありとあらゆる情報があり、中には悪質なデマや不安を煽るものもあるからです。
ただでさえ外出自粛などでストレスがある中で、悪質なデマに惑わされてしまうと、よりストレスが増大してしまいます。
そのようなことを防ぐためにもネットの情報を鵜呑みにしないようにすることは重要で、例えば専門家の意見が直接載せられているような、正確性が担保されている情報のみを信用するようにするのが良いでしょう。
国が補償してくれる制度をしっかり調べ、経済面の不安を解消する
コロナ離婚を防ぐための対処法として、国が補償してくれる制度をしっかり調べ、経済面の不安を解消することも有効です。
というのも、特に経営不振や解雇に遭った等で経済的困窮に陥っている場合、利用できる制度を知っていれば、経済面のみならず精神的にも安心できるからです。
2020年4月9日掲載の東京新聞の記事によると、売上高が前年同月の半分以下に減った事業者の場合、下記通りの現金支給が可能になっています。
Q (二〇二〇年四月)七日に発表された事業者への給付金はどのような仕組みですか。
A 今年一月から十二月までのどこかの月で、売上高が前年同月の半分以下に減った事業者が支給対象です。その月の売上高を十二倍し「激減した状態が一年続いたと仮定した年間の売上高」を計算、前年の売上高との差額分を一回だけ支給する仕組みです。五月の開始を目指していますが、中小企業は二百万円まで、個人事業主は百万円までという上限があります。
出典:東京新聞「<新型コロナ>自粛事業者への休業補償は? 似て非なる「給付金」あり」
※()内の言葉は、カケコム編集部追記のもの。
また、解雇された人の場合には失業保険などがありますし、4月16日現在では、所得制限なしで、1人10万円の現金給付もされるということが報道されました。
このほかにも様々な補償がありますので、ご自身のケースに合わせて調べてみたり、それでも分からない場合は社労士や弁護士などの専門家に相談するなどするのがおすすめです。